イーロン・マスク氏は「歩くPRマシン」 Twitterをどこに導くのか?Social Media Today

イーロン・マスク氏のいまひとつ根拠不明瞭なピッチデック(説明資料)から一つだけ確かに分かることがある。それは彼が注目を集めることに長けているということだ。

» 2022年12月19日 10時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 イーロン・マスク氏は、Twitterの機能の大幅な変更に関する現時点でのロードマップも共有している。

 「エンターテインメントとしての広告」と書かれたスライドでは、より魅力的な広告体験を実現するための自動サンプリングスクリプトの例としてHBO Latin Americaの施策を紹介している(ツイートにいいね!をすると、ユーザーがテレビドラマ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」におけるどの家系に属するかを表示する)。マスク氏が、これをTwitterの広告ツールとして提供することを示唆しているのかどうかは分からない。だが、この種の施策はこれまでブランドパートナーがTwitterの協力の下で作り出してきており、汎用的な広告商品として提供するのはなかなか難しいかもしれない。なお、Twitterは2022年6月に、「ブランドいいね」という広告商品を同じような展開でリリースしている。

編注:本稿は「イーロン・マスク氏が不可解なグラフを使って示す『Twitter 2.0』のロードマップ」の続きです。

マスク氏は今後もTwitterに注目を集め続けることができるか

 次のスライドはご覧の通り、ランダムな例を挙げつつ、ただ「ビデオ」と書かれているだけだ。これが何を意味するのか正確には分からないが、マスク氏はより長いビデオクリップをツイートに添付できるようにすることを表明している。一方で同氏はクリエイター収益化プログラムについても話しており、YouTubeの新しい収益分配モデル(広告収益の45%をショート動画クリエイターに分配)よりも有益な条件を提示するということだ。

 マスク氏は、Twitterが間もなく開始する暗号化DMについても説明している。アプリウオッチャーのジェーン・マンチュン・ウォン氏は、これがオープンソースの暗号化プロトコルである「Signal Protocol」をベースに構築されていることを発見している。

 暗号化DMは急速に標準になりつつあり、Metaも「Messenger」「Instagramダイレクト」「WhatsApp」で完全な暗号化を統合している。これは、犯罪者の隠れみのに使われかねないとして多くの法執行機関の怒りを買っているが、一方で、一般ユーザーにより多くのセキュリティと保証を提供するものでもある。

 また、長文ツイートについて、マスク氏は2022年6月からテストを実施している「Twitter Notes」のスクリーンショットを公開している。Notesでは、最大2500文字の投稿を作成でき、それをTwitterアプリにネイティブで埋め込み、簡単に共有することができる。

 8ドルの認証プランの刷新について、私の感想はこちら(外部リンク/英語)でお伝えしている。

 それから、決済について。

 ここでは何の例も紹介されてはいない。だが、マスク氏のこれまでの発言から、他のさまざまなアプリが既に試みているのと同じようなゲームプランで決済機能を実装しようとしているように見える。まず、口座間の資金移動を容易にし、手数料無料の送金を可能にすることから始めるようだ。そして、人々が実際アプリ内でお金を動かすようになったら、アプリ内課金や請求書払い、銀行取引など、より多くの利用方法を提供するようになるのだろう。

 これは、Twitterをより重要なアプリにするためのマスク氏の大規模かつ包括的な計画だ。しかし、規制のハードルが高く、前述した他のプレイヤーはうまく計画を実現できていない。

 マスク氏は多分、物事を進めるに当たって運が強い方だろうが、それは大きな挑戦であり、成功するには時間がかかるだろう。だから、何の画像も紹介できないのだ。

 決済への言及は、あらゆる暗号支持者を挑発することにもつながる。彼らはマスク氏が暗号決済を主流化する重要なリーダーと見ているからだ。マスク氏がこのスライドを空白にしたもう一つの理由は、熱狂的なファン層に希望の光を提供するためではないかと私は考えている。

 これこそマスク氏の得意とするところだ。同氏のビジネスと知的洞察力には疑問が残るが、彼は注目を集める方法を知っていることは確かで、それは彼がどんなプロジェクトにももたらしてくれる、最も貴重で具体的なスキルだ。彼は歩くPRマシンであり、 いまや何百万人ものユーザーを抱える自身のプラットフォームの鍵を手にしている。Twitterの最高責任者として注目を浴びることをマスク氏が楽しんでいるのは明らかだ。

 次なる疑問は、マスク氏がメディアを騒がせるネタをどれだけ用意しているのかということだ。

 マスク氏は、誰もが青い認証バッジを買えるようにし、トランプ氏を復活させ、以前禁止されていたアカウントを大量に禁止解除している。これらは全て、言論の自由を促進するという名目で行われている。

 これらの行動のそれぞれが、メディアに取り上げられ、結果としてマスク氏とTwitterに多くの注目を集めたが、お騒がせネタが枯れたら、その後はどうなるのだろうか。

 マスク氏は今後もTwitterに注目を集め続けることができるのだろうか。あるいは、このロードマップがより持続可能なビジネスにつながってメディアの気を引く必要もなくなり、Twitterの経営に口を出すこともなくなるのだろうか。

 マスク氏は注目を集めるのが格別にうまい。そのことは(「イーロン・マスク氏が不可解なグラフを使って示す『Twitter 2.0』のロードマップ」で紹介した)使用率グラフからも分かる。しかし、ビジネスを成功させられるかどうかは、注目された後の展開にかかっている。

 そういえば、ツイートの文字数を現在の280文字から420文字に拡大するべきだという意見もあった。この数字に対するマスク氏の親和性を考えると、おそらくそれは実現するだろう(※)。

※注:マスク氏は米国時間2022年12月11日、Twitterユーザーからの「Twitterの文字数が280字から4000字に増えるのは本当ですか?」の質問に対し、「Yes」と回答している(関連記事

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