イーロン・マスク氏がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との対談の中で、X(旧Twitter)の有料化の可能性について言及した。実現すれば広告主視点ではどんなメリットがあるのか。
かつて「Twitter Blue」として知られていたXのサブスクリプションプログラム「X Premium」は、2022年末にイーロン・マスク氏がアプリ内のbotに対抗する手段としてこの取り組みを再提案した際に期待していたような解決策にはなっていない。だが一方で、Xに新たな収入源を提供した。
これまでのところ、X Premium の利用率は非常に低く、プロフィールやその他のさまざまなアドオン機能に青いチェックマークが表示されているのは全Xユーザーの約0.3%にすぎない。
しかし、もしXが次の段階に進み、全ユーザーに対して利用料を請求するようになったらどうだろう。多くのユーザーがTwitterに利用料を支払うようになるだろうか。それとも、支払いを拒んで他のサービスに移行し、結果的にXは損をするのだろうか。
どうやらそのことについてマスク氏とXも熟考しているようで、X Premiumの廉価版が登場し、それがをXを使うための条件となる可能性が出てきた。
マスク氏は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とのインタビュー(外部リンク/英語)で、Xの進捗状況について話し合ったときに、拡張された「全部乗せアプリ」ビジョンでアプリを再考するときに、この提案に言及した。
botの大軍をどう阻止するのかという質問に対するマスク氏の言い分は以下の通りだ。
Xのシステムを利用するために少額の月払い制を導入する最も重要な理由は、それがbotの大軍に対抗する唯一の方法だからだ。botのコストは現状、1ペニーの10分の1程度にすぎない。だが、(Xの)利用に当たってほんの数ドル程度でも支払わなければならないとしたら、botの実質的なコストは非常に高くなる。しかも、新しいbotが生まれるたびに新たな支払いが必要になる。
これは、マスク氏のサブスクリプション推進に関する以前の発言とほぼ一致している。少額を課金することで、マスク氏と彼のチームが以前「支払いによる認証」と呼んでいたことが容易になる。bot軍団を作るのはコスト的に不可能になるだけでなく、各プロフィールに銀行口座を接続する必要があるという点で、追加のID要件まで必要になるという理屈だ。
しかし、マスク氏はこうも付け加えた。
私たちは実際には、より低い価格を設定するつもりだ。そして、これが膨大なbot軍団に対する唯一の防御策だと私は考えている。
マスク氏は次に、AIシステムの脅威について言及し、詐欺師がX上でフェイクプロフィールを作成する能力を著しく高めると考えている。
それ以上の詳細はまだ不明だが、おそらくXは月額3ドルか4ドル程度の安価な認証サービスを開始する予定だと思われる。そこでおそらくX Premiumパッケージの基本を提供するか、あるいは身元を確認するための認証チェックのみを提供することになるだろう。Xは、これを最近開始したID検証プロセスと統合し、サードパーティーパートナーのau10tix 経由で料金を請求する可能性もある。
そうなれば、Xはこれを必須条件とし、非課金ユーザーを締め出すことができる。これは劇的な変化となるだろう。Xはまだ広告費に大きく依存しており、そのためリーチが最大のインセンティブであることに変わりはない。しかし、これはマスク氏の壮大なビジョンに関して正しい方向への一歩となる可能性もある。全てのXプロフィールに有効な銀行口座をリンクすることで、人々はアプリ内での支払いの円滑化、そして場合によっては銀行取引のようなことさえできるようになるだろう。それは、マスク氏の計画を次のレベルへ推進するためのバックボーンとなる。
botアカウントの運用コストを引き上げると同時に決済をアプリにリンクさせるという2つの目的を果たすことができるのは理にかなっている。そして、Xの成長にも大きな影響を与えるだろう。特に、アクセスコストが接続オプションとしてのアプリの優先順位を下げる可能性が高い発展途上市場では大きな影響を及ぼす。
これは大きなリスクだ。有料化することで、Xはログインするユーザーを大幅に減らす可能性がある。Xにお金を払う価値はあるのか、Xなしでも生きていけるのではないかという疑問がすぐに湧いてくるからだ。そもそもXユーザーの大半は自分で投稿することはなく、少数のアクティブなユーザーのアップデートを読んで反応するだけであるということも注目に値する。実際、X内の全投稿の97%を作成しているのはわずか25%のユーザーだ。
現時点では、毎月1億3700万人程度のXユーザーしか、実際にアプリで何かを投稿していないことになる。それでもこの全員にお金を払ってもらうことができれば、収入減を相殺するのに十分だ。
たとえそれほど熱心でないユーザーを失って全体的な会員数に悪影響を及ぼすとしても、これらのユーザーに有料加入者になるようにアピールする。それがXの計画なのだろう。また、広告主からすると、Xを使っている人たちが月額費用を支払うだけのお金を持っていることが分かることになり、Xをよりプレミアムな広告面と見なすことさえできる。有料化のリスクは高い。だが、もしかしたら……。
マスク氏はXが完全に有料モデルに移行すると直接は述べておらず、低価格のオプションを提供することで、X Premium登録のインセンティブをさらに高めようとしていると述べているだけであることも注目に値する。もしかしたら、それが唯一の変更点かもしれないし、この点でより効果的なツールにするのに十分なほどXの購読者数を増やすことができるかもしれない。
しかし、Xは以前からアプリの有料化を検討しており、まだその可能性はありそうだ。マスク氏は、かつての鳥のアプリからXを一歩先に前進させ、あり得るものに近づけようとしているのだ。
© Industry Dive. All rights reserved.