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» 2018年06月29日 08時00分 公開

B2Bマーケティング、今この人に聞きたい:テクノロジー企業からマーケティング企業へ――川上 潤氏(アルテリア・ネットワークス) (1/2)

30年にわたりIT系B2B企業のマーケティング支援に携わってきたエキスパートが、マーケティング中心の経営を実践するB2B企業を訪ね、そのチャレンジについて聞く。

[濱口 豊,ビッグビート]

この連載について

濱口さん

 ビッグビートの濱口です。私は広告業界で30年、一貫してB2B企業(とりわけIT企業)のマーケティングを支援しています。外資系クライアントとのお付き合いの中、マーケティングの強力なパワーを間近で感じ、日本企業がこの機能をうまく使いこなせば日本の将来に大きなインパクトを与えることができるはずだと考えるようになりました。

 今、B2Bマーケティングは大きく変化しつつあります。成果が出ている企業がある一方で、多くのマーケターが置かれる状況はまだまだ厳しいものだと感じています。この連載では、マーケティングが中心にある経営を実践されているB2B企業に、そのチャレンジについて聞き、これから変革を目指す企業のためのヒントを探りたいと思います。



 今回紹介するアルテリア・ネットワークス(以下、アルテリア)は、NTTやKDDI、ソフトバンクと同じく、自社で光ファイバー網を持つ通信事業者だ。他3社が個人にも法人あまねく同じサービスを提供していることに対し、アルテリアは自社の価値を最大化する層に絞ってサービスを提供しているところに特徴がある。同社は主に専用線やVPN、中堅・中小企業のインターネット接続などB2B向け通信に注力しつつ、国内シェアトップ(注)のマンション向けインターネット接続事業も手掛けている。アルテリアが目指すマーケティング型経営とはどういうものか。

注:MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査」(2017年3月末)

川上さんと濱口さん アルテリア代表取締役社長 川上 潤氏と筆者

先生からリーダーへ――コンサルから事業会社側へ転身した理由

 アルテリアで代表取締役社長を務める川上 潤氏は1987年に東京大学経済学部を卒業し、外資系コンサルティング企業に入社している。大学でボート部に所属していたという川上氏は、パフォーマンスを上げるためにデータを取りながら練習を繰り返し、少しでもいいタイムが出るように試行錯誤を重ねていたそうだ。データを活用して戦略を考えるという経験を生かせる仕事として川上氏がキャリアの始まりに選んだのが、コンサルタントだったのだ。

 日本で経験を積んだ後、同社に在籍しながら米国のビジネススクールで学んだ。MBA取得後は同社のニューヨーク事務所に勤務した。当時も米国で仕事をする日本のビジネスパーソンはたくさんいたが、そのほとんどは日系企業の現地法人勤務であり、米国のビジネス界で評価される実績を挙げられる人はほとんどいなかった。そんな中、川上氏は当時まだ珍しかった表計算ソフトに明るく、数字に基づいて戦略を立案できるという強みがあったため、クライアントからの信頼も厚かった。米国での経験を通じ、「プロとして何か一芸があれば、グローバルに活躍できる」と実感したという。

 日本に帰国した川上氏は、1997年に日本ゼネラル・エレクトリック(GE)に入社した。転職の理由について川上氏は「日本の場合、コンサルタントは先生という立場ですが、米国では同志であり、リーダーになる存在です。これまでのキャリアをより生かせる場として、GEに入社しました」と語る。

 GEでは、航空機エンジンや医療機器などの事業を担当した。CEOを務めたGEヘルスケア・ジャパンはグローバル企業の単なる販売拠点ではなく、開発、製造から全ての機能を持っていたため、ゼネラルマネジメントの経験を積むことができたという。中でも注力したのは、マーケティングの考え方を企業全体にたたき込むことだった。

 「GEはテクノロジー型の会社で、優れた製品を開発すれば売れるという思いがあります。日本企業と似たような感じでした。しかし、ニーズが多様化、複雑化した現在、必ずしもテクノロジーに優れた製品が売れるとは限りません。だからマーケティングが必要なのです。GEヘルスケア・ジャパンでは特にマーケティング強化に努めました」と川上氏は語る。

川上さん これまでのキャリアについて語る川上氏
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