HubSpotは年次自社イベント「INBOUND 2024」において、AI機能群「Breeze」をはじめとする200以上のアップデートを発表した。
HubSpotは、年次自社イベント「INBOUND 2024」(米国東部時間2024年9月18〜20日開催)において、AI機能群「Breeze(ブリーズ)」と、200以上の製品アップデートを発表した。
BreezeはHubSpotのプラットフォーム全体を強化するためのツールで、業務効率化と生産性向上を支援する「Breeze Copilot」と、作業の自動化を支援する「Breeze Agent」で構成される。
「Breeze Copilot」は対話型のAIアシスタントで、例えばBDR(インサイドセールス)が新しい見込み客を調査する場合、「ボストンのSaaS会社を探して」といった簡単なプロンプトを入力するだけで、数秒で結果を得られる。これらの結果はHubSpotのSmart CRMに連携され、さらにプロンプトを入力することで、送り先ごとにパーソナライズされた関連性の高いアプローチ用のメール文面が生成される。反応があった見込み客に架電する前にこれまでのメール内容を要約してくれる機能もある。
「Breeze Agents」は、各業務領域のタスクを迅速に処理するツールで、以下の4種類が用意されている。
その他、「コンテンツリミックス」や「売上予測」など、プラットフォーム全体に組み込まれた80種類以上のAI機能を提供し、業務効率化のみならず顧客体験の向上にも貢献する。
Breezeがよりよく機能するためには自社や顧客について正しく知る必要がある。つまり重要なのはデータだ。「Breeze Intelligence」は2億件以上に上る企業および購買者のプロフィール情報をデータベースから取り込み、Smart CRM上の企業レコードとコンタクトレコードを拡充、包括的な顧客像の把握を支援する。また、購買者可能性の高いシグナルを見込み客に自動で付与し、質の高いリードの生成を後押しする。Breeze Intelligenceの既知情報をフォームに自動で挿入して見込み客のフォーム入力作業を簡略化するなど、コンバージョン率向上の仕組みも備えている。
Marketing HubとContent Hubの機能強化も発表された。リードスコアリングの領域では、エンゲージメントスコアとAIによる適性スコアを用いて見込み客の行動を分析し、有望な見込み客を特定できるようになった。また、行動データ分析ツール「Amplitude」とSmart CRMを連携させ、顧客の製品利用状況を把握することも可能となった。
コンテンツ生成の領域では、動画の「コンテンツリミックス」機能を提供中で、一つの動画を複数の動画クリップ、音声コンテンツやテキストコンテンツに変換し、包括的なキャンペーン展開ができるようになった。さらに、AIアバター生成サービス「HeyGen」と連携し、動画素材の生成も可能になった。
広告の領域で注目すべきは、「Google 拡張コンバージョン」機能の追加だ。これにより、ユーザー企業が持つHubSpot内のコンバージョンデータ(ファーストパーティーデータ)を活用してGoogle広告のキャンペーン効果を改善する。
キャンペーンの計画では、Breezeに必要なワークフローを指示するだけでシナリオを構築でき、配信の最適化も強化された。また、「マーケティングアナリティクススイート」を提供し、マーケティングに関するあらゆる測定指標やレポートに1か所からアクセスできるようにした。
これらのアップデートに加え、HubSpotはプラットフォーム全体で200を超える改良を発表している。詳細は特設サイト「Fall 2024 Spotlight」(外部リンク)で紹介されている。
HubSpotで製品担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるアンディ・ピトル氏は「全世界のHubSpotユーザーの中で特に成長している企業に共通するのは、ツール導入時にその使いやすさ、即効性、そして社内のデータやプロセス一元化にいかに貢献するかという3つの要素を重視している点です。企業が事業成長のためのインフラストラクチャーを構築する際の選択肢が無数に溢れる今、HubSpotはあらためて『使いやすさ』『即効性』『一元化』という業務支援ツールが備えるべき根本的な性質を念頭に置き、企業が最新のテクノロジーを実際の事業の成果に繋げられるよう取り組んでまいります」とコメントしている。
HubSpotの独自調査レポート「HubSpot's Marketing Trends 2024 Report」やGartnerの調査レポートから、顧客を自社のWebサイトに呼び寄せ、エンゲージメントを高め、コンバージョンに導き、受注後も取引を保持し続けるというマーケティングのプロセスのいずれも難易度が上がっていることが分かっている。
Googleの新しいAI検索機能「AI Overview」やOpenAIが提供する「SearchGP」によって、ユーザーは検索画面を離れずに大量の情報を得られるようになり、Webサイトへの訪問は減少するとされている。Gartnerの調査では、検索ボリュームが今後2年間で25%減少する見通しだ。また、SNSからの訪問も減少している。
HubSpotのCEO、ヤミニ・ランガン氏はINBOUND 2024の基調講演で「成長の方程式(the growth formula)が崩れている」と指摘した。少ないトラフィック、低いコンバージョン率、低いリテンション率は低成長に直結する。これを打開する鍵がAIだという。
ランガン氏は今後、企業がAIを「アクセラレーション(物事の促進)」よりも「トランスフォーメーション(物事の変革)」のために使うようになると言う。アクセラレーションとはタスクの自動化など、既に実行可能な物事をもっと速く実行できるようにすること。対してトランスフォーメーションとは、現在実行不可能なことを可能にすることだ。目標を再定義し、タスク同士をつなぐ上ではAIが強みを発揮する。
マーケティング、とりわけコンテンツマーケティングにおけるAIの強みは、トピックの調査や初稿の作成、異なる読み手に合わせた微調整などである。一方、人間の強みは、信頼性、クリエイティビティ、独自の視点をコンテンツに付加し、より洗練させることだ。
ランガン氏は「AIを過小評価していては成長は望めないのと同様に、AIの過大評価も事業の成長にはつながりません。重要なのは、AIと共創(co-creat)することです。共創こそが成長の媒介となるのです」と語った。
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