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» 2021年07月28日 08時00分 公開

経営にSDGsを取り入れるために必要な考え方とは? 眞鍋和博氏(北九州市立大学教授)と語る【前編】SDGsと「ラバブル」な企業【第3回】(1/2 ページ)

企業がSDGsを推進するために何が必要なのか。北九州市立大学の眞鍋和博教授と語り合った。

[林 雅之 ,ラバブルマーケティンググループ]

 私が経営するラバブルマーケティンググループ(以下、LMG)は「Lovable Marketing(愛されるマーケティング)」を創業以来のコンセプトに掲げるデジタルマーケティンググループです。LMGは2020年5月から全社的にSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)推進への取り組みを開始し、2021年3月には企業活動を通じた社会課題解決へ貢献するため、「SDGsステートメント」と「4つのマテリアリティ(重要課題)」を決定しました。

 第1回「SDGsとマーケティングと愛される企業の在り方を考える」ではこの取り組みに至った背景を、第2回「SDGs推進活動を通しての気付きと企業を取り巻く環境変化」では、企業価値と社会環境、組織づくりについての私の気付きについて述べました。今回からの2回では企業がSDGsを経営に取り入れるために必要な考え方について、北九州市立大学教授でサステナブル北九州代表の眞鍋和博氏との対談を通じて紹介します。眞鍋氏はESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発への教育)の専門家で、LMGのSDGs推進活動をご指導いただきました。


企業活動とSDGs、お互いに相反しない結び付きを目指す

――対談の前半は「企業がSDGsを経営に取り入れる」をテーマに、お二方の思うところや、ここ数年の環境変化などを交えてお話いただければと思います。早速ですが、眞鍋先生のご経歴、活動内容についてご紹介いただけますか。

眞鍋 大学卒業後リクルートに入社し、15年ほどいろいろな仕事に携わるうち、大学での人材育成に面白みを感じ始めました。そのうち、社会で活躍できる人材を育成する仕事をしようと思いまして、リクルートを退職後、大学へと転職しました。

 それから大学のキャリアセンターで勤務していた2012年頃、ESDに出合いました。ESDは2002年に「WSSD(持続可能な開発に関する世界首脳会議)」にて日本政府とNGOが提唱して日本でも普及し始めた概念で、その名前の通り、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育のことです。

 ESDを知り、社会全体の持続可能性に貢献できる人材の必要性を強く感じました。それと同時に今自分が注力している人材育成は、企業にとって有益な人材育成という狭い範囲にとどまっていることに気付いたのです。これからは地球や社会という幅広い視野・視点に立った人材育成をしようと思い、ESDの研究に着手しました。

 ここ数年は学生だけでなく、経営にSDGsを組み込む際のコンサルティングなど、企業への取り組みも行っています。大学で人材育成を行っても、彼らを受け入れる企業が持続可能性のある経営を行っていなければ、人材を活用しきれませんよね。現在は北九州市立大学に地元企業のSDGsへの取り組みを応援する部署が立ち上がり、企業向けのセミナーも開催しています。

眞鍋和博氏

――ありがとうございます。林さんが眞鍋先生に初めてお会いしたときの第一印象と、先生にアドバイザーを依頼された理由はどういったことでしたか。

 九州で行われた経営者向けの勉強会に参加したとき、テーマの一つにSDGsがあり、そこで初めて眞鍋先生のお話をお聞きしました。その頃はLMGでもSDGsの理解を深めたいと思っていたものの、どのように取り組んでいくべきかを考えていたときでした。SDGsって、一見ビジネス活動とは相反する概念に思えるじゃないですか。だから、企業の存在意義と矛盾することなく取り組みたいなと。

 それに、本格的に取り組むには専門家の力が必要とは思っていたものの、SDGsとはこうあるべき、こうしなければならないという、いわゆるマニュアル的なものを押し付ける「べき論」のスタンスだと、誰もハッピーにならない。仕事に限らず何をするにおいても、そこに楽しみが見いだせないと継続が難しくなりますよね。サステナブルに関する活動なら、なおさら楽しくなければ続かないと思っていました。

 そんな中、勉強会でお聞きした眞鍋先生のお話がとても面白くて。特に「企業とSDGsがお互いに相反しないかたちで結び付く」というお話に、大きな共感を覚えました。先生ご自身が15年間企業勤めを経験され、ビジネスの現場を十分にご理解されているからこそ、さらに強く響いたのではないかと思います。この連載でも述べた通り、私は「共感」をとても大切にしていますから、ぜひ先生に相談したいと思いました。

林 雅之

――林さんはいつも「共感」を重要視されていますよね。この対談の後編では、実際に眞鍋先生がLMGで実施いただいたワークショップについて振り返りますが、全社員を巻き込み、ボトムアップ型で進めてくださるのが印象的でした。林さんから見ていかがでしたか。

 そうですね。ラバブルマーケティングというコンセプトもそうですし、「共感」して初めて人は行動に移すのだと思います。一連のワークショップは本当によかったです。SDGsに限らず、ボトムアップの姿勢は理想的だと思います。

 人間の脳には、未来よりも今に近い出来事を重要と捉えるという一種の「バグ」があります。SDGsは、このまま行くと世の中がこうなるという未来から逆算して、そのために今何をすべきかという行動指針ですよね。この「未来の重要度を認識して、今の行動を正す」という思想には、脳のバグを調整する働きがあると思います。

 ということは、ワークショップでSDGsを学びながら、そこにいたメンバー全員が自分たちの未来の重要度を上げていたことになるのです。これは私にとって、とても大きな気付きですね。

――ワークショップの重要キーワードとして、未来から逆算して今を考える「バックキャスティング思考」がありました。経営層だけでなく、メンバー全員で学んだのが印象的でしたね。

 そうですね。それに、みんな純粋にSDGsに興味を持っているのが分かりました。

あるコミュニティーに所属している場合、自分がそのコミュニティーに貢献しているという実感がないと居心地が悪くなります。自分はここにいても意味がないと思ってしまうのって、とてもつらいじゃないですか。所属するコミュニティーの一番大きな枠組みが地球ですから、自分が地球に貢献できていると感じることは、幸せの源泉にもなり得ると思います。だから皆SDGsに強い関心を持つのだと。ワークショップを通してメンバーのそんな姿を見られたのもうれしかったですね。

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