2024年の米大統領選の当日、Xの利用者数が過去最高を記録した。Threadsに流れていたユーザーも政治的議論の場を求めてXに戻ってきたとみられる。
2024年の米大統領選はドナルド・トランプ元大統領が激しい戦いを制して2度目の任期を勝ち取った。
これにより、イーロン・マスク氏もまた大きな勝利を収めた。彼が率いるソーシャルメディア「X」は新たな展開を迎える可能性が高まっている。Xはこの結果を受けて、新たな支援やパートナーシップを得られる可能性が高まり、今後のビジネス継続に向けて追い風となるだろう。
そして当然のようにXは「記録的な使用率」を誇示し、選挙日の高い利用率を一つの成果としてアピールしている。
Xが公開した内部データによると、選挙の日にXの投稿数は過去最高を記録し、モバイルでのユーザー滞在秒数も新記録を達成したということだ。
参考までに、2023年9月の時点で、Xは1日当たり5億件の投稿があると報告していたが(関連記事:「Xの自然流入がInstagram超え? イーロン・マスク氏が自慢げに示すデータの正しい読み方」)、2024年1月におけるアプリ内でのモバイルアクティブユーザーの総滞在秒数は3390億秒だった。つまり、投稿が大幅に増えても、費やす時間はそれほど増えない構造だった。しかし、今回の選挙では、Xへのエンゲージメントが大きく高まる結果となった。
また、新規ユーザーの登録数も大きく増加した。これは、さほど驚くようなことではない。多くのThreadsユーザーがリアルタイムコンテンツの不足に不満を抱き、最新のニュースをアプリ内で追うことが困難であったこと、また、政治的内容を嫌うThreadsでは重要な情報源や当夜の重要な議論の場になる能力が制限されていたことなど、複数の要因が重なった結果だろう。
そのため、多くの人々が最新情報を求めてXに戻ってきた。そして今、Xは勢いに乗り、トランプ氏への幅広い支持がXの新時代へとつながり、広告パートナーからの支持を回復することを望んでいる。
どういうことか。それはマスク氏の下で右寄りの論調に明確に同調したXが、より分裂的で、米国民を代表する存在ではないプラットフォームと見られていたからだ。しかし今、多くの有権者は、トランプ氏と彼のチームが進めるアジェンダを支持するマスク氏の視点と明らかに一致している。今後はXに対する印象も変わっていくことになるだろう。
これにより、Xに対する批判が緩和され、同時により多くの人々がXに戻ってくるかもしれない。そうなれば、結果として広告主のXへの関心も高まる可能性がある。
また、マスク氏は自らのトランプ氏への支持が再選を後押ししたことを示しつつ、Xの政治的影響力を他国の勢力にもアピールできるようになるだろう。これにより、他国でも同様に政治的成功を支援することで、Xへの支持基盤をさらに広げようとする可能性がある。さらに、Xの事業継続のため、一層の投資を募り、政治的影響力を最大限に引き出そうとしている。
もちろん、トランプ氏は新政権でマスク氏に政府の無駄遣いを見直す役割を与えているため、マスク氏はそちらに時間を割かれるかもしれない。それでもトランプ氏の勝利はXにとって明らかにプラスであり、今後の事業機会が拡大することが見込まれている。
とはいえ、Xの収益は旧Twitter時代の水準にはまだ遠く、事業の再構築への道のりはまだ長い。仮にトランプ氏が敗北していれば、ソーシャルメディア事業は終了していたかもしれないところだったが、とにもかくにも今回の勝利により、新たな機会が開かれる見通しだ。
そして、選挙日の利用状況が示すように、Xの今後は大いに期待できる。
この1年の大半を通して、Xは財政的破綻に向かっているように見え、広告パートナーの撤退や代替収入の失敗が続いていた。しかし、今後は好転の兆しが見られ、2025年にはさらなる勢いを得る可能性がある。
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