同社はブログへの流入が80%減少したことを機に、AEO対策に注力してきた。「ブログを読む時間は減っても、SNSやポッドキャスト、ニュースレターに触れる時間は減っていないことを発見し、チャネルの拡大に取り組んだ」
まず、ポッドキャストとニュースレターに投資。加えて、10のYouTubeチャンネルを開始したり、LinkedInとInstagramでのプレゼンスを拡大したりした。
その結果、YouTubeやニュースレター、ポッドキャストといった新しいチャネルからのリードは2倍以上に伸びた。しかし、従来のブログやアプリからの流入は減少したままだ。
ヤミニ・ランガンCEOはAI時代において「もうクリック数(流入数)は重視しない」と語る。
同社のAIトラフィックは増加しており、AIからのリードは3倍良いコンバージョンを示している。AIに対しさまざまな質問を重ねていることが多いぶん、AI経由のリードは通常の検索と比較して商品やサービスへの理解が深く、熱量が高い傾向があるとし、AEO対策を強化することが、企業の成長につながると強調した。
同社はAI時代におけるこれらの変化を受け、新しいマーケティングのフレームワーク「Loop Marketing」(ループマーケティング)を定義し、発表した。
Loop Marketingは「EXPRESS」(表現)、「TAILOR」(個別化)、「AMPLIFY」(増幅)、「EVOLVE」(進化)の4つのステージで構成される。この4つのステージを常に行き来し、ぐるぐると回し続けることが重要だとする。
AIを導入する前にブランドのトーンや特徴、独自の視点を定義する。特にこの部分がヒトのスキルの見せどころで、“自社らしさ”を明確に、人間らしい言葉で表現することが重要だ。
「生成AIは数秒でコンテンツを生成できるが、(自社特有の)明確な視点がなければ出力は平凡で、的外れなものになります」
AIを使用して、見込み客とのやりとりをパーソナルかつ、相手の文脈に合った関連性の高いものにする。価格ページを何度確認したか、問い合わせはあったか──など、顧客の過去の行動や状況に合わせ、コンテンツをパーソナライズしていく。
コンテンツを増幅させる。例えばブログコンテンツを動画、SNS、メルマガ、ポッドキャストといった多様なチャネルで配信し、顧客との接点を増やす。
ヤミニ・ランガンCEOはこの「増幅こそAIの神髄だ」とし、優れたコンテンツを、動画やオーディオ、テキストなど、実際に顧客がいるさまざまな場所で展開し、存在感を高めることが重要だとした。
AIを活用して迅速に施策を修正・改善する。例えば、データを分析し、エンゲージメントの可能性が最も高い受信者を予測し、メール配信施策を改善するなどの方法がある。
「AIが共にある世界においては、何かをローンチすることではなく、学習を続けることで勝つ」(ヤミニ・ランガンCEO)
HubSpotはこれまで、メールやブログ、SNSなどさまざまなデジタルチャネルを駆使して、未来の顧客を自社のビジネスへ引き込む「インバウンドマーケティング」という手法を提唱してきた。それが、生成AIの登場で大きく形を変えた。
「Loop Marketing」を実現できれば、これまで以上にたくさんのコンテンツを量産でき、未来の顧客との接点を持てる可能性が高まるかもしれない。しかし一方で、生成AIによってコンテンツが増えすぎてしまった状態は、生活者にとってはフレンドリーではないのではないか。
この疑問に対する同社の回答については、次回の記事で解説する。
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