CTV、リテールメディア、ソーシャルメディアなど、ファーストパーティーデータを活用するチャネルは、データ環境の進化とともに利益を得ている。
IAB(米インタラクティブ広告協会)の新しいレポート「State of Data 2024: How the Digital Ad Industry Is Adapting to the Privacy-by-Design Ecosystem(データの現状2024:デジタル広告業界はプライバシー・バイ・デザインのエコシステムにどのように適応しているか)」によると、調査対象となったマーケティング業界の専門家の95%が、今後もプライバシーに関する法規制やシグナルロスが続くと予想しており、プライバシーを第一に考えたアプローチの必要性がますます高まっている。
進化するプライバシーの状況は組織の変化を促しており、調査対象者の82%が、組織の構成がシグナルロスの影響を受けていると回答している。そして4分の3近くが、消費者データを収集する能力は今後も低下し続けると予想している。
もう一つの重要な発見は、広告バイヤーの90%が、プライバシー法制の強化とシグナルロスの結果、パーソナライゼーション戦術をシフトしており、広告予算はCTV、リテールメディア、ソーシャルメディアなど、ファーストパーティーデータを活用できるチャネルにますます配分されていることだ。
米国の各州がこの分野をより厳しく規制し、GoogleがサードパーティーCookieの段階的廃止を続ける中で、データを巡る状況はますます不確実性を増している。2024年はプライバシーファーストのマーケティング戦略にとってターニングポイントになる可能性がある。IABレポートの調査対象者の中で、64%がプライバシー法を可決する州の数が増加すると予想し、66%がプライバシー法がある州でパーソナライズされたメッセージを配信する能力が低下すると予想している。この新しい状況に対処すべくマーケターは今後、どこにどのように投資するかを決定しなければならない。
IABのデビッド・コーエンCEOは声明で「有意義な投資が行われていることは、業界がプライバシーを第一に考えていることの証明だ。経営幹部はこれに注目し、業界の次の成長のために適切なイニシアチブに資金を投じている」と述べた。
このレポートは、IABとBWG Strategyが2023年11月から2024年2月にかけて実施した500人以上のマーケターを対象とした調査結果に基づいている。
データ品質はレポートの主な焦点であり、調査対象者の72%がブラウザ履歴やリアルタイムシグナルにアクセスする能力が低下すると予想しており、61%がサードパーティーデータポイントの収集が困難になると予想している。
サードパーティーデータを巡る不確実性からファーストパーティーデータへの依存度が高まっている。ブランド、エージェンシー、パブリッシャーの71%がファーストパーティーデータセットを増やすと予想している。これは、わずか2年前の倍近い数字だ。企業が収集するファーストパーティーデータには、連絡先(84%)、デバイス(81%)、取引(73%)、コンテンツ消費(70%)、位置情報(69%)が含まれる。
マーケターがファーストパーティーデータにより焦点を当てるにつれて直面する課題の一つが、主要なファーストパーティーデータチャネル間の相互運用性の欠如だ。CTV、リテールメディア、ソーシャルメディアのようなチャネルの分断は、効果測定をより難しくする。
調査対象者は、プライバシー状況が変化する中で測定が犠牲になると予測している。調査対象者の半数以上(57%)は、リーチとフリークエンシーを捕捉することが難しくなると考えており、73%がキャンペーンの属性付け、パフォーマンスの追跡、ROIの測定能力が低下すると予想している。
2024年には、プライバシー法制とシグナルロスのために、調査対象者の54%がCTVへの広告支出を増やす予定だ。マーケターが注目している他のチャネルには、52%が支出増を見込んでいるインフルエンサーマーケティング、有料検索(51%)、ソーシャルメディア(50%)、およびリテールメディア(47%)が含まれる。
プライバシーの重視は、中小規模のパブリッシャーに比べて新しいデータプロセスに投資しやすい大企業に利益をもたらす可能性がある。レポートによると、大企業は79%の割合でID匿名化トレーニングに投資しているのに対し、小規模企業は64%にとどまっている。さらに、大企業の62%がプライバシー保護テクノロジーに投資しているのに対し、小規模企業では44%にとどまっている。この種のツールには年間200万ドル以上のコストがかかるため、ほとんどの小規模企業が手が出せないでいる。
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