売り上げの中心がモバイルにシフトする中、ECからの受注率80%という目標を掲げるドミノ・ピザ。現在の取り組みについて聞いた。
ドミノ・ピザ ジャパン(以下、ドミノ・ピザ)は、日本における大手宅配ピザチェーンの草分けともいえる存在である。2017年9月には国内店舗出店数が500を突破し、「焼き立てピザを30分以内に届ける」というビジネスは、多くのファンから支持を集める。
「雨の日割引」を始めとするユニークな割引クーポンを発行していることでも知られる同社は、もちろんデジタルマーケティング領域にも積極的に投資を続けている。ただ、意外にもパーソナライズのためのコミュニケーション基盤を整備したのはごく最近のことだという。その経緯について、ドミノ・ピザ ジャパン マーケティング部WEBマーケティング課シニアスペシャリスト武井智子氏と滝田 菜々子氏の2人に話を聞いた。
ドミノ・ピザでは、ECからの受注率が2014年に50%に達し、現在では6割を超えている。当面のビジネス目標はこれを80%超にすることだ。もちろん、そう簡単にはいかない。実際、50%を超えてからの成長率は鈍化している。この高いハードルをどう乗り越えていくか。それが現在の大きな課題だ。
同社では2004年にECを開始している。2010年にはスマホサイトを開設し、これを追ってすぐアプリもリリースするなど、消費者のモバイルシフトへの対応も早かった。現在、ECからの受注の内訳はモバイルが70%、PCが30%だ。
デジタルに早くから取り組んできたにもかかわらず、数年間の足踏み状態が続いていたのはなぜか。それには、膨大なデータを蓄積できていたものの、せっかくのデータ資産をマーケティングキャンペーンに十分に活用できていなかったことが影響している。
「メールマーケティングにおける配信対象のセグメントを抽出する際、条件設定が細かくなればなるほど、SQL文の実行に時間がかかりました」と武井氏は語る。
セグメント抽出だけでなく、配信原稿の取り込みや送信設定など、メールキャンペーンに必要な準備は多い。本来はセグメントごとに異なる内容のメールを出し分けたいところだが、これまではそれを可能にするだけのデータを持ちながらも、配信環境の問題で、一斉配信しかできなかった。そこで「お客さまのニーズにあったワンツーワンのコミュニケーションができるプラットフォームを構築することを最終的な目標とし、メールに関する業務効率の改善に取り組み始めました」(武井氏)。
メール担当者にかかる負荷が高くなりがちな背景には、膨大な業務量もさることながら、配信環境の問題が存在することも多い。これは、ドミノ・ピザも例外ではない。
国内のメール配信サービス(ESP)は、IPアドレスを共有するタイプが主流である。メールキャンペーンのタイミングが他社と重なることはよくあるが、共有型の場合、同じ時間帯に配信が集中すると、通信トラフィックダウンの原因になる。特に会員数の非常に多い企業のキャンペーンと重なる場合に起きやすい問題である。
これを回避するため複数のESPを使い分けるようにしても、それぞれが同じ問題を抱えているため、根本的にはリスク回避にならない。また、使うシステムが増えればその分、運用管理も複雑になる。解決するにはIPアドレスを専有できる環境に移行するしかない。けれども、専有型はコストの面で選択できず、結局現状維持せざるを得ないというのが、メール担当者の典型的な悩みだ。
また、共有型のメール配信サービスの場合、配信量に応じた課金体系に縛られる。つまり、細かいセグメントを対象に配信するには準備に時間がかかり、逆に対象者が多い粗いセグメントで一斉に配信すると配信費用がかさむというジレンマがあるのだ。
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