「クリエイターエコノミー」の市場規模は？：今日のリサーチ

クリエイターエコノミー協会は三菱UFJリサーチ＆コンサルティングと共同で、「国内クリエイターエコノミーに関する調査」を実施しました。

[ITmedia マーケティング]

　クリエイターエコノミー協会は三菱UFJリサーチ＆コンサルティング（MURC）と共同で、「国内クリエイターエコノミーに関する調査」を実施しました。

　クリエイターエコノミーとは個人の情報発信やアクションによって形成される経済圏を指します。クリエイターエコノミー協会は「クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する」をミッションに、クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けた活動を行っています。

　今回の調査は2022年に続いて2回目。前回調査では、日本のクリエイターエコノミー市場が今後も堅調な拡大を見込んでいることが分かった一方で、誹謗中傷への対応や創作活動以外の手間の削減など、市場拡大を妨げかねない課題も存在していることが明らかになりました。今回の調査は2023年6〜9月に実施しています。

国内クリエイターエコノミーの分類と主なサービス

　同調査では、クリエイターエコノミーに関連する企業・サービスについて、クリエイター活動を行う場としての「プラットフォーム」と、クリエイターの活動を支援する「支援サービス」の2つに大きく分類しています。なお、イラスト作成やデザイン、作曲、写真・動画の編集など、クリエイティブな用途に使いやすく設計されたクリエイター向けPCもクリエイター活動を支えている実態に鑑み、今回から支援サービスの一つとして追加しました。

各プラットフォーム・サービスの代表的な企業・サービス例（出典：MURC作成、以下同）

国内クリエイターエコノミーの市場規模と拡大要因

　国内クリエイターエコノミーの市場規模は前年比21.9％増の1兆6552億円と推計され、前年の1兆3574億円に対して21.9％の成長を遂げています。2021年同様に、モノ／グッズ販売や動画投稿に関連した広告、スキルシェアの市場による寄与が大きく、市場全体の約7割を占めました。

国内クリエイターエコノミーの市場規模推移（イメージ）

　なお、定義や実施年の差異には留意する必要があるものの、2021年に5月に実施された海外の調査（NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査）では、海外クリエイターエコノミーの市場規模は1042億ドル（1ドル145円換算で15兆1000億円）と推計されています。クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方は以下の通りです。

クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方

　2021年から2022 年にかけて市場が急拡大した背景には、ユーザーとクリエイターのつながりを強化するサービスが増加し、クリエイター個人への課金も進んだこと、VTuber関連や音声配信サービスなどの新興サービスが浸透したことなどがあるようです。

国内クリエイターエコノミーにおけるトレンド

　メタバースやNFTなど、さまざまな技術の誕生や変化が注目される中、直近では「生成AI」がクリエイターエコノミーにも影響を与えています。

　生成AIは作品のアイデア出しや推敲などの作業効率化、マーケティング活動の支援、多言語対応、調査・リサーチなど多岐にわたる利用が考えられます。一方で、AIが作風を学習することで自身の作風が模倣されるリスクなど、クリエイターにマイナスの影響をもたらす側面も想定されます。クリエイターエコノミー協会の監事を務める福井健策弁護士は「クリエイターが技術的な変化や自身への影響を認識し、留意することが重要だ」と指摘しています。

社会的な動向とその影響

　新たな法律や規制の動きも、クリエイターエコノミーに影響を及ぼす可能性があります。例えば、2023年4月に法案が可決されたフリーランス新法（※2）では、クリエイター自身が受注者である場合だけでなく、自身がフリーランスに業務を依頼する場合も対応が求められます。また、2023年10月1日にはステルスマーケティングに対する規制も始まりました。このような状況で、福井弁護士は「クリエイターが自身の活動に関わる規制についてリテラシーを高めることが重要になる」と指摘しています。

　しかし、クリエイター個人がすべてのルール変更を理解するのは現実的ではありません。そのため、新たな法律や規制への対応が必要になった際には、クリエイターエコノミー関連事業者が勉強会の実施や、サービス上の機能面などでクリエイターをサポートする需要の増加が見込まれます。