オンライン医療が進む中国と台湾、日本 iOS「メディカル」アプリ最新人気ランキング世界のモバイルアプリトレンドを読む

今回は、2020年2月度における中国、台湾、日本市場におけるiOS「メディカル」モバイルアプリの動向を紹介します。

» 2020年03月27日 16時00分 公開
[中島玉美インターアローズ]

この連載について

 Airnow(旧社名appScatter)傘下のPrioridataのスマートフォンアプリ市場分析データとMIXRANKが提供する世界200カ国のモバイルアプリ内実装SDK採用・削除データを使い、世界のアプリの動向をさまざまな切り口から探ります(執筆者の所属するインターアローズはAirnowの日本総代理店です)。

 通常、MAU(月間アクティブユーザー)やDAU(日間アクティブユーザー)はアプリに実装された測定用SDKを使い、モバイルアプリユーザーを調査パネルとして推定値を出しますが、Prioridataは傘下のAirpushおよびデータパートナーとの提携により、デベロッパーおよびパブリッシャーデータとトラッキング対象デバイス35億のビッグデータを活用してMAUやDAUを算出しています。

 SDKの採用・削除履歴からは、そのアプリを運営する企業のモバイルビジネスの構想が分析できます。MIXRANKは取得が難しいとされるiOS版アプリのSDKデータを保有しており、それが高い評価を受けている理由の一つになっています。


 テレワークや一斉休校、イベント自粛など、新型肺炎の危険性が私たち日本人の生活を大きく制限しています。その中にあって今さらながらに、日本の医療や教育、オフィスといった現場でのオンライン化は諸外国に比べて大きく遅れていると実感させられます。特にオンライン医療への規制撤廃と法的整備は、不要な感染リスクを減らし効率よく医療・薬を受けることを可能にすることから早急に望まれるところでしょう。

 今回は、オンライン医療が進化する中国、政府のマスク管理が話題の台湾、および私たち国内市場におけるiOS「メディカル」モバイルアプリの2020年度2月度のダウンロード数を紹介します(中国は2010年以降、「Google Play」を完全に締め出しているため、iOSダウンロード数を解析しました)。

「医+薬」が大躍進 中国「メディカル」アプリTOP5

中国Apple App Store「メディカル」アプリ 2020年2月度ダウンロード数トップ5(Airnow:Priori Data調べ)

 中国「メディカル」アプリで第2位以下を引き離して首位の「叮当快薬(Dingdang Fast Medicine、以下Dingdang)」は、1000人以上の契約医師による24時間年中無休のオンライン相談を受け付け、28分以内に466製薬会社からの調薬を独自の温度・湿度コントロール配送で自宅まで届けるというサービスを各都市で展開するアプリです。2020年3月15日付の「新京報」(北京の新聞社)の記事(外部リンク/中国語) によると、同アプリはこれまでも春節時に一斉に閉まる医院・薬局の代替サービスを提供してきましたが、2020年は新型肺炎のまん延がそのタイミングで起きたために前年同期比8倍の注文を得たということです。春節ピーク時のユーザーアクセスは通常時の50倍にも上り、従業員5000人が900万件を超える在宅医療サービスを提供したと同記事は伝えています。ここでDingdangのCEOであるユ・ライ氏は「(新型肺炎の)流行中であっても流行が終わっても、ユーザーの便利で速い『医+薬』のニーズは変わることはないだろう。今や人々のオンライン化への認識が一層加速し、この業界も加速したからだ」と語っています。

 また、前月比3970%という上昇を記録した「健康云 - 実践健康中国的引領者」も、同様に、オンライン医療や病院予約などのサービスを提供しています。健康云はさらに、持病や病歴、薬歴、検査情報などもペーパーレスで全てアプリ内に管理できるようになっています。中国において、リモートやオンライン、ペーパーレスといった社会変化が劇的に進んでいる様子が分かります。

マスクが買える 台湾「メディカル」アプリTOP5

 次に、台湾のiOSメディカルアプリTOP5をご紹介します。

台湾Apple App Store「メディカル」アプリ 2020年2月度ダウンロード数トップ5(Airnow:Priori Data調べ)

 圧倒的なダウンロード数を記録したのは、衛生福利部中央健康保険署(台湾の国民健康保険局)が公開する「全民健保行動快易通 | 健康存摺」です。最近、日本のメディアでも紹介されているように、台湾ではこのアプリを使って配給制マスクを予約購入し、自宅近所の薬局やコンビニエンスストアで受付番号と身分証明書を持参の上、受け取るという仕組みを構築しました。同アプリはもともとペーパーレス健康保険証と健康手帳、病歴・薬歴管理のために公開されたものでしたが、マスクの需給ひっ迫を受けてダウンロードが急増しています。

アプリ活用が進みだすか 日本「メディカル」アプリTOP5

 最後に、いまだオンライン化の規制が厳しい日本のメディカルアプリ市場を紹介します。

国内Apple App Store「メディカル」アプリ 2020年2月度ダウンロード数トップ5(Airnow:Priori Data調べ)

 ダウンロード数が伸び悩むメディカルアプリが多い中、国内Apple App Storeで2020年2月度に微増したのは診療予約アプリ「アイチケット」です。導入クリニックの患者がこのアプリをダウンロードすれば診療待ち時間がライブ表示され、診療予約もアプリからできます。院内感染が騒がれる昨今、待合室で長時間待たずに済むことは、診療を受ける側にとっても大きな魅力です。しかし。いまだ導入クリニック数は全国で1600院程度にとどまっており、今後もっとクリニック数を拡大していけば利便性も上がると思われます。

Dingdangの採用SDKを探る

 中国メディカルアプリでダウンロード首位であるDingdangは、直近では2020年1月6日にSDKを入れ替えました。現在実装中のSDKは58種。その中で今回新たに採用したSDKが「Bark」です。

「叮当快薬(Dingdang)」アプリver.5.6.0内SDK(MIXRANK調べ)

 「Bark」は、保護者と学校が子供たちをオンラインで安全に保つためのインターネットセーフティープラットフォームです。Bark REST APIからBarkの機能にアクセスすることで他のアプリケーションと連携し、「Bark」プラットフォームから安全なメッセージを返すことが可能です。

 2019年前半より、特にLifestyleカテゴリーにおいてこのSDKを採用するアプリが急増しており、「Airbnb」や「百度」も採用しています。

「Bark」SDKの導入アプリ数(MIXRANK調べ)

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