オープンWebで大きな問題となっているMFA(Made ForAdvertising)はモバイルアプリにおいてはほとんど話題にならない。どういうことなのか。
ここ数カ月、デジタル広告業界はMFA(Made ForAdvertising: 広告を見せるためだけに作られたWebサイト)が話題となっています。MFAサイトで広告を購入する広告主は、トラフィックに対してより高い費用を支払い、広告予算を無駄にすることとなります。
ところで、MFAはオープンWebで大きな問題となっていますが、モバイル、特にアプリについてはどうでしょうか。
モバイルアプリの中にもMFAに相当するものはあります。しかし、Web環境のようにエコシステムに蔓延することはないでしょう。Webベースのディスプレイ広告では、広告の成果はインプレッションやクリックによって計測されます。つまり、消費者が広告を見るかどうかが重要であり、広告の視認性が鍵となるのです。
対照的に、モバイルエコシステムはパフォーマンスに重点を置いており、広告費用はダウンロードや売り上げなどのビジネス指標を一貫して達成することが前提となっています。従って、コンバージョン中心のモバイルエコシステムでは、MFAモデルは単純に作動しないのです。
それでもMFAアプリが全く存在しないわけではありません。これを遮断するには、アプリストアの厳格な審査ガイドラインや広告ネットワークの要件だけでなく、ユーザーからのフィードバックが欠かせません。評価やレビュー、アプリストアなどへの報告から、ユーザー体験に影響を及ぼし広告を押し付けるアプリを排除する、重要なフィードバックのループが生まれるためです。
ユーザーから直接寄せられるフィードバックが厳格な業界水準と合わさって、パフォーマンス主導のネットワークにおいてMFAアプリの普及を防ぐことになります。過度で押し付けがましい広告によってユーザー体験を損なうアプリは継続率が低く離脱率が高いため、順位や収益性が低下し、最終的にはアプリストアから削除されます。
パフォーマンスが重視される市場において、広告主はユーザーエンゲージメントが低く低評価のアプリに広告費を投じようとはしないからです。
MFAアプリが成功しないその他の理由は、ポジティブな体験を提供してユーザーに適切な広告を配信することでアプリのパフォーマンスが向上するということを、モバイル業界の誰もが理解しているためです。
ユーザーの体験を阻害するほど多くの広告を表示することは、アプリにとって有益ではありません。広告主は、特定のプロフィールに一致するオーディエンスにリーチし、エンゲージすることで、コンバージョンを促したいと考えています。さらに、ブランドイメージを守ることも重要であるため、高評価で継続率が高く、ダウンロード数が多いアプリへの広告配信を望む傾向があります。このような理由から、広告主はユーザーの継続率とエンゲージメントを優先するアプリパブリッシャーから広告を購入したいと考えます。
多くのパブリッシャーはAppleやGoogleによるアプリストアの規制に不満を持つ傾向があるものの、MFAの場合、プラットフォームの「防護柵」がインベントリの質を高いレベルに維持するのに貢献しているため、結果としてマネタイズの取り組みを守ることとなります。どのカテゴリーでも最高のユーザー体験を提供できるアプリこそが、優れた広告主を引き付け、高い収益を実現することができます。
パブリッシャーにとってもブランドにとっても、モバイルの計測基準となるのはパフォーマンスです。MFAはブランドセーフティに対する脅威でしかないため、パフォーマンスマーケターはわざわざそのようなリスクを冒すことはないでしょう。
良質なコンテンツと高いパフォーマンスが比例するという理論はWeb環境にも当てはまるはずですが、Webに特化したアドテクプラットフォームは、広告主と同じ方法でパフォーマンスを計測できない可能性があるため、実際にはそうとは言えません。 MFAサイトでの広告支出が増加すれば、これらの広告プラットフォームの収益も増加します。
しかしモバイルでは、マネタイズできるMFAアプリがそれほど多くないため、Webのようにパートナーの広告支出を増やして広告収入を増やす方法は存在しません。
WebにおけるMFAがモバイルで浸透していないことは驚きかもしれませんが、SSPがアプリネットワークのマネタイズプラットフォームと競合する必要がなければ、おそらくモバイルもMFAの脅威から逃れることはできなかったでしょう。SSPもWebパブリッシャーも、CPMにフォーカスし、インプレッションを多く獲得することで利益を得ますが、アプリのパフォーマンスネットワークの場合、ダウンファネルゴールをターゲットにしているためです。
モバイルアプリネットワークはCPMまたはCPIに基づいて広告主に費用を請求するものの、パフォーマンスはROASやCACのような広告主のKPIに向けて最適化されています。さらに、パフォーマンスが低ければ、広告主がモバイルアプリ広告に対してコンスタントに費用を費やさないことを知っています。つまり、モバイルアプリネットワークがMFAの広告サプライを供給すれば、広告主は損をし、その結果、モバイルアプリネットワークも損をすることになります。
別の言い方をすれば、モバイルアプリネットワークとモバイル広告サプライソースの目標は、インプレッションだけでなく、価値の高いユーザーのエンゲージメントを高めることで、CPMの競争力を高めることです。結局のところ、広告主が望む、関連性のあるリアルなオーディエンスと広告主をつなげることができなければ、広告主を惹きつけることはできず、収益は他に流れてしまいます。
MFAは依然としてオープンWebで猛威を振るっていますが、一貫して優れたパフォーマンスを達成しているアプリネットワークは、MFAが収益戦略において全く役に立たないことを理解しています。MFAの問題を心配している広告主にとって、モバイルアプリのエコシステムは安全を確保できる場所となるかもしれません。
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