「TikTok禁止法案」に米大統領が署名 気になるこれからにまつわる5つの疑問Social Media Today

米連邦上院が、安全保障上の理由からTikTokの米国事業の売却を要求する法案を可決し、バイデン大統領はこれに署名した。9カ月以内に売却できなければ米政府は米国内での配信を禁止できる。気になるこれからについて、5つの疑問に答える。

» 2024年04月26日 12時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
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 TikTokの売却に関して次に何が起こるのだろうか。

 2024年4月24日(米国時間)、米国のジョー・バイデン大統領は上院で可決されたTikTokの売却法案に署名した。これによりTikTokは270日以内に米国を拠点とする所有者に売却されるか、米国内で禁止されることになった。TikTokのCEOであるショウ・ジ・チュウ氏はこれをアプリに対する憲法違反の攻撃として非難し、TikTokは法案に対して法廷で争うことを宣言した。

 しかし、果たしてそうなのだろうか。また、TikTokが中国の所有権を維持するための法廷闘争に勝つ可能性はどの程度あるのだろうか。

 ここでは、TikTok禁止に関する疑問をまとめた。

TikTokは法的手段で「売却 or 禁止」法案を撃破できるか?

 米国大統領が署名したものであるにもかかわらず、チュウ氏はこの法案が根本的に違憲であることを主張することによって、TikTokは法廷で法案の施行を阻止できるとしている。

 TikTokの声明(外部リンク/英語)は以下の通りだ。

事実と法律は明らかに私たちの側にあり、最終的には勝利する。実際、私たちは米国のデータを安全に保ち、プラットフォームを外部の影響や操作から守るために何十億ドルも投資してきた。

 シリコンバレー発のニュースサイト「Platformer」(外部リンク/英語)は、TikTokの法的選択肢から考えられる結果を分かりやすくまとめている。ここで概説されているように、政府は国家安全保障上の理由で法案を擁護しようとする可能性が高く、これにより、政府はTikTokが強調する可能性のある技術的な点を超える、広範な権限を持つことになるだろう。

 データの悪用や操作に関する証拠は法廷を納得させるのに十分ではないかもしれないが、国家安全保障の旗印の下、法案が審査の基準を満たす可能性は高いと思われる。

 TikTokが法廷で異議を唱え、勝訴する可能性はある。しかし、それは結局のところ現状を維持するための道筋とはならないだろう。

TikTokが米国で閉鎖されるまでにどのくらいの時間がかかる?

 法案によれば、TikTokは今後270日以内に売却しなければならないが、一定の条件下でさらに3カ月の猶予を申請することも可能だ(例:買い手との交渉中であり、取引を最終決定するためにより多くの時間が必要な場合)。

 TikTokが米国企業になるか、消滅するか、決まるまで最長で1年はある。TikTokが明日にも消えてなくなってしまうということはないし、関係者が代替案を見つける時間はまだ十分にある。

 ここでの最大の問題は、中国政府が米国でのTikTok強制販売に反対の意思を表明したことだ。つまり、TikTokが気に入る潜在的なパートナーを見つけたとしても、それを実行できない可能性がある。

TikTokを買収する可能性のある企業はどこ?

 TikTokが売りに出された場合、Metaが買収を検討するだろうと誰かが示唆しているのを見たが、それはないだろう。というのも、FTCは、デジタル広告市場で不当な優位性を与えるという理由で、MetaにWhatsAppとInstagramの売却を強制しようとしているところなのだ。MetaがTikTokを買収したくても、許可される可能性はないだろう。

 2020年にドナルド・トランプ前大統領がTikTokを米国所有にしようとしたことが発端となった前回の競争には、最有力候補としてOracle、Microsoft、Walmart、Trillerの名が挙がった。

 OracleはおそらくまだTikTok買収に興味を持っているだろう。同社はTikTokの「プロジェクトテキサス」に深く関わっている。これは米国のユーザーデータが中国に送られるという懸念に対処するために設計されたものだ。MicrosoftはOpenAIへの大規模な投資とより広範なAIプロジェクトへのシフトの真っ最中であることを考えると、おそらく競争から脱落している。Walmartは部分的な入札者にすぎず、すくなくとも単独で入札するつもりはないだろう。また、Trillerが入札することはほぼあり得ないと思われる。

 2023年3月にはスティーブン・ムニューシン元財務長官がTikTokの入札を行うための投資家グループを編成しているとの報道が広まった。また、元ActivisionのCEOであるボビー・コティック氏もTikTok買収に興味を示している。

 しかし、ここで重要なのはTikTokのアルゴリズムコードを買収条項に含めることだ。現在のオーナーであるByteDanceは、このコードを売却に含めることに消極的になる可能性が高い。実際、中国のサイバーセキュリティ規則には、そのような売却を制限する規定が含まれてからだ。

 アルゴリズムはTikTokにとってまさに「秘伝のタレ」のようなものであり、それが取引の条件に含まれない場合、提示価格は大幅に下がり、潜在的な買い手の数も減るだろう。

他の国々もアプリを禁止する可能性があるか?

 他の国々も米国の先例に倣って同様の規制実施する可能性はある。これはTikTokにとって大きな懸念だ。

 理論的には、TikTokが米国の企業に売却される場合、ほとんどの西洋諸国は、彼らのユーザーデータが現在の他のすべてのソーシャルアプリと同様に米国に保存されることを許容するように見える。しかし、EUはEUで、欧州のユーザーデータの域外移転を制限している。

 ここでの最も近い先例は、過去数年間にわたって西洋諸国で広がってきた政府のデバイスでのTikTok使用禁止だ。一つの国が制限を実施し始めると、他の国も同様に行動する。これは彼らが全て同じサイバーセキュリティアドバイスに基づいて行動しているためだ。TikTokが自らと祖国である中国の間に明確な区別を設けない限り、他の国々もTikTokに同様の制限を実施しようとする可能性がある。

 基本的には連鎖反応のようなもので、TikTokがさらに多くの地域で禁止されることにつながるかもしれない。

TikTokへの注力を減らすべきか?

 これは本当に難しい質問だ。というのも、TikTokは禁止される可能性に直面している一方で、利益がかかっているため、何らかの形で米国でアプリを運営し続けるための合意が成立すると考えるからだ。

 多様なデジタル戦略を持つことは常に重要だし、ここでの議論は、「全ての卵を一つのバスケットに入れない」ことの重要性をあらためて強調している。現段階ではTikTokから離れるべきだとまでは言わないが、おそらく他のプラットフォームを同時にどのように使用するかを検討する必要はあるだろう

 「Instagramリール」と「YouTubeショート」が漁夫の利を得ることになるのは明らかだ。TikTokとの類似性を考慮すると、この2つは検討すべき最良の代替手段のように思われる。自社が対象とする観客によっては「Snapchat Spotlight」も、検討する価値がある。

 しかし、いずれにせよ、代替案を検討する必要はある。


 TikTokからの撤退を求める動きはまだまだ続くだろうし、アプリをめぐる争いが続く中で、これが米中間の大きな争点になったとしても私は驚かない。

 考えてみると、驚くべきことだ。世界の二大大国の外交関係の中核にあるのが、主に軽快なダンスクリップに焦点を当てたアプリなのだから。

 ワイルドな時代だ。

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