「AI」「5GとVR」「ブロックチェーン」「IoT」 テクノロジーの変化はマーケティングをどう変える?CMOのためのデジタルトレンド解説

今後3〜5年の間でどのようなテクノロジー変化があるか、それがどのようにデジタルマーケティングに変化を与えるのか、考えていきたいと思います。

» 2023年07月12日 07時00分 公開
[山田良太プリンシプル]

 デジタルマーケティングは、新しいテクノロジーが登場するたびに大きな進化を遂げています。本記事では、デジタルマーケティングの進化に影響を与えているテクノロジーに焦点を当てて、今後3〜5年の間でどのようなテクノロジー変化があるか、そのテクノロジー変化がどのようにデジタルマーケティングに変化を与えるのか、考えていきたいと思います。

AIと機械学習の進化

 OpenAIの「Chat GPT」をはじめとする生成系AIの登場は既に多くの人に衝撃を与えています。さらに、Chat GPTを応用した技術も多方面で研究されています。

 例えば、「自立型AIエージェント」のプロジェクトでは「最終的に達成したいゴール」を設定し、エージェントにそのゴールを伝えると、エージェントはそのゴールを達成するために必要なタスク分解を行い、分解されたそれぞれのタスクをエージェントが遂行するところまで行います。

 本格的に登場して日が浅い技術であることとさまざまな方面で活用することができる技術であることを考えると、今後どのようにデジタルマーケティングの流れを変えるのかを特定することは難しいですが、確実に何かを変えてくれると考えています。

5Gの普及とVRの進化

 2023年6月5日、Appleは新たなVRゴーグル「Apple Vision Pro」を発表しました。商品金額が高額であることやVRゴーグルを装着した姿が社会に受け入れられるかといった問題があり、すぐにこのVRゴーグルが普及する可能性は低いと考えています。

 しかしながら、各社が同様のVRゴーグル開発に乗り出すことによる価格競争や半導体技術の進化に伴う低価格化などにより、金額の問題は時間が解決します。また、金額の問題が解決して商品のバリエーションが増えれば、VRゴーグルを使うユーザーが増え、VRゴーグルを着けた姿も社会に受け入れられるようになります。

 PCやスマートフォンのディスプレイに表示するクリエイティブに比べて、VRを通したクリエイティブは訴求できる情報量が格段に増加します。また、看板広告のような広告媒体も、ゴーグルを通すことで、デジタル広告のようにインプレッション数を計測できるようになったり、ユーザーごとにパーソナライズされた広告を表示できたりするようになるかもしれません。

 このようなVRゴーグルのUXはインターネットのデータ通信に依存し、より高速なデータ転送と低遅延が必要になります。それを実現するための準備も既に着々と進められており、各通信キャリアが行っている5Gがそれに該当します。

ブロックチェーン技術の進化

 ブロックチェーン技術はわれわれの生活の裏側で着々と普及していきますが、消費者自身がその普及を実感する機会はあまりありません。

 しかしながら、今後のブロックチェーン技術の進化により実現されると考えられている一つに「マイクロペイメント(少額決済)」があります。現在のクレジットカード決済やQRコード決済は、数円や数十円といった少額の決済において、取引コストの面で不利な設計になっています。一方で、ブロックチェーン技術を使ったマイクロペイメントではそのようなケースに特化した設計となっています。

 現在は技術上あるいはコスト上の課題により実現できなかった少額決済が実現できるようになると、企業は新たな収益モデルを生み出すことができるようになり、それが何らかのマーケティングへの変化を与えると考えられます。

IoTの普及

 半導体技術の進化に伴い、さまざまなセンサーを備えたIoTデバイスは増加していくと考えられます。消費者の行動はIoTデバイスを通じて広告主に送られ、それらのデータを活用することで、パーソナライズされたマーケティングキャンペーンにつながり、顧客のUI/UX体験を向上させるのに役立ちます。典型的な例には「スマート冷蔵庫」(クラウド上で冷蔵庫の中身が確認できる)があります。スマート冷蔵庫では、冷蔵庫の中身や期限切れになりそうな商品などの情報を基に、レシピのレコメンドや購入すべき商品のプロモーションを行うことができます。

 他にも身の回りにあるさまざまなものがインターネットにつながることで、消費者の便利なサービスの提供と広告主の効果的なマーケティング戦略を両立させることができるようになります。


 過去数年間のトレンドにおいても、デジタルマーケティングを行う上で扱うデータは飛躍的に増加していきました。そして、上に挙げたさまざまなテクノロジー変化により扱うデータは今後も飛躍的に増大していくことが確実です。

 日々増大するデータを適切に取り扱うためには、デジタルマーケティングに取り組むマーケターの方々にも「膨大なデータを取りまとめ、それらのデータを有効に活用する力」が求められます。上記で挙げた変化はすぐに訪れるものではありませんが、今から「膨大なデータを取りまとめ、それらのデータを有効に活用すること」を意識的に取り組むのが良いでしょう。

執筆者紹介

山田良太

山田さん

やまだ・りょうた プリンシプル チーフテクノロジーマネージャー。Webマーケティングとテクノロジーの融合領域に関わる多くの案件に従事。 Google Cloud・Python・各種APIなどを使い、多数のプラットフォームのデータ統合を行い、それらをマーケティングに活用するための基盤構築に取り組む。2020年に「集中演習 デジタルマーケターのためのテクノロジー入門」(インプレス)を上梓。


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