破綻した老舗百貨店が再起をかけた“10億ドル”デジタルキャンペーンの中身Marketing Dive

経営破綻した米百貨店チェーンJ.C. Penneyが新たに展開する「Make It Count」キャンペーンは、包括性とコミュニティー重視の姿勢を強化することを目的としている。

» 2023年09月26日 06時00分 公開
[Peter AdamsITmedia マーケティング]
Marketing Dive

 米百貨店チェーンJ.C. Penney Company(以下、J.C. Penney)は2023年8月31日、顧客体験やオペレーションといった分野を改善するために10億ドル以上を投資すると発表した。これは、経営難に陥っている同社の再建計画の一環だ。

再起をかけたキャンペーンの中身は

 この取り組みでは「Make It Count(今を大切に)」というスローガンの下で、以下の4分野を核に新たなキャンペーンを展開する。

  • ファッションを身近なものにすること
  • 魅力的なロイヤルティープログラムを提供すること
  • 地域・文化に根差したさまざまなコミュニティーを支援すること
  • 前向きな変化へのコミットメントを強化すること

 J.C. Penney最高顧客責任者(CCO)であるケイティー・ミュレン氏は、「私たちは、この業界がサイズインクルーシブ(注1)という点でも地域社会への貢献という点でも、これまで顧客に対して十分に向き合ってこなかったと感じている」と述べる。

※注1 あらゆる体形やサイズの人が服や服飾品を選べるようにするという取り組みや考え方。

 J.C. Penneyは2020年に経営破綻し、その後、商業用不動産デベロッパーのSimon Property GroupとBrookfield Asset Managementに買収された。 J.C. Penneyはパンデミック後の移行期をピボットの機会として捉え、その姿勢を反映する形で2023年、多くのブランドで再生計画を進めている。マーケティングと広告分野において使用している「JCPenney」という名のブランドもその一つだ。この業界の多くのブランドと同様にJCPenneyも消費者が慣れ親しんだもの、例えばクラシックなロゴを復活させながら、ここ数年で購買行動が変化した消費者にアピールできるよう、何か新しいものを持ち込むことでバランスを取ろうとしている。

 「当社がやっているのはブランドの再発明ではない。再活性化であり、当社について歴史的に真実であった一連の事柄に再びコミットすることだ」とミュレン氏は言う。

 ミュレン氏は同社で最高デジタル責任者(CDO)を務めた後、2023年4月にCCOに就任している。Make It Countキャンペーンは約1年かけて進めており、6カ月にわたる定性的および定量的な消費者調査を実施した。

 今回のキャンペーンでは主に勤労者世帯に対して、スタイルを犠牲にすることなく、出費を節約できるよう支援するようなメッセージを投げかけている。これは、インフレや不透明な経済と闘い続ける消費者の心に響く可能性がある。だが、それだけではなく、商品の価値を訴求するばかりの従来の百貨店の戦術を回避する狙いもあるとミュレン氏は言う。

 キャンペーンのテレビスポットでは、JCPenneyが販売するファッションの数々を紹介しながら、友人や家族の間の、時にハチャメチャでもあるリアルな瞬間を捉えたスナップショットを描いている。新しいブランドポジショニングは広告代理店のYard NYCと共同で開発し、クリエイティブは社内チームが担当した。

 「顧客が求めているのは大きな値段シールが貼られた小さな商品の画像ではなく、ロマンスだ。全ての顧客はロマンスを求めている」とミュレン氏は言う。

(「崖っぷちブランドが生まれ変わるために下した『他社のマーケティング戦略に追随しない』という決断」に続く)

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