美容コスメ大手Estee Lauder(エスティ ローダー)はGoogle Cloudと連携し、AIを活用したマーケティングを加速させている。狙いは何か。
Estee Lauder Companies(以下、ELC)は、Google Cloudとの関係を深め、生成AIの活用を拡大すると発表した。同社はこれまでテクノロジーパートナーのEvidenと共に、Google Cloudとの複数年契約の一環としてデータ戦略の統一に取り組んできた。今回の発表は、マーケティング業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)におけるAI技術の重要性を示している。
社名と同じ名前を冠した「Estee Lauder」ブランドをはじめ、「Clinique」や「Aramis」など20以上の高級美容ブランドを所有するELCは、や生成AIの活用に全面的に取り組んでいる。
2022年11月にOpenAIの「ChatGPT」が登場して以来、生成AI分野は爆発的な人気を博しているが、ELCは同分野に注力するGoogle Cloudとの既存の関係を強化する計画だ。ELCのプレスリリース(外部リンク/英語)は2023年8月の「Google Cloud Next」カンファレンスに先立って発表された。
膨大なデータをかき集めて新しいコンテンツを迅速に生成できるツールを導入したプラットフォームやサービスプロバイダーは増加傾向にあり、こうした生成AIツールを使ったマーケティング実験も急増している。ELCの目的は、消費者心理を精緻に追跡して研究開発に生かすこと、生産性を向上させながら社内のワークフローを簡素化することなど、幾つかある。
他のブランドにとって特に興味深いのは、消費者の生の声を聞き、その洞察を商品開発などの分野に役立てようという部分だ。美容・コスメの分野では昨今、「TikTok」のようなアプリを通じて人気のブランドが生まれている。そこでは口コミのトレンドが一晩で移り変わる。Wall Street Journalは最近の記事で、ソーシャルメディアフレンドリーな若い消費者にアピールし続けなければならないプレッシャーが、長いリードタイムと計画的な展開戦略に慣れている研究開発部門に負担を与えていることを明らかにしている。
生成AIはこうしたTikTok起点の購買行動に対処するための一つの方法になり得る。ELCはソーシャルリスニングを強化し、コールセンターのような人の目でモニタリングするのが面倒なチャネルを監視するために、ChatGPTの流れをくむLLM(大規模言語モデル)の「PaLM 2」を活用している。同時に、生成AIには消費者に より人間らしいデジタル体験をもたらすことも期待している。
Google Cloudのトーマス・キュリアンCEOはプレスリリースの中で「消費者の期待の高まり、トレンドの絶え間ない変化、パーソナライゼーションへのシフトなど、美容市場は大きな転換期を迎えている」と、コメントしている。
ELCは、美容ブランドの中でも早くからGoogle Cloudと協力してきた。これまでにもデータを一つの環境に統合したりパーソナライゼーションを強化したりするためにGoogle Cloudの「Retail Search」や「Recommendations AI」といったツールを使用してきた。
OpenAIは2023年8月に企業顧客をターゲットにしたLLMを発表している。ライバル企業が同様の目標を追求している中で、Google Cloudは大企業との生成AIの利用契約締結を実現したことになる。
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