生成AIでポストCookieの課題を乗り越えるために必要な3つのことMarketing Dive

Cookieの死が目前に迫って、マーケターはデータをより適切に管理する必要が生じている。だが、このタスクはAIで処理できる可能性がある。

» 2024年02月12日 07時00分 公開
[Chris KellyMarketing Dive]
Marketing Dive

 Googleはついに動き出した。2024年1月4日、同社はChromeの1%、つまり約3000万人のユーザーに対してサードパーティーCookieを無効にした。この動きは、今年の後半に全ユーザーのトラッキングテクノロジーを段階的に廃止するという検索大手の計画の最初の具体的なステップになる。これは長年使われてきたデジタル広告ツールの廃止を意味する。

サードパーティーCookie廃止で欠けてしまったパズルの一片を埋める

 Googleは4年近く前にサードパーティーCookieを最終的に廃止すると発表した。広告業界はこれをきっかけに、同社のプライバシーサンドボックスの提案を使用するか他社によって作られたものを使用するかにかかわらず、代替のターゲティングとトラッキングの方法を構築、テスト、採用するための競争を始めることになった。

 代替ID、IDグラフ、データクリーンルームなど、ポストCookieのソリューションが近年次々と登場しているが、問題を解決するために欠けているのは、生成AI(人工知能)の応用かもしれない。これはここ1年ほど広告、テクノロジー、一般文化の世界を虜にしてきた話題のテクノロジーだ。

 「マーケターにとっては、サードパーティーCookie廃止の溝を埋めるためにAIを活用し、ゼロパーティーやファーストパーティーの消費者データを活用した戦略を強化することが極めて重要だ」と、Movable Inkの製品マーケティング担当バイスプレジデントを務めるアンジャリ・ヤクンディ氏はメールでコメントした。

 「AIは、閲覧履歴、購買パターン、エンゲージメントなどの消費者のデジタル行動を分析し、より深いオーディエンス理解を提供する。同時に、オーダーメイドの体験を生み出すことができる。ブランドはAIと機械学習を、消費者が次のステップに進む可能性が高いことを洞察する予測モデル内に拡張でき、消費者がその方向に行くことを知る前に、現地点にいる消費者に合うアウトプットをプロアクティブかつ戦略的に開発することができる」と同氏は続ける。

AIの力を機能させるために必要な3つのこと

 これまで、広告における生成AI活用というと、テキストや画像アセットを迅速に作成して長年の目標であるパーソナライゼーションアットスケール(大勢の顧客一人一人に最適なパーソナライゼーションを実現すること)を達成するための機能ばかりが注目されてきた。しかし、驚異的な速度と正確さでデータをふるい分けて分析するAIの能力は、Cookieの廃止によって生じるシグナルロスを補うのにも役立つ可能性がある。

 メディア業界のベテランで、アーリーステージのベンチャーキャピタルのThe 98共同設立者であるリンダ・クラリツィオ氏は「2024年はさらなるインテントシグナルが真の意味で台頭し、規模を拡大させる年になるだろう。長い間私たちはWebトラッキングインテントとソーシャルインテントを利用してきた。これからは、トランザクションインテントとコンテクスチュアルインテントが増えてくるだろう」と話す。

 専門家によれば、生成AIが機能するためには独自のファーストパーティーデータとそのデータを処理するインフラ、新しいモデルを訓練するためのデータを開発するデータサイエンティストの3つが必要だという。広告に適用されるこれらの要件は、GoogleやAmazonのようなテクノロジー企業を動かすことになる。

 クラリツィオ氏は「私たちはまさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようなことをしている」と述べ、今日のデジタルウォールドガーデンの台頭はかつてテレビ広告がたどった道だと説明した。

 「現在私たちは逆の方向に戻りつつある。Cookieが廃止され、データシグナルをより広範に利用できなくなったことがその一因だ。実際、使えるのはファーストパーティーデータに限定されつつある。これはプライバシーの観点からは理にかなっているが、一部の大手企業だけがますます強くなってしまうことになる」(クラリツィオ氏)

 しかしながら、生成AIを活用して高速かつ効果的な方法で検索ランキングに影響を及ぼしたり、ユーザーにより強固でパーソナルな体験を提供しようとする企業も現れ始めている。この他のユースケースも開発中だ。

 「エージェンシーとタレントがコスト削減やプロセスのスピードアップのための実用的なアプリケーションを見つければ、AIはより普及していくだろう」と、独立系エージェンシーNovusのCMO(最高マーケティング責任者)兼プレジデントであるロブ・デイビス氏はメールでコメントした。「これは、メディアの最適化やデータ編集を超えて拡張されるだろう。例えば、生成AIをフォーカスグループのシミュレーションに適用すれば、費用対効果の高いインサイト生成が可能になる」(デイビス氏)

(「Googleが広告業界の救世主になると勝手に期待してはいけない理由」に続く)

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