2021年4月に始まったAppleのIDFA利用制限はモバイル広告にどのような変化をもたらすのか。InMobiで日本事業の責任者を務める井料武志氏が解説する。
Appleは2021年4月27日、iOS 14.5以上のソフトウェアアップグレードのリリースに際し、ATT(App Tracking Transparency:アプリケーションのトラッキング申告)フレームワークを適用しました。これにより、IDFA(Identifier for Advertisers:広告識別子)の取得に当たり、オプトインが必須となりました。つまり、アプリのパブリッシャーが他のアプリやWebサイトでユーザーに関するデータを追跡する場合、ユーザーから明確に許可を得た場合にのみIDFAが広告主に提供され、マーケティング目的での利用が可能となったのです。
iOS 14.5以降では全てのアプリで自動プロンプトの表示が義務付けられ、そこでユーザーがはっきりと同意しなければ、iOSデバイスで個別のユーザーを識別することはできません。今後、ユーザートラッキングをオプトインするユーザーの割合が低下すれば、それに伴って広告主がAppleデバイス上でアドレス可能なユーザーのプールも縮小すると予測されます。
一方、InMobi IDFAグローバルリソースセンター(外部リンク/英語)によると、日本のiOSユーザーのうちIDFAへのオプトインを許容している割合は39%に上ります。これは世界全体の平均(33%)を上回っており、興味深い結果です。現在日本のiOSユーザーのうちiOS 14.6にアップグレードを済ませている人の割合は全体の3分の2にとどまっている(2021年7月25日現在)ことを踏まえると、IDFAへのオプトインを許容する割合は今後さらに高まると見込まれます。つまり、広告主がIDFA時代の運用方法に対応することは急務となっています。
IDFAの用途は大きく3つあります。1つ目はユーザー識別とターゲティングです。広告主はユーザーを認識し、広告での目標を達成するため、ターゲティングやリターゲティングを行います。2つ目は効率性と効果改善です。IDFAは広告の表示回数を制限するフリークエンシーキャップ、広告ローテーション、ダイナミッククリエイティブの最適化、価格設定/予測などにおいて、効率性を高めるテクノロジーの強化に使用されます。3つ目は計測とアトリビューションです。IDFAは、iOS計測チェーンで欠くことのできない重要な構成要素であり、全てのモバイルメディアにおいて計測のベースになっています。コンバージョンに至るまでに発生した全てのタッチポイントを計測するマルチタッチアトリビューションやラストクリックアトリビューション、ラストビューアトリビューションなどに活用されています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.