広告主のX離れが続く中、イーロン・マスク氏は新たな収入源を確立することができるのだろうか。
X(旧Twitter)は広告主を取り戻し、主要な収入源を少なくともイーロン・マスク氏の就任前の水準に戻すことができるのだろうか。
Xの広告収入は、マスク氏の就任前の水準から少なくとも50%減少していると言われている。大幅な回復や他の収入源(サブスクリプション、データ販売)の大幅な増加がなければ、継続的な懸念を抱えている同社が存続し続けることは難しいだろう。
この面でXは最近さらに取り組みを強化しており、Xの広告担当者は多くのブランドと直接接触している。一方、Xはアドテクノロジーの進化、インフルエンサーの配置の改善、AIなどを含む今後の機会について、主要な広告パートナーに売り込みをかけている。
Digiday(外部リンク/英語)によると、Xは選ばれたブランドに対し、AIを活用した検索、P2P(ピアツーピア)決済、プレミアムコンテンツ、広告パフォーマンスの強化などに言及した新しい提案資料を提示しているという。
しかし、現段階でその多くはかなり漠然としている。
まず、AIを活用した検索について。Xは既にAIチャットbot「Grok」をディスカバリー要素に統合し、「話題を検索」タブ内でXのトレンドのサマリーを提供することに取り組んでいる。
次の段階では、より関連性の高い検索結果が見つかるように、AIツールがユーザーの検索機能を直接支援することになるだろう。
しかし、他のAIシステムと同様にGrokにも幾つかの問題が発生している。これまでのところ、Grokの要約はユーモアと事実の区別がつかないことがあり、実際には起こらなかった出来事を勝手に創作したり、話に尾ひれを付けてしまったりしている。
Xがこの技術を活用してブランドパートナーの利益となるように具体的にどう検索結果を改善するかは定かではないが、これはXが現在チャンスと見て売り込んでいる分野の一つだ。
マスク氏の「全部乗せアプリ」構想にとっては決済機能も重要な要素でもあるが、Xがそれを促進するのはまだ先のことになりそうだ。
Xは最近、米国内25州目となるテネシー州で貸金業免許の認可を取得した。これは大きな前進だが、前年半ばから貸金業免許の取得を目指しているのにまだ道半ばとも言える。各州で完全な認可が下りるまでにどれだけの時間がかかるか、明確な見通しは立っていない。
貸金業免許の取得は最初のステップに過ぎない。Xがインストリームでのダイレクトショッピングを促進するためには、決済代行業者のライセンスも必要になる。そして、これは米国内だけの話である。
従って、徐々に進展しているとはいえ、Xがユーザーからの直接送金を提供するまでには、少なくともまだ1年はかかりそうだ。
Xは以前、2024年末までにプラットフォーム内で完全な決済とバンキングサービスを可能にする計画だと主張していたが、その実現可能性は低いように思える。
一方、プレミアムコンテンツに関するXの売り込みは、2024年初めに米人気YouTuberのMrBeast氏とテストした新しいプレースメントサービスに関連したものだ。
広告主に広告掲載に関するより多くの選択肢を提供するため、XはAmplifyスポンサーシップの提供を拡大している。これにより、ブランドは選ばれたクリエイターのコンテンツのスポンサーになることが可能になる。Xはまだこの詳細について最終調整中であり、より多くの収益化の可能性を提供するために選ばれたクリエイターと協力している。しかし、最終的にブランドは、自社ブランドを強化するために、特定のクリエイターからの特定のコンテンツを選択するためのより多くの選択肢を得ることになる。
Xはまた、広告主が成果を最大化するのに役立つ改善されたAIオーディエンスマッチングとプレースメントツールを宣伝している(外部リンク/英語)。例えば、AIを利用した広告出稿の最近のテストでは、広告主はクリック率が平均10%、コンバージョンが16%増加したとしている。
これはXにとってもう一つの注目要素だ。しかし、広告在庫が大幅に減少していることを考えると、これらの結果がさらに大きな規模で維持されるかどうかは分からない。
このような宣伝によって、Xでのプロモーションに興味を持つ広告主は増えるのだろうか。
全体的に見て、Xの最大の障害はやはりマスク氏自身であり、彼の度重なる政治的発言と、彼が敵と認識した相手への攻撃であるように思える。マスク氏がこのような発言を共有する度に、何千万というユーザーにその主張は拡散される。多くの広告主はブランドセーフティーへの懸念からXを遠ざけるようになっており、潜在的な広告パートナーの間では、このことがより大きな懸念となっている可能性が高い。
また、Xが依然として有害なコンテンツと共に広告を掲載していることを示唆する報道もある(外部リンク/英語)。こうした懸念は、同社の取り組みにおいて大きな足かせであり続けるだろう。
Xが売り込む新しいコンセプトの数々は大して人気が出そうもない。だが、Xが広告パートナーを取り戻す手助けにはなるかもしれない。
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