動画ファーストのプラットフォームを目指すXが次なるステップを踏み出そうとしている。YouTubeが成長領域として力を入れ、旧Twitter時代にも挑戦したコネクテッドTV(CTV)への再参入だ。
過去数カ月にわたって新しいテレビアプリの一部を公開してきたXが、ついに「X TV」のβ版を公式にリリースした。同社はこれを「Xを動画中心のプラットフォームに変革するための大きな飛躍」と位置付けている。
この外見、YouTubeのConnected TV(CTV)バージョンである「YouTube TV」によく似ていないか。
そう。この新しい大画面再生プラットフォームは、YouTube TVアプリと基本的に全く同じで、Xで視聴できるあらゆるビデオコンテンツを、家の中で一番大きな画面で見ることができるようにする。
Xは潜在的な動画広告パートナーに対し、この新しいテレビアプリがXの先進的なAIシステムによってトレンドコンテンツを強調し、最終的にはクロスデバイス互換性を持たせ、ユーザーが携帯電話からテレビに移行してもコンテンツを視聴し続けられるようにするとしている。
テレビアプリ向けの新しい広告オプションを近日中に提供する予定であることも明らかにしている。ただし、現時点ではまだ利用可能ではない。
この試みの狙いは、アプリ内での動画コンテンツ消費を促進することであり、CTVがYouTubeにおいて最も急成長しているカテゴリーであることを考えれば、Xがここに注力する理由も明確である。
次に問われるのは、Xが動画サービスにより多くの関心を集めることができるかということだ。というのも、現在の独占ソフトのラインアップは、決してメジャーなものではないからだ。現時点でXが契約している動画コンテンツの例は以下の通りである:
このように、少なくともメインストリームの視聴者を相手にする限りにおいて、大きな目玉と呼べるものはない。それでもXは引き続き新しいコンテンツ契約に取り組んでおり、アプリにより多くの独占コンテンツをもたらすつもりではいる。
もしXがこの試みに成功し、投稿と動画コメントを組み合わせることができれば、大きな可能性があるだろう。しかし、上手にこのバランスを取るのは容易ではない。これまでの同社の取り組みを見る限り、成功には慎重な計画が必要である。
なお、CTVや独占コンテンツ契約の試みは今回が初めてではない。2016年に旧Twitterの時代にも、同社は動画を成長戦略の中心に据えていた。MLBやNFL、NBAとの独占契約を結び、アプリ内でのゲーム配信を行った。また、Apple TV、Amazon Fire TV、Xbox One向けの専用アプリもリリースし、自宅のテレビでTwitterの動画コンテンツを消費できるようにもしていた。
Twitterは数年間にわたり、この「セカンドスクリーン」アプリとしての人気(Twitter/Xがテレビ番組関連の最も多くの議論をホストする)を直接の動画消費と組み合わせようと試みたが、成功には至らなかった。理由は定かではないが、Twitterユーザーはこの2つの体験を別々に保つことを好むようで、Twitterは高額なスポーツ中継の権利契約を更新する時期になると、規模を縮小する選択をし、最終的にはこれも消滅していった。
Xのライブコメントと大画面テレビ視聴を組み合わせるというコンセプトは、より充実した視聴体験を提供する可能性がある。X が何らかの方法でこの2つの要素のバランスをうまく取ることができれば、チャンスはまだ残っているだろう。
しかし、うまくいかなければ、Xは代わりに人気番組を自社のプラットフォームに用意する必要があるだろう。Xの収益が減少している中でそれを実現するため、クリエイター収益分配契約によって他のプラットフォームからスターを引き抜く以外にどのような手段があるのかはよく分からないが。
それでも、Xは再び動画に重点を置いたアプリを目指しており、新たなCTVプラットフォームはこの目標に結びついている。現段階で大きな変革をもたらすとは思えないが、より多くの独占コンテンツと改善されたCTV体験が、将来的に動画視聴の成長の基盤となる可能性はある。
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