本連載では、ストックフォトを利用するための正しいルールについて、実際に発生してしまった事故やトラブルの事例を紹介しながら詳しく解説する。第1回は特に人物写真を利用する時の注意点について。
日々我々が目にしている多くのWebサイトやバナー広告には、必ずと言ってよいほど写真やイラストが使われています。そのほとんどは「ストックフォト」と呼ばれる出来合いのビジュアル素材が使われているのはご存知でしょうか。
例えばある旅行会社さんが、ハワイ旅行のバナー広告制作をデザイン会社に依頼したとします。それに使用するワイキキビーチの写真を、わざわざハワイまで行って撮影していたのでは大変なコストがかかります。また同じように、笑顔の4人家族の写真を撮影するとなれば、モデルの手配やらカメラマンへのギャラ云々と、その手間とコストは大変なものになってきます。そんな時に便利なのが、このストックフォトと呼ばれる、「あらかじめ撮り貯めてある写真素材」です。広告やWebデザインに携わっている皆さんは、このストックフォトを利用した経験のある方はかなりいらっしゃるでしょう。
大変便利でリーズナブルなストックフォトですが、使用するための正しいルールを理解しておかないと、後で大変なトラブルになってしまうことがあります。この連載ではストックフォトを利用するにあたっての正しいルールについて、実際に発生してしまった事故やトラブルの事例をご紹介しながら詳しく解説していきたいと思います。
ストックフォトには、1)ライツマネージド(以下RM)と、2)ロイヤリティーフリー(以下RF)の2種類があります。
価値の高い写真や、著名人のポートレイト、貴重な美術作品のオフィシャル画像などは、RMとして流通しています。RMの最大の特徴は、「いつ」「誰が」「どのような用途で」その写真を使ったかという使用履歴が管理されている点で、使用にあたっても上記の内容を申告してそれに見合った料金が設定されるレンタル型のストックフォトです。仮にRMの写真をWebサイトに使用する場合、そのWebサイトに掲載する期間(いつ)、運営している企業名(誰が)などを正しく申告して、その範囲を守って使用しなければいけません。申告した用途以外で使ったり、掲載期限を過ぎたまま使用を続けると、不正な使用として通常料金の何倍ものペナルティーを課金される場合もありますので注意してください。
一方のRFですが、一度料金を支払えば、期間や用途の申告をする必要がなく、さまざまな用途にいつでも使用することができる買い取り型のストックフォトです(著作権が譲渡されることはありません)。ただし、販売用のポストカードやカレンダー、Tシャツやトートバッグなどのアパレル商品、デジタル機器などへの内蔵やデザインテンプレートとしてのWeb配信などに利用する場合は、追加料金(エクストラ・ライセンス)がかかります。また、購入した写真を使用できるのは、あくまでも購入した人だけです。他人に貸したり、共有サーバーに格納して部署内で使い回しする行為は禁止されていますので注意してください。どうしてもそのような使い方をしたい場合は、追加料金を支払うことで許諾を得ることが可能ですので、提供先に問合せをしてください。
RFは、用途が増えるごとに料金がかかるRMと違って非常にリーズナブルな商品ですが、使用履歴は一切管理されていませんから、誰がどのような用途に使っているかは全く分かりません。したがって、競合している企業同士が全く同じ写真を広告に使用する可能性は当然高くなります。用途に応じてRMとRFを使い分けるのも上手なストックフォトの利用方法といえるでしょう。
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