“和ピクルス”ブランド「和もん」が心と体の栄養を届けるためにしていることダイレクトな人々 第8回(1/2 ページ)

話題のD2Cブランドとそこで生まれるコミュニケーション、ブランドの仕掛け人の思想について考察するこの連載。第8回は“和ピクルス”ブランド「和もん」のオーナーである石根友理恵さんに取材しました。

» 2021年06月29日 10時00分 公開
[池田園子プレスラボ]

 第8回で取り上げるのは、“和ピクルス”ブランド「和もん」と同ブランドを展開するSEAMで代表取締役社長を務める石根友理恵さんだ。

 和もんは、天然酢と天然だしで作るピクルス液に国産有機野菜とフルーツを漬け込んで作る14種類の商品を販売している。「安心して食べてほしい」との思いから和もんのピクルスは化学調味料を一切使っていない。和ピクルスの名の通り、いちごやトロピカルフルーツ、切り干し大根など、従来のピクルスの枠にハマらないラインアップが斬新だ。心と体の栄養を満たす食体験を届けようと奮闘する石根さんに話を聞いた。

生と死に直面して気付いた「人生を懸けてやりたい事業」

石根友理恵さん 石根友理恵さん

 神戸大学国際文化学部在学中にイベントを開催するサークルで活動していたのが「商売の原体験だった」と振り返る石根さんは大学卒業後、サイバーエージェントへ入社。新規事業開拓室(当時)に配属され、社長の藤田晋氏と壁打ち的なミーティングを週に1度のペースで行う刺激的な日々を過ごした。その後、スタートアップのワンオブゼムへと転職してマーケティング部を立ち上げやサービス開発、海外との取引などさまざまな経験を積んだ後に「30歳までに自分の名前で仕事をする環境を作る」ことを目標として独立。1年ほどフリーランスとしてデジタルマーケティング・PRの仕事をした後、妊娠9カ月だった2017年3月にSEAMを設立した。

 SEAMは当初、2000万円もの融資を受け子ども向けの知育動画配信事業を準備していた。しかし、サービスリリースを目前に控えていた2019年6月に事業の方向転換を決断し、「和もん」でリスタートを切った。新たな事業アイデアを50ほど出し「10〜20年かけてでもやりたいことか」を軸に絞り込んでいく中で、幼い娘と数年前に亡くなった父の顔が頭に浮かんだのがきっかけだった。

 「今でこそすくすくと育っていますが、私が妊娠中に働きすぎたせいか胎児発育不全と診断されていた娘。晩年、食欲が落ちて栄養不足になり、心身ともに弱っていき、やがて死を迎えた父。これらの経験から、食と栄養に関わる事業を、人生を懸けてやっていこうと決意しました」と石根さんは語る。

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