今回のプロジェクトでGeminiを活用したのは「仮想ペルソナとの壁打ちによるインサイトの深掘り」「コンセプトやクリエイティブ方針の策定支援」「メディアプランニングの最適化」の3つだ。
プロジェクトは1回につき2〜3時間のワークショップ形式で進めた。事前準備として、大正製薬が保有する自社の定性・定量調査データや実購買データ、Googleの検索・インテントデータ、電通の独自調査データなどを、セキュアな環境でGeminiに学習させておいた。
その上で、これらのデータを基に仮想ペルソナを作成し、マーケティングプランを検討する際の対話相手とした。
大正製薬では従来から、顧客アンケートやインタビュー、実購買データの分析を通じて、ブランドへの新規流入が多い30〜40代をコアターゲットと定めていた。一方、実際の売り上げ構成比では50〜60代が大きな割合を占める。
年齢や性別などの属性データだけでは「どのようなきっかけでリアップを知り、何を考え、なぜ購入したのか」といった購買に至る過程までは捉えにくい。そこで、保有データを基に、30〜40代のターゲット像を「山田太郎・45歳・中間管理職」という仮想ペルソナとして具体化した。
ワークショップでは、この「山田太郎」を大画面に表示し、モデレーターが参加者の発言を基に、さまざまな質問を投げかけた。
「あなたはどういうタイミングで髪の悩みを自覚しましたか?」
「どこでリアップを知りましたか?」
「リアップを購入する際に、何が決め手になりましたか?」
こうした質問に対する回答を見て、参加者が仮説を立て、さらに質問を重ねていく。仮想ペルソナとの対話を繰り返しながら、ターゲットへの理解を深めていった。
「人間の生活者相手に対面では聞きづらいようなことでも、AIなら遠慮なく踏み込んでいける。その場で仮説検証を繰り返し、関係者で共通認識を持ちながら、意思決定のプロセスを一気に進められたのが最大の収穫だった」
ブランドマネジメント部 外用グループ主任の越智啓介氏はそう振り返る。
山田太郎との対話を深める中で、いくつもの気付きを得られた。
カスタマージャーニーは一方向に進むわけではなく、情報に接触した後に購入をためらう段階があることも見えてきたという。また、購入を迷う人は、何らかの後押しを求めていること、臨床試験データがブランドへの信頼につながること、同じ悩みを持つ人の存在が購入のきっかけになり得ることなども見えてきた。
こうしたインサイトを基に、Geminiに70〜80通りのコンセプト案を出力させ、再び山田太郎と壁打ちしながら絞り込んだ。さらにキービジュアルには、迷っている人の背中を押すメッセージとして「悩んだらリアップ」を採用。クリエイティブでは、ブランドへの信頼につながる要素として、臨床試験データを盛り込む方針とした。
メディアプランニングでは「もしあなたと同じ悩みを持つ人が1000人いたら、1日の中でどのようなメディアに接触しますか?」とGeminiに問いかけ、1000通りの行動パターンを統計的にシミュレーションさせた。
結果、YouTube広告なら、最適な接触回数は5〜7回であると判明。ROI(投資利益率)を最大化する予算配分を導き出すことができた。
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