Nikeは今、あらためてスポーツを基盤としてブランドの価値を強化しようとしている。そして、販促や広告に頼る手法から脱却しようとしている。
Nikeは最新の業績発表で、パフォーマンスマーケティングへの支出を削減し、ブランド構築を重視する新たな方針を示した。スポーツを軸とする姿勢も明確にしている。
2023年9月に新たなCEOが就任した後、Nike売り上げ不振と文化的影響力の低下からの回復を目指している。
Nikeは過去1年以上にわたり、D2C(直販)チャネルへの過剰なシフトと、それに伴うブランド構築の軽視に対処してきた。経営陣は同社の2025年度第2四半期(2024年9〜11月期)の業績について投資家と議論する中で、かつて同ブランドを文化的アイコンに押し上げたアッパーファネル戦略に再び注力する方針を明確にした。
2023年9月にジョン・ドナホー氏からCEO職を引き継いだエリオット・ヒル氏は「パフォーマンスマーケティングからブランドマーケティングへと予算をシフトし始めています。競技分野への投資こそが、製品の革新、新しさ、独自性を生み出す源泉であるからです」と述べた。
2025年度第2四半期のNikeの収益は前年同期比8%減の124億ドルとなり、Nikeのデジタル直販事業は13%、卸売事業は3%の減少となった。
Nikeは直近2カ月間でナショナルフットボールリーグ(NFL)、全米バスケットボール協会(NBA)、全米女子バスケットボール協会(WNBA)、ブラジルサッカー連盟、FCバルセロナとの契約を更新した。これらの長期的なパートナーシップは、スポーツマーケティング戦略の再構築において不可欠と位置付けられている。また、主要都市における地道な活動も重視し、「市民アスリートやインフルエンサー」との連携を強化していく方針だとヒル氏は述べた。Nikeがランニングなどのかつての主要カテゴリでシェアを失った理由は、HOKAのような流行の新興ブランドが消費者の支持を集めていることに関連している。
ブランド構築への再調整はNikeにとって全く新しい方向性ではないものの、CFO(最高財務責任者)のマシュー・フレンド氏によれば、その変革のペースは加速しているという。特に新しいのは、プロモーション活動を削減して定価モデルを採用し、パフォーマンスマーケティングへの依存を減らす点である。この新しいアプローチでは既存在庫を多く売りさばく必要があり、一方で有料トラフィックへの依存が軽減されるとフレンド氏は語った。
Nikeは、より大胆なクリエイティブへの回帰に向けた土台作りを既に始めている。夏季オリンピックに合わせて、長年のパートナーであるWieden+Kennedyと共に、「Winning Isn’t for Everyone(勝ちたくて、何が悪い。)」という大規模なキャンペーンを開始した。このキャンペーンはエリートアスリートを支える揺るぎない意志を強調する攻撃的なメッセージが特徴だ。その延長として制作された、マラソンシーズン向けのキャンペーンである「Winning isn’t Comfortable」は、Ad Ageの「今年の最優秀キャンペーン」に選ばれた。これは、ブランドのアプローチが反響を呼んでいる証拠として、収益報告の中で言及された。
「究極的には、スポーツを軸に据え、私たちのカルチャーとアイデンティティーを再び活性化させます。私たちには、世界中の全てのアスリートにインスピレーションと革新を提供するという、業界で最も強力なミッションステートメントがあると信じています」とヒル氏は投資家向けの電話会議で語った。
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