Metaのマーク・ザッカーバーグ氏は最近、生成AIに前のめりになっているように見える。メタバース計画はMetaの中で優先が下がってしまったのか。
米ラスベガスで最近開催されたテクノロジー見本市「CES 2024」で注目されたトレンドの中で、何人かの参加者は、過去2回のイベントで話題となった暗号通貨やメタバースに関する言及がほとんどなかったことを指摘した。
メタバースのビジョンに社運をかけてきたMetaも、少なくとも公の場では最近プロジェクトから離れているようた。同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏も、最近はメタバースより生成AIに夢中であるように見える。
しかし、本当のところメタバース計画はMetaの中で優先が下がってしまったのだろうか。
Metaのグローバルビジネス責任者であるニコラ・メンデルゾーン氏によれば、メタバースは現在も同社にとって非常に重要なテーマだが、長期的な賭けであることに変わりはなく、目先のトレンドが一変するようなものではないという。
メンデルゾーン氏はダボスで開催された世界経済フォーラムでこう語った。
数年前、(メタバースに関して)多くの期待が寄せられたが、私たちは常に慎重に行動し、十分に実現されたビジョンに至るには十年ほどかかるだろうと人々に伝えてきた。私たちはまだその旅の途中にいると考えており、途中で起こる進歩や重要な出来事にわくわくしている。
Metaは、10年後にはメタバースが実現するという長期的な目標を繰り返し掲げている。しかし今のところ人々は論理的かつ当然のこととして、この広大なビジョンに懐疑的になっている。しかし、Mataによれば、それでもプロジェクトに対する社内の集中力は弱まっていないという。
メタバースの構成要素は、より広範なエンゲージメントの傾向と、それが次の段階にどのように変換されるかに沿っている。現在、15歳以下の子どもたちは「フォートナイト」「Roblox」「Minecraft」のようなゲームの世界で日常的な交流を行うことが多くなっているが、彼らこそMetaがメタバース開発の次のステージで念頭に置いているオーディエンスだ。
アバターを主な接続手段として使い、バーチャル環境で友人と交流する子どもたちが増えれば増えるほど、それが標準となり、最終的には同じ接続プロセスが、仕事上のエンゲージメントを含む、より多くの種類のインタラクションに適用されるようになるだろう。
私たちはすでにソーシャルメディアそれ自体において、トレンドが子どもたちから始まり、大人たちへと拡大し、やがて何十億もの人々の日常的な交流の中心となっていくのをで目の当たりにしてきた。このトレンドは職場にも波及し、今ではソーシャルメディアのようなツールの多くが仕事上のつながりを促進するようになっている。
そう考えると、VRの世界に対するMetaの長期的なビジョンが見えてくる。そして、それはまだ到来していないかもしれないが、Metaが引き続きメタバースに注目し、プロジェクトに取り組み続けていることは理にかなっている。
ただ、以前ほどそれを前面に出していなくなっているというだけのことだ。
実際、最近の報道(外部リンク/英語)によればザッカーバーグ氏は、シェリル・サンドバーグ氏の結婚式で、以前に彼が投稿して嘲笑を浴びた自分のアバター(外部リンク/英語)の話を持ち出されたことに、ひどく腹を立てていたという。
このことは、プロジェクトに関する同社の対外コミュニケーションにおける転換点となった。しかし、それでもMetaはメタバースのビジョンに大金を注ぎ込み続け、過去4年間で470億ドル以上をReality Labsに投資している。
まだ完全なビジョンは見えていないものの、ヒントは得ている。
2023年9月、Metaはユーザーがモバイルデバイス経由でVRゲームにリンクできるようにする新しいオプションを開始した、これにより、実質的にVRヘッドセットなしでメタバース(あるいはそれに類するもの)へのアクセスが可能になった。
これにより、VRユーザーと非VRユーザーが交流できるデジタルエンゲージメントスペースへの新たな入り口を提供し、次のステージへの道筋を付けることができる。
2023年10月に発売された最新版「Meta Quest 3」の販売台数も順調に伸びているが、ブラックフライデー前後の値下げが大きく影響したこともあって、廉価版の「クエスト2」はさらに売れている。
全ての重要な指標を見ると、メタバースのビジョンが徐々にまとまりつつあることが分かる。ただし、「徐々に」というところが重要で、実際に実現する前にまたぞろ「メタバースは死んだ」と言われることも多くなるだろう。
しかし、いつかそのときは来る。そして、生成AIの活用でクリエイションの世界に革命が起きようとしている。多くのユーザーに、ただ話すだけで自分自身のインタラクティブな夢の世界を創造できる能力を提供することも可能になるだろう。さまざまな要素が着実に整いつつあるのだ。
私たちがMetaの取り組みを通じて見てきたものは、これまでのところ、いささか不格好ではある。だが、私はメタバースを否定するつもりは全くない。むしろ、次に何が来るかを見据えて、ARやVRに関する教育やAIに投資することをお薦めしたい。
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