GoogleによるサードパーティーCookie廃止を目前に控え、広告業界はターゲティングや計測の課題を解決する方法を模索している。マーケターが現実的に取り得る手段とはどのようなものか。
Cookieの廃止は、マーケティングにおけるファーストパーティーデータや、ゼロパーティーデータ、セカンドパーティーデータなどをプライバシーセーフな手段で取得する上で大きな試金石となるだろう。データ活用の継続は、ブランドやエージェンシー、パブリッシャーがより多くのデータ共同体を設立することを促す可能性がある。それを利用することで各事業者は生成AIの取り組みを推進することができるようになるかもしれない。
※編注:本稿は「生成AIでポストCookieの課題を乗り越えるために必要な3つのこと」)の続きです。
ベンチャーキャピタルThe 98共同設立者のリンダ・クラリツィオ氏は「私は長い間、さまざまなWebプロパティーからファーストパーティーデータを取得し、それを組み合わせてGoogleが行っているようなことに匹敵するデータ共同体が台頭すると期待してきた。おそらく2024年には生成AIの能力が強化されるため、そうした動きがさらに活発化するだろう。それはまさに強化されたIDグラフのようなものだ」と話す。
2024年の業界は、マーケティングにおけるファーストパーティーデータ活用の課題を解決することに加えて、The Trade Deskの「Unified ID 2.0」やLiveRampの「RampID」など、市場シェアを争うさまざまなユースケースを提供する代替IDソリューションのまだ断片的な状況とも戦わなければならない。
「バイヤーからしてみれば、単に状況が混乱しているだけだ。これによって一部は麻痺状態に陥っている。何を使えばいいのか? 勝者総取りになるのか? と」と話すのは、代替IDソリューションの一つである「Panorama ID」を提供するLotameでID部門責任者を務めるイーライ・ヒース氏だ。
マーケターは1つのIDが全てを支配することを期待してはならない。その代わりに、行動ベースのアドレサビリティーとコンテクスト戦略をさまざまな方法で調整する必要があるだろうとヒース氏は言う。
「Cookie以外の識別子の領域だけでなく、プログラマティックで展開する一般的な戦略や戦術においても、バスケットアプローチ(複数の有望な手段の組み合わせ)になるだろう。本当にいろいろな手段を使うことになると思う」(ヒース氏)
各種アドテクやエージェンシーベースのソリューションもさることながら、マーケターは2024年にGoogleという厄介な存在に向き合わなければならない。アドテク企業33Acrossのプレジデントであるポール・ベル氏によれば、(サードパーティーCookie廃止が)Googleのスケジュール通り2024年後半になるのであれば、それまでにやるべきことはまだ多く残っており、検証、測定、アトリビューションに関しては、答えよりも疑問の方がまだ多いという。
「バイサイド(広告主側)が、マーケターや信頼できるサードパーティー(つまりGoogleだけでなく)によって測定可能な結果を目にすれば、Googleと市場は自信を持って(2024年1月に試験的にサードパーティーCookie廃止を実施した範囲である)1%を超えることができる」とベル氏はメールでコメントした。「この移行をスムーズに行うために、Googleはパートナーに対して、マーケティング費用を信頼できるコンバージョン指標に結びつけられるようにする必要がある。広告費の額と、安心させる必要のあるパートナーの数からすると、このスケジュールは強引に感じられる」(ベル氏)
Cookieのない未来に対する懸念を和らげるために、Googleはプライバシーサンドボックスの提案を展開し続けている。その過程を通じて、多くのグループが、新しいサービスの有効性に関するGoogleの主張に反発してきた。IAB Tech Labには、初期のテストでまだ「現実的な課題」が残っていると指摘した。
こうしたプライバシーサンドボックスの充足性と複雑性に関するさまざまな異論に対し、Googleは同社の計画がスケジュール通りに進んでいると公式ブログ投稿(外部リンク)で反論した。
「2023年9月からChromeで提供開始した現在のプライバシー サンドボックスAPI は、プライバシー保護をより優先する未来にエコシステムを移行できると私たちは考えています。そして今後数年間、プライバシーと実用性の両面で、ユーザーのプライバシーを保護する技術のさらなる発展に取り組んでいくことを約束します」と、プライバシーサンドボックスの製品管理担当シニアディレクターであるビクター・ウォン氏は述べている。
それでも、広告主はプライバシーサンドボックスに全振りすべきではいと、ID5のCEO兼共同設立者であるマチュー・ロシュ氏はメールでコメントしている。依然として市場を支配しているGoogleに「広告界の救世主」となることを期待すべきではないというのだ。
「共通ID、IDグラフ、データクリーンルームなど、SafariやFirefoxのようなCookieのないブラウザで有効性が証明されている多くの代替手段があることを、全体像として覚えておくことが重要だ。広告主がオーディエンスと効果的に関わり、結果を長期的に測定できるようにするための準備期間はあと数カ月しかない」(ロシュ氏)
最も準備の整ったマーケターは、Cookie廃止後の計画を実行に移すのにこれ以上待つことはないだろう。さらに、2024年後半の期限はまだ曖昧だが、遅かれ早かれCookieは廃止される。ヒース氏は、重要な第4四半期の広告購入期間を混乱させないために、第3四半期のある時点でCookie無効化が拡大する可能性があると予測している。
アドネットワークのPrimeAudienceが最近実施した調査によると、米国のマーケターの88%がCookieの廃止について自信を持っており、半数以上が既にCookieのない未来をテストしていることが明らかになった。しかし、68%が2024年にプライバシーサンドボックス提案を使用する予定であるとしながら、そのほぼ3分の1はGoogleのProtected Audience API(旧FLEDGE)の使い方を知らないと回答している。また、半数以上(53%)のマーケターがGoogle以外のソリューションの一部としてAIに注目している。
PrimeAudienceの製品担当バイスプレジデントであるマテウス・ルミンスキー氏は「米国のマーケターがCookieのない世界に対する準備に自信を感じているのは有望なことだが、効果的なソリューションを引き続き導入したいという要望もある。新しいアドテクノロジーと生成AI、ファーストパーティーデータの最適な活用を組み合わせることが、広告エコシステムの繁栄につながると信じている」とコメントしている。
PrimeAudienceの調査と同様に、一部のオブザーバーは、広告業界の大部分がCookieの終焉が広告にとって何を意味するかという現実にようやく目覚め始めたと見ているが、その変化は時計の針が進むにつれてさらに拡大するだろう。
分析会社ChannelMix CEOのマット・ハーティグ氏は「行動の波が起こり始めており、現実が業界を直撃し始めると思う。これはおそらく、過去15年間において、マーケティングの影響力を理解する点での最も記念碑的なシフトの一つだ。そしてそれは、AIをマーケティング分析分野に再び注入することに対する大きな期待にもなっている」と語る。
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