Googleがプライバシー重視の測定ツール「Meridian」を提供 マーケターにとってのメリットは?Marketing Dive

GoogleによるサードパーティCookieの廃止が長年の戦術を覆し、MMMが注目を集めている。そして今、満を持して「Meridian」が登場する。

» 2024年03月27日 18時00分 公開
[Chris KellyMarketing Dive]
Marketing Dive

 サードパーティーCookieの死が着々と迫る今、マーケターは長年の戦術が使えなくなる2024年末までに、ターゲティングとトラッキング、および測定のための新しいソリューションを採用する必要に迫られている。GoogleはCookieレスの未来の基盤を築くために「プライバシーサンドボックス」を中心に取り組みを進めてきたが、さらに新たなツールの計画を発表した。これにより、広告の効果測定方法を探しているマーケターを支援することができるかもしれない。

MMM(マーケティングミックスモデリング)とは?

 Googleは2024年3月7日、包括的でプライバシーに配慮した測定基盤をマーケターに提供することを目的としたオープンソースのMMM(マーケティングミックスモデリング)ツールである「Meridian」の立ち上げを発表した(外部リンク/英語)。業界の専門家によると、Meridianの導入はマーケターの測定能力を向上させる大きな一歩となるが、それなりの注意点や課題も伴うという。

 分析会社ChannelMixのCEOマット・ハーティグ氏は「最初の印象は、Googleがまたしても自社製品に特化したツールを発表したというものだ。しかし、今回のリリースで本当に称賛に値するのは、Googleが従来のトラッキングやアトリビューション手法の終焉という極めて重要な変化を認識していることだ。この認識はまた、マーケターにとってウォールドガーデンの壁がますます高くなり、進化するデジタル環境に適応する上でますます重要になっていることを示す」とメールでコメントした。

MMMは異なるマーケティング要素(製品価格、広告費、販促活動、流通チャンネルなど)が売り上げにどう影響するかを評価し、各要素の組み合わせによる最も効果的なマーケティング戦略を特定する手法。短期的な収益目標を達成するために、適切なプログラムやチャネルに予算を配分するのに役立つ

MMMの長所と短所

 MMMは100年以上前から存在していたが、Googleはこの手法の「ルネサンス」を目の当たりにしている。Googleがブログ投稿で引用したKantarのデータによると、米国の広告主の60%が現在MMMを使用しており、このモデルを使用していない広告主の58%も将来的に使用を検討している。Googleはブログ記事の中で、MMMを「クロスチャネルマーケティングの全体的な影響を測定するのに役立つ統計分析」と定義している。

 現在、Meridianは限定的に利用が開始されているが、近日中には全てのマーケターとデータサイエンティストが利用できるように拡張される予定だ。Meridianはイノベーション、透明性、実用性、教育の4つを柱に構築されている。

 Meridianはインクリメンタリティーやリーチ、フリークエンシーに関する革新的な手法を取り入れることで、MMMをより正確で分析的に厳密なものにする。また、オープンソースにすることで透明性を確保し、GoogleとYouTubeに豊富なデータをインプットすることでクロスチャネル予算の最適化を可能にし、ドキュメントとさらなる教育の機会を提供する。

 「現在のMMMは完璧とは言えないが、進化を続けている。Meridianではイノベーションを通じて、またオープンソースモデルと連動してデータを共有することで、あなたのチームが将来の北極星に向かって航海する手助けをしたいと考えてる」と、Googleのデータサイエンス担当シニアディレクターであるハリケシュ・ナイール氏はブログ記事で述べている。

 Forresterのプリンシパルアナリストであるティナ・モフェット氏は、現時点で断定はできないものの、Meridianが4つの柱とマーケターが個々のビジネス目標に合わせてオープンソースのアルゴリズムを変更できる機能により、多くのマーケターにとって魅力的なものになる可能性があると述べている。

