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» 2011年02月21日 08時00分 公開

アジア新興国におけるソーシャルメディアの現状ソーシャルマーケティング新時代(2/2 ページ)

[岩渕匡敦, 辻佳子,デロイト トーマツ コンサルティング]
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ソーシャルメディア普及の影響

 このように、アジア新興国でソーシャルメディアが広く普及している事実は、アジア新興国を新たな市場として見据えている企業にとって、見逃せないものだろう。特にマーケティングや製品の販売という面では、極めて重要な特性である。

 「バイラルマーケティング」という言葉が登場して久しいが、オンライン上の口コミや情報共有を参考に購買の意思決定をする消費者が着実に増えている。この傾向は米国でも同様であり、企業のマーケティング戦略において、オンライン上での口コミや情報共有を制することが大きな鍵となっている。

 「特にアジア新興国の多くの国では、オンライン上の口コミを元に購買を決めており、今後この流れはますます加速していくだろう」(ニールセン・カンパニー コンシューマー・リサーチ、エグゼクティブディレクター 中屋孝行氏)

 実際にDeloitteのアジア各国における顧客購買動向調査からも、オンラインを含めた口コミやインターネット掲示板等の情報共有内容が、顧客の購買心理に大きな影響を与えている傾向があることが分かった(グラフ3参照)

グラフ3:各国消費者によるインターネット(青色)とテレビの広告信用度(5段階TopBos =“完全に信用する”)[出所:Nielsenによる2009年消費者調査(4カ国、2万5420人対象)を基にデロイトにて作成]

 なおこの調査によると、日本ではマスメディアやWeb広告への信頼度が相対的に高く、世界市場の中では、特殊な市場環境にあるという結果も出ている。日本はソーシャルメディアの活用について慎重であり、依然として「Face-To-Face」のコミュニケーションを重視する傾向にある。これは、マスマーケティングと深く結びついた過去の高度成長や、国土が狭い中での以心伝心のコミュニケーション、日本語という言語自体の問題など、日本が抱える固有性が背景にあると言えるが、言い方を換えれば、日本で成功しているマスメディア/マスマーケティングを主軸としたアプローチは、アジア新興国では通用しない可能性がある。日本企業は意識を変えて臨まなくてはなるまい。

 アジア新興国でソーシャルメディア上でのコミュニケーションに基づく購買行動が広がっているという流れは、実は日系企業にとって大きなチャンスでもある。ソーシャルネットワーク上でのコミュニケーションは、参加者が増えるにしたがい、「情報操作によるごまかしが効かない」「正確に価値が洗い出される」という傾向がある。

 つまり、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーションデザインにより、世界的に製品やサービスの品質の高さを誇る日本企業の価値が正しく評価され、それが広く伝播していく可能性を秘めているわけだ。例えば自動車であれば、単に価格だけではなく、品質に基づく安全性や各部品の耐久性、購入後のサポートを含めた安心感、さらには、車を手に入れることで得られるライフスタイルの変化まで含めて、トータルとしての価値の高さを消費者に訴え、気付かせるきっかけになる。自動車や家電、消費財といった業界はもちろんのこと、サービス業においても同じことがあてはまるであろう。

 日本企業は、ソーシャルメディアを上手に活用することによって、アジア新興国の市場で優位な立場を築ける可能性があるが、ソーシャルメディアを上手に活用するには、日本市場でのマスメディア/マスマーケティングを主軸としたアプローチを改め、新しいアプローチを確立しなければならない。

 次回は、アジア新興国におけるソーシャルメディア活用を考える上での一助として、ソーシャルメディアの活用が最も進む欧米企業の取り組みを取り上げ、アジア市場での活用に向けた考察を進めたい。

著者プロフィール

岩渕匡敦(デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネージャー)

ソフトバンクにて買収した企業の日本市場参入に携わり、その後、外資IT企業のマネジメントポジションを経て現職。10年以上にわたり、日系大手の自動車、航空宇宙、ハイテク製造業、通信業界の企業に対し北米、欧州、インド、中国、マレーシア、インドネシアなど多様な文化の中でのグローバルのプロジェクトに携わる。近年はグローバルマーケティング戦略、販売戦略、サプライチェーン戦略、IT戦略での多国籍プロジェクトを多数手掛ける。

辻佳子(デロイト トーマツ コンサルティング コンサルタント)

SEを経験後、官公庁や製造業などの企業統合PMIに伴うBPR、大規模なアウトソーシング化/中国オフショア化のプロジェクトに従事。大連・上海・日本を行き来し、チームの運営・進行管理者としてブリッジ的な役割を担う。その後、ITサービス、オフショア化、中長期戦略策定、事業性評価、マーケティングリサーチなどに従事し、現在は中国+アジア途上国における進出/撤退およびビジネス支援、アジアにおける官公庁案件、IT戦略の分野で活躍。


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