――キュレーションの仕組みは媒体社側にとってもメリットがあるのでしょうか。
クレープ: ISBA(英国広告主協会)が2020年にコンサルティング会社のPwCに委託して実施した調査では、媒体社が受け取る金額は広告主が支払った広告費の約半分に目減りしていることが明らかになりました。エンドツーエンドのバリューチェーンの上でさまざまな仲介者がコミッションを取ることによって広告予算が削られる問題は「アドテク税」とも呼ばれています。
既にご説明した通り、キュレーションプラットフォームを使って広告主が直接媒体を指定するようになると、取引にかかわる仲介者が少なくなります。仲介コストを抑えた形で透明性を担保した運用ができるようになれば、アドテク税を大幅に削減できる可能性があります。
そうなれば、広告主は投資を効率化し、媒体社は歩留まりが高くなり、双方にメリットとなるでしょう。われわれの社名は Equality(公平性)に由来しており、サプライサイドにもデマンドサイドにも公平でありたいと考えています。
――サードパーティーCookie廃止に伴うシグナルロスやブランドセーフティーの脅威、さらには有害な広告のまん延など、あらゆる意味でデジタル広告の信頼性が低下しているように思います。このような現状についてご意見を聞かせてください。
クレープ: デジタル広告の信頼回復は急務です。そのためにわれわれのようなアドテク企業がやらなければならないのが、しっかりと透明化を担保しながらコスト効率を上げられるような管理側のケイパビリティーを提供していくことだと考えています。
われわれのソリューションが広まることで、MFA(Made For Advertising:広告を掲載するためだけに作られた低品質なWebサイト)がまん延する余地を縮小させていくことにもつながるでしょう。UXの向上につながる質の高いクリエイティブを親和性の高いユーザーに適切なタイミングで提供していく。広告を邪魔なものでなくすることが肝心だと考えています。
――質の高い媒体と質の高い広告を透明性の高いところでマッチングできれば、結果的に質の低い広告面や質の低い広告を排除できるということですね。
クレープ: その通りです。そもそも広告を打つのは基本的にユーザーの興味関心を引くためですよね。オークション形式のプログラマティック広告は価格を下げるだけのものと思われがちですが、熱量の高いユーザーからきちんと興味関心が引き出せるのであれば、広告主は予算を増やすことさえも厭わないでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.