ニューヨークを拠点に活躍するクリエイティブディレクターのレイ・イナモト氏は、NikeやAudi、Googleなど世界を代表するブランドのデジタル戦略とクリエイティブを数多く手掛けてきた。『Forbes』で「世界の広告業界で最もクリエイティブな25人」に選出されるなど世界で注目され続ける同氏は2016年にグローバルデジタルエージェンシーのAKQAから独立。「ビジネスインベンションファーム」であるI&COを起業し、2019年7月には東京オフィス(I&CO Tokyo)を開設した。
それから1年半、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で世界の風景は一変した。人々の行動・意識が変わればビジネスの在り方も変わらざるを得ない。広告・マーケティングコミュニケーションの領域でも今後、新しい考え方が必要とされることになるだろう。先の見えない状況下で変革を起こすために今、企業・ブランドは何をすべきか。イナモト氏およびI&CO Tokyo共同代表の間澤崇氏に話を聞いた。
――I&COが掲げる「ビジネスインベンションファーム」の定義と、自らをそう位置付ける理由を教えてください。
イナモト 僕は広告業界で注目されることが多いのですが、実はもともと広告をやりたかったわけではありません。デザインとデータ、テクノロジーを掛け合わせて新しいことを生み出したいと取り組んできて今に至っています。
次の時代を見据えれば、これからのブランドはストーリーではなくプロダクトやサービスで構築すべきだと僕は考えています。そうする上で、エージェンシーやクリエイティブブティック、コンサルティングファームといった旧来の枠組みにとらわれていてはいい仕事ができないという思いがあり、ちょうど中間的な会社を立ち上げました。
――これまで広告の役割とはまさにブランドのストーリーを伝えることだったと思うのですが、それでは十分ではないということでしょうか。
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