プログラマティック広告の闇を象徴する「MFA」。広告表示だけを目的とした低品質なWebコンテンツを垂れ流すパブリッシャーへのムダな出費が広告主の頭痛の種になっている。
MFAとはMade For Advertisingの略語。「広告を掲載し、収益を得ることだけを目的とする」を意味する。MFAサイトはセンセーショナルな見出しや煽情的なコンテンツを用いて訪問者を釣り、ページビューを稼ぐ。結果、MFAサイトの所有者には広告収入がもたらされる。MFAコンテンツは広告収益を得ることだけを目当てにパフォーマンスを最大化するように最適化されているが、品質面や広告主の目的について配慮の欠ける低品質なものであることが多い。
広告主視点で直接的に最も深刻な問題は、広告投資がムダになること。全米広告主協会(ANA)が2023年6月に発表した調査レポートによれば、米国の総広告費の15%はMFAパブリッシャーの広告在庫で占められていたとされる(関連記事:「広告の15%はムダ打ち? プログラマティック広告とクリックベイト(“釣り”サイト)を巡る不都合な真実」)。ビューアビリティー(視認性)など、収益を得るための条件は満たしている(つまりブランドセーフと見なされてしまう)分、広告主の意図に反してコストがかかる懸念が大きい。また、低品質なコンテンツに自社の広告が併載されること、多過ぎる広告がユーザー体験を低下させることから、結果的にブランド毀損のリスクもある。
ANAと米国広告代理店協会(4A's)、世界広告主連盟(WFA)、ISBA(英国広告牛協会)の広告業界主要4団体が2023年9月26日に発表したMFAサイトの定義は以下の通りだ。
MFAサイトは通常、低品質なコンテンツを掲載し、広告収入を最大化するためにポップアップ広告や自動再生動画などの押し付けがましい広告手法を用いる。
具体的な対策としては、以下のような取り組みが考えられる。
もちろん、まともなパブリッシャーはMFAに手を出すべきではないし、広告プラットフォーム(特にSSP)もMFA在庫の販売に加担すべきでない。しかし、悪貨は良貨を駆逐する。(たとえ見せかけだけでも)高いパフォーマンスを期待するニーズがあり、一方で生成AIの普及などによってコンテンツがますます簡単に量産可能になる中では、MFAサイトは簡単にはなくなりそうにないのが現実だ。
しかし、MFAサイトがデジタル広告の健全な発展を阻害する可能性は否めない。広告ビジネスのエコシステムを守るという観点から言えば、ステークホルダーが一丸となってMFAサイトに対処する必要がある。
広告主視点ではまず、投資判断を誤らないために正しい効果測定ができるような環境を整えることが重要。MFAを判別するためのツール導入も検討すべきかもしれない。例えばDoubleVerifyは2023年9月にMFAコンテンツから広告主を保護する総合ソリューションを業界で初めて市場に投入。Integral Ad ScienceもAIを活用したMFAサイト検出・回避ソリューションをテストしており、2024年初頭に一般提供を開始する予定だ。
【更新:2023年12月1日11時】MFAサイトの検出ツールに関して一部加筆しました。
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