トライベック後藤洋氏に聞く ミロク情報サービスとの資本業務提携の背景とこれから中小企業マーケット開拓に意欲(1/2 ページ)

2020年12月にミロク情報サービス(MJS)と資本業務提携を発表したトライベック。マーケティング領域を軸に大企業のDX支援を手掛ける同社が国内中小企業に顧客基盤を持つMJSと組むに至った経緯と今後について聞いた。

» 2021年02月10日 07時00分 公開
[指田昌夫ITmedia]

 マーケティングを軸に企業のDX支援を行うトライベックは2020年12月、会計ソフトや中小企業向けERPシステムを手掛けるミロク情報サービス(以下、MJS)と資本業務提携を締結したと発表した。トライベックの外部株主が保有していた株式が全てMJSに譲渡され、MJSはトライベックの50.4%の株式を保有。トライベックはMJSの連結子会社となった。ここに至った背景と今後の展望について、トライベック代表取締役社長の後藤洋氏に話を聞いた。

後藤洋氏
慶應義塾大学法学部卒業後、ソフトバンクに入社。同社出版部門の広告営業に従事。また新規事業立ち上げにおけるマーケティング全般を担当し、新たなビジネスモデルによる収益を追求した。2002年より、トライベック・ストラテジーに参画。Webマーケティング戦略全般、コミュニケーション戦略、ROI・KPI策定、ブランドサイトならびにコミュニティーサイトのプランニングおよび構築などを多数手掛ける。

中小企業のDX支援へ思いが募る

――まず、今回の資本業務提携の狙いを聞かせてください。

後藤氏 トライベックは2021年9月に創業20年を迎えます。デジタルマーケティングの分野では比較的古参の部類になると思いますが、これまでわれわれの顧客は9割ぐらいが大企業でした。その中で、マーケティングの領域を中心に顧客のデジタル化、現在DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる取り組みについて支援を行ってきました。

 われわれは、いかに分かりやすいオウンドメディアを作っていくか、どうやって顧客とコミュニケーションを取っていくかということにこだわってサービスを提供しています。われわれの調査・分析機関であるトライベック・ブランド戦略研究所(※注1)が年間10万人近くのユーザーの声を集めて「ウェブサイト価値ランキング」「ユーザビリティランキング」などを毎年発表し続けてきたのも、このこだわりの裏付けを作るためです。

 しかし、大企業向けの取り組みを続ける中で、疑問を感じるようにもなっていました。マーケティングやデジタルを巡る議論が、どんどん先端的になっていることです。技術は日々進化しており、予算が潤沢な大企業は非常に高度な取り組みを実施しています。その一方で、中小企業に目を向けると、かなり懸け離れた状況にあると言わざるを得ません。企業数では日本全体の99.7%(※注2)を占める中小企業ですが、その多くがDXから置いていかれている状況にあります。

 われわれはこれまでも「ひとにやさしく、つなぐデジタルを」というスローガンを掲げて活動してきました。しかし、ここ数年、中小企業の経営者とお話しするたびにデジタル化に取り残されている悩みを聞くようになり、中小企業に対するDX支援をしなければいけないと考えるようになったのです。

※注1:旧トライベック・ブランド戦略研究所は2020年9月にトライベック・プロフェッショナルサービスと共にトライベックに統合。

※注2:数字は経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査」より。

――MJSと組んだのではなぜですか

後藤氏 中小企業の中でもテクノロジーを武器にしたベンチャー企業などであれば、われわれの支援は必要ないと思っています。一方で、長年事業を続けている中小の製造業や商店などはかなり置いてきぼりをくらっていると言わざるを得ません。従業員の高齢化も進み事業承継の問題を抱える中で、デジタルなんてどうしたらいいのか分からない状態です。当社はここを何とかしたいと考えました。

 とはいえ、思いがあるだけでは届かない。中小企業にわれわれがいきなり訪ねていって「DXを支援します」と言っても、門前払いになってしまいます。どうすれば中小企業にたどり着けるのかと、ここ数年、真剣に考えていました。そこで出会ったのがMJSです。

 MJSは全国10万社以上の中小企業の顧客基盤と、それを支える会計事務所のネットワークを持っています。長年にわたって地に足をつけて中小企業の会計業務を支えてきた企業です。MJSと組むことでわれわれの強みを生かし、中小企業のDX支援が実現すると感じました。

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