「無意識のウソ」を排除せよ――ユーザーの本音を引き出す定性調査の勘所【連載】データと調査で“愛されWeb”を作る 第4回(1/2 ページ)

アンケートに代表される定量調査が「仮説証明型」であるのに対して、「仮説発見型」の方法といえる定性調査。ユーザーの本音を引き出すために、何に気を付けなくてはいけないのでしょうか。

» 2016年08月31日 07時00分 公開
[太田文明アイ・エム・ジェイ]

 前回、アンケート調査には質問者の仮説が含まれ、ユーザーをあらかじめ「枠にはめてしまうという」側面があることを述べました。これを避けるため、自由回答形式でデータを収集し、その中から何かを発見するという「定性調査」を用いるわけですが、自由回答だから自由に本音を語ってくれるかというと、そう簡単にはいきません。

 一例として、とある企業の商品サイトがリニューアルするに当たって実際にあった案件を紹介しましょう。ここでは、ユーザーがどのようにWebを使っているのかを調べるためにインタビュー調査を行いました。そして、要望事項などを緻密に吸い上げ、新サイトの設計に反映させました。ところが、実際にリニューアル版をローンチしてみると、ほとんど流入も回遊もありません、そこで間もなくして、筆者のグループに相談が来たのです。

 調査レポートを見てみると原因は一目瞭然でした。この企業では本来の課題とは懸け離れた見当外れの仮説を立てて、それをインタビューで「証明」しようとしていたのです。

 この企業は仮説として、下の図のようなユーザーの行動モデルを想定していました。

行動モデル

 そして、ユーザーに対して「テレビはご覧になりますか」「気になる商品のCMを見ると印象に残りますよね」「CMを見たらもっと詳しく調べるためにWebを使うと思うんですが……」と、「Yes」と答えるしかない誘導尋問のようなインタビューをしていたのです。そうして強引に引き出した発言をそのままユーザーの要望事項とし、リニューアルを進めていったのです。

 ところが、あらためて適切な方法で調査をしてみると、ターゲットとしていたユーザーのほとんどは、WebサイトはPCでは全く見ないし、この企業が想定していたような流れで行動していないことがすぐに分かりました。そして、さらに分析していく中で「テレビでも店舗でも解決できないモヤモヤを解決するための何か」の必要性が明らかになり、最終的には、これまで想定していなかったスマートフォン特化型のコンテンツを提供することで、大きな成果を挙げることができたのです。

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