 「Meridianは、データサイエンティストや分析に精通した人材を擁し、Meridianのアルゴリズムフレームワークを使ってマーケティングミックスモデルを構築できる中堅ブランドにとっては魅力的かもしれない。彼らはマーケティングアナリティクス専業ベンダーやサービスプロバイダーに依頼するほど大きな予算を持っていないからだ。そこがMeridianのスイートスポットになると思う」と、モフェット氏は述べる。

 しかし、Googleのプライバシーサンドボックスと同様に、MeridianをサードパーティーCookieがもたらしていたような測定の完全な代替手段とは見なすべきではない。マーケティングミックスモデリングは、例えば特定のオーディエンスに特定の時間帯に配信された広告に関する戦術的なレポートにおいて、Cookieと同じレベルの粒度の情報を提供することが、そもそもできない。

 「MMMが提供できるものとできないものをもう少し明確にする必要がある。MMMができることと広告主が実際に必要としていることに関して、市場で少し混乱が見られる」とモフェット氏は言う。

 広告主は長い間サードパーティーCookieに依存してきたが、この技術は、オンライン行動のトラッキングや、細分化が進む市場におけるメディアバイイングのターゲティングにおいて、信頼性の低いメカニズムであった。サードパーティーCookieを廃止に伴いGoogleは、マーケターがMMMのような(粒度こそ粗いかもしれないが)全体としてより効果的な戦術を利用するよう促している。

 「投資判断を下すのに、必ずしもそのようなデータが必要なわけではない。Googleはこの点に気づき、YouTubeでの広告配信やGoogle内でのメディアバイイングを行う広告主がエコシステム内でより賢明な投資判断を下せるように、このフレームワークを作成したのだと思う」とモフェット氏は説明し、MMMは予算配分のといった大きな意思決定に役立つと指摘した。

マーケターが取るべき措置

 モフェット氏によると、マーケターがMeridianを活用するに当たっては、押さえておくべきポイントが幾つかある。最近のForrester Waveレポートによると、企業がMMMを含むマーケティング分析モデルを使用する際に直面する主な課題は、透明性とビジネスリーダーの理解だ。Meridianはオープンソースであるが、それは完全な透明性を保証するものではない。

 「コードを見ることができるデータサイエンティストや機械学習エンジニアはにとっては透明性がある」とモフェット氏は説明する。だが、Forresterの調査によると、バイスプレジデントやCMOはマーケティング分析モデルのツールやサービスプロバイダーを購入することは多くても、基盤となるモデルやアルゴリズムの仕組みを必ずしも理解していない。

 MMMのようなモデルの真の透明性を確保するためには、データサイエンティストのようにモデルを使用する人だけでなく、意思決定を行う主要なステークホルダーやマーケティング担当幹部も巻き込んで計画を立てなければならない。また、これらのグループ間では求められる透明性のレベルが異なることに注意が必要だとモフェット氏は指摘する。

 この透明性は、各サービスプロバイダーの測定に関する能力だけでなく、ブランドのニーズに合わせた戦術的戦略を開発する能力についての教育と密接に関係している。

 「包括的な戦略を構築することを広告主は真剣に考える必要がある。戦術的には、マーケティングミックスを単なる選択肢として見るだけでなく、さまざまな手法がどのような問題を解消できるのか、そしてその目的は何なのかを理解することが重要だ」とモフェット氏は言う。

 例えば、MMMは適切なプログラムとチャネルに予算を配分し、短期的な収益目標を達成するのに役立つ。しかし、マーケティング担当幹部は、インクリメンタリティを測定するための他のモデルやツール、あるいは洗練されたアトリビューションモデルを支えるアイデンティティベースのアプローチも必要とするだろう。Meridianが役立つのは特定の測定ケースに限られるかもしれない。それでも、Cookieの終焉に備えるマーケターにとっては大きな前進である。

 「Meridianは、過去15年間におけるマーケティングの最も重要な変化の一つを象徴している。このようなツールは、この新しい時代に効果的なナビゲーションのためにAIのような先進技術を活用することで、マーケターが分析分野を若返らせる新たな機会を提供する。マーケティング測定の未来が今まさに始まろうとしている」とハーティグ氏は言う。

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