Xが2024年第2四半期の利用統計を公開 広告主へ必死の成長アピールの一方で残る不可解なポイントSocial Media Today

Xが公表した新たな統計によると、少なくとも月次ベースではXの利用者数は増加しているようだ。しかし、このデータには、どうにも腑に落ちない点がある。

» 2024年07月11日 08時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 Xは、2024年後半に向けて広告主の関心を喚起するため、新たな利用者統計を発表した。その中でXは、さまざまな報道と異なり、少なくとも月次ベースでのXの利用者数の増加を主張している。

 Xの最新データによると、以下の状況が示されている。

  • 毎月5億7000万人がXにログインしており、これは前年比6%増となる
  • Xの1日当たりの累積利用時間は3619億秒
  • 1日当たりのアプリでの動画視聴は45%増の82億回

 繰り返すが、Xの利用が停滞しているとする各種報道にもかかわらず、Xへの関心は高まっているようだ。少なくともある面では、ということだが……。

Xが好んで使う謎の指標を読み解く

  Xが報告していないのはデイリーアクティブユーザーだ。最後にチェックしたときは2億5000万人で、2022年11月以降、この水準にとどまったままだ。

 おそらくデイリーアクティブユーザー数は伸びていないと思われるが、月間ユーザー数は3月に報告した5億5000万人から5億7000万人に増加している。これは2022年10月から数えると7000万人増加したことを意味する。これは日々の利用が増えていないにしては、大幅な増加である。ただし、イーロン・マスク氏が2023年5月に主張した6億人には達していない。

 しかし、ここで腑に落ちないのは「ユーザー秒数」という統計である。そしてこれはまた、Xが以前に報告した数字とも一致しない。累計3619億秒は1日当たり60億3000万分に相当し、Xが3月に報告した1日当たりのアクティブユーザー時間80億分を大幅に下回っている。

 また、1ユーザー当たりのアプリ利用時間は1日24分で、Xがわずか3カ月前に発表した1日30分よりも少ない。

 このような矛盾が、Xのデータを真面目に受け取れない理由の一つだ。内訳が一致しないにもかかわらず、より良いイメージを提示するために要素を混同したり、矛盾させたり、あるいは省略したりしているように見えるからだ。

 もしこの最新の数字が正しいとするならば、Xは月間アクティブユーザーが増加しているにもかかわらず、前四半期中にエンゲージメントを大幅に低下させたことになる。

 Xをチェックする人は増えたがXに固執する人は減ったということなのだろうか。だとすると、それは広告主にとって本当に良いことなのだろうか。

 ここに記載されている動画再生回数というのも疑問視される。

 なぜか。それは2020年、Twitter(当時)が1日当たり20億回の動画視聴があったと報告しているからだ。これは当時、前年比62%の動画消費増を意味していた。たった3年で80億以上に到達するためには、実質的にその2倍、さらに毎年同じ量を追加する必要があったが、これは非現実的だと思われる。Twitterはまた、2022年に1日当たり35億件の動画視聴があったとも報告している。ということは、現在の数字はわずか2年前と45億回もの差がある。

 デイリーアクティブユーザーは変わらないまま月間アクティブユーザーが7000万人増と、アプリの利用が減っているのかいないのか分からない中で、なぜか動画再生回数だけは2倍以上になっているというのか。

 もう一つ考えられるのは、Xが投稿インプレッションと動画視聴回数を合算しており、それがこのデータポイントを歪めている可能性だ。 Xは平均視聴時間や他のデータポイントを共有していないため、詳細は分からない。いずれにしてもこの数字は腑に落ちない。

 また、Xの報告内容に基づいて評価するのが難しいもう一つの理由は、オーナーのマスク氏が以下のようなことを繰り返し主張しているからだ。

 Xは2016年からAppStoreの「ニュース」アプリのカテゴリーでナンバーワンの座を維持している。旧Twitterの経営陣がMetaのアプリとの競争に苦しみ、ネガティブな比較(および株主からの圧力)を回避するためにカテゴリー区分を「ソーシャルメディア」から「ニュース」に変更したためである。

 Xはニュースアプリではない。実際、ユーザー生成コンテンツに依存しているXはGoogle Playストアではそのように掲載することはできない。しかし、マスク氏は「主流またはレガシーなニュース出版社がXを嫌っているのは、Xが同じカテゴリーで競合するためだ」いう主張を繰り返している。

 そうではないし、たとえそうだったとしても、Xはすでに10年近くこのセグメントで1位を維持しているのだから、今さら目くじら立てるようなことではない。

 残念なことに、このような誤解を招く欺瞞的な主張がXの共有するデータを汚し、その数字にさらなる疑問を投げかけることになる。

 結局のところXはうまくいっているのだろうか。分からないが、これらの新しいデータポイントが誰かを安心させることにはならないだろう。

© Industry Dive. All rights reserved.

関連メディア

インフォメーション