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» 2018年03月30日 09時00分 公開

ロジカルに解き明かすEC・通販の成功法則 :広告で獲得したお客さまに製品の良さを納得してもらうには? (1/2)

EC・通販で成功するための肝となるのが、新規獲得後のCRMです。今回は、見込み客が顧客となった後のコミュニケーションについて解説します。

[川部篤史,JIMOS]

 前回まで、新規顧客獲得のフェーズにおける広告ついて詳しく述べてきました。広告の成果で新たなお客さまが生まれるのは喜ばしいことですが、ここで油断してはいけません。お客さまとの長期にわたる幸せな関係を構築する上では、むしろここからが本番です。いよいよCRM(顧客関係管理)と呼ばれる、一連のコミュニケーションの領域へシフトするのです。

 お客さまと継続的な関係性を構築するための活動は、全て一くくりにCRMとして捉えられることが多いのですが、リピートモデルにおけるCRMは、その目的と役割から2種類に大別して考えた方が合理的です。

 1つは、広告などで新規に獲得したばかりの顧客に対して行う「引き上げCRM」です。ここでの目的は、広告のおかげで製品に対して興味が向き始めたお客さまに対し、その製品・サービスの良さをあらためて体感、納得してもらうことにあります。

 もう1つは、引き上げCRMを通じて、しっかりと製品・サービスへのロイヤリティーが出来上がった顧客に対して行う「継続CRM」です。ここでの目的は、お客さまに飽きさせず、関係性を広範に深めていくことにあります。

 広告から引き上げCRMに至る過程は密接で分け難い部分がありますので、両者は一体で考えた方が望ましいといえます。一方で、引き上げCRMと継続CRMでは、同じCRMの範ちゅうにあっても目指す目的がまるで違ってきますので、担当者もチームも別々に設計しても良いのではないかと思います。

深い製品理解へと到達するには何度かの製品利用と啓発活動を経る必要がある《クリックで拡大》
それぞれの販促フェーズの役割《クリックで拡大》

製品に納得するまでの「引き上げCRM」

 広告から製品を購入したばかりのお客さまは、その製品に対してどの程度理解しているのでしょうか。事業者側からすれば「ちゃんと製品のことを分かっていただいている」のが理想です。しかし現実には、お客さまは製品の細かいところはほとんど知らないでしょう。

 とある乳酸菌の健康食品のケースを紹介します。この製品は、基礎研究でも製品研究でもしっかりとエビデンスデータを持っており、「毎日1本ずつ続けて摂取することで、2週間程度で効果を実感する人が7割に達する」という研究結果を広告で訴求することができました。であれば、この製品の広告に興味を持って手に取ったお客さまに対して取るべきコミュニケーションは、「毎日1本ずつ継続摂取する」ことと「約2週間後の製品効果を最大限に実感できるタイミングで反応を引き出す」ことです。そのために最適なタイミングと内容を一連のフローとしてコミュニケーションを設計することになります(薬事法上認められる範囲の中でどのように表現するのかということは、また別に考えます)。

 お客さまが効果を最大限に実感したとしても、その実感はそう長く持続しません。効果を忘れられないために、お客さまが気を抜きそうになるタイミングで、しっかりとリマインドしてあげることも大事になってきます。

 また、購入者全員がメーカーの思惑通りに使用してくれるわけでもありません。間隔や頻度を守らなかったり、量を少なめに使ったりと、メーカー推奨の使い方に沿わずに我流のスタイルのまま利用しようとする人も、一定数は存在します。

 このような使い方では、メーカーが本来想定している製品のポテンシャルを引き出すことができません。結果的に不十分な製品力しか引き出せずに終わってしまいます。しかし、放っておけばこの人たちは「製品の実力はこの程度なのか」と誤解してしまいます。さらにはその誤解を周りの人たちにまで広めかねません。そうならないよう、適切にフォローのコミュニケーションを行うことで、製品の評価を無用に損なわないように防御しておくことも重要になります。

 こうした考え方に沿って、例に挙げた乳酸菌の健康食品について引き上げCRMのフローを整理したものが、下記の図になります

乳酸菌製品 の 広告&引き上げCRMフロー トライアル顧客の商品理解進捗に合わせたフォローを設計する《クリックで拡大》

 大切なポイントは、それぞれのタイミングで行うコミュニケーションの内容も、タイミングそのものも、製品特性に沿ってカスタマイズされた内容であることです。他の製品での成功事例を取り入れる場合には、自社の製品特性に合わせたチューニングが必要です。この手間を惜しまないことで、顧客がしっかりと満足できるように引き上げる原動力に直結するのです。

 とはいえ、全てをオリジナルにしなければならないわけではなく、どの製品にも共通して見いだしやすいコンタクトの好機はあります。例えば以下のようなものです。

  • 製品を使った瞬間に分かること(テクスチャー、使用感など)
  • 製品を使った翌日から数日後に分かること(ちょっとした兆し、違い)
  • 製品の効果としてしっかり自覚できること(お通じが良くなった、お肌の弾力が違う、など)
  • 製品の効果として他人から違いが分かること(肌の色がワントーン明るくなった、など)

 まずは上記の共通する内容と、製品のみに特長的な内容を、最適なタイミングにプロットしてください。その上で、それぞれの内容の間隔があまりに空き過ぎてしまう場合は、その間にモチベーションを保つためのコミュニケーションを設計し、組み込んでいくわけです。このようにして、その製品ならではの「引き上げCRM」をカスタマイズして設計することが大切になります。

 世の中に出回っているCRMの成功パターンは、その製品の特性に沿ったものではあると思います。しかし、それがどんな製品にも普遍的に通用するかどうかは、注意して見極める必要があります。単に外形だけを取り入れるのではなく、その本質と骨格を見定める目を持ち、自身の扱う製品やサービスにフィットさせるのが、とても重要であるということです。

 例えば、上述のような健康食品と、肌のターンオーバーを改善させるスキンケアとでは、製品効果を自覚するタイミングも、他者から見て分かりやすい変化が表れるタイミングも、当然異なります。繰り返しになりますが、他社の成功パターンを自社のケースに取り入れる際は、外形的なパターンではなく、製品特性に合わせた理由に沿っているかを確認しておくことをお勧めします。

 細心の注意を払って対象製品のポテンシャルをしっかりと引き出し、実感してもらうためのコミュニケーションフローを設計することの重要性が、お分かりいただけたかと思います。広告で獲得できた顧客を、製品に対してしっかりと納得感と満足感を感じてもらえるよう、丁寧に誘導できるかどうか。たとえ広告が効果的に機能していても、ここがお粗末ならばビジネスとしては成功するはずがありません。

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