日本のモバイルアプリトレンド2025 クロスデバイス戦略とMMMの重要性とは?モバイルアプリトレンド予測2025【前編】

急速に進化するモバイルアプリ市場においてAIと機械学習の活用が本格化し、マーケティングや収益モデルに革新をもたらしています。2025年はAI主導のデータ分析や新たなメディア戦略がアプリのグロースや競争力強化の鍵になるでしょう。

» 2025年01月16日 08時00分 公開
[佐々直紀Adjust]

 モバイルアプリはユーザーとの重要な接点ですが、単に立ち上げるだけでは不十分です。最新のテクノロジーとマーケティングの経験、情報力を融合させることが、競争に打ち勝ち、成長を実現する鍵となります。

クロスデバイス戦略とMMMの重要性

 既に5Gの普及率が非常に高い日本において、利便性や多様性が洗練されているスマートフォンやアプリは、消費者にとって一層手放せないものとなっています。特定のアプリにユーザーが固定化しつつある一方で海外製アプリの参入も進み、日本のモバイルアプリマーケターはジャンルを超えた熾烈な競争にさらされています。

 この状況を打破するためには、複数チャネルを活用した戦略が極めて重要です。CTV(コネクテッドTV)やポイ活アプリなどの新たなメディアが急速に浸透しつつありますが、従来のメディアも進化を続けています。これらを効果的に組み合わせることが、成功への必須条件となってくるでしょう。

 単にインストール数を増やすだけでは十分ではありません。今日ではインストール後のユーザーの動向こそが重要になっています。LTV(顧客生涯価値)や継続率などをKPI(重要業績評価指標)とした場合、各チャネルの効果を精緻に分析し、適切な予算配分を行う必要が生じます。このため、さまざまなマーケティング施策の貢献度を定量化し、投資対効果(ROI)の最大化を目指すMMM(マーケティングミックスモデリング)の普及が進むと予想されます。ラストクリックのみで判断せずにユーザージャーニーを意識してアシスト効果を把握し、チャネルごとの相互作用を理解することも重要です。MMMによる総合的な評価はグロースの前提となるでしょう。

アプリの最大値を引き出すためにAI活用が必須である理由

 そこで念頭におくべきは、AIによるより精度の高いマーケティング活動です。PDCAの全てにAIが活用できる昨今、各ツールの特性を把握し、積極的にトライしてみることが重要です。アプリの便益を高めながら休眠阻止や復帰率を上げていくために、確率的モデリングのデータを活用した各ネットワークの効率・効果改善にも着目すべきです。

 各チャネルともAIの進化に積極的に取り組んでいます。新規獲得だけではなく、リエンゲージメントの成果も高まっていくでしょう。マスに極めて近い特性のCTVも戦略に組み込まれるようになり、クロスデバイス計測の活用も広がると考えられます。

 例えばゲームであれば、PCやコンソールといったプラットフォーム横断での成果の分析が活発になりつつあります。今日、経団連と政府が連携して日本のコンテンツの海外展開を後押しする動きがあり、マンガやエンタメなどさまざまな業種にもチャンスが訪れるでしょう。日本のアプリが海外に広がる一方で、日本のIPと海外の有力アプリとのコラボレーションが出てくることも考えられます。

 サブスクや広告だけでなくアプリ内購入やアプリ外購入などが加わって収益モデルが最適化されれば、ユーザーの選択肢も増え、さらに成果を生み出すきっかけとなっていくでしょう。

 こうした戦略策定に費やす時間を確保するためにも、AIによる業務効率の改善は必須です。洗練された戦略はAIのさらなる進化にもつながっていくでしょう。

寄稿者紹介

佐々直紀

佐々氏

さっさ・なおき Adjust日本ゼネラルマネージャー。1974年生まれ。2000年4月からデジタルマーケティングに携わり、オンラインモールの「キュリオシティ」や「Yahoo!ショッピング」、ショッピングサーチ「ビカム」、リターゲティング・DMPの「Vizury」にてAE、AM、マーケティング業務を経験。2016年1月からTUNEの日本法人の立ち上げメンバーとして、本格的にアプリ計測分野に参入。2016年11月よりAdjustに参画。


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