今回は、コロナ禍におけるアドビのデジタルメディアビジネスと社員の働き方を振り返り、これからデータドリブン経営に取り組んでいく企業に向けての示唆を提供できればと考えています。
コロナ禍で人々の生活がリアルでの接触を避ける形に変わる中、企業活動のデジタルシフトが喫緊の課題になっています。多くの企業がデータドリブン経営に注目するのは、そこに「レジリエンス」があるから。すなわち経済環境の変化にも柔軟に対応できる「折れない仕組み」だからという考えが背景にありそうです。
アドビの日本オフィスの場合、2020年2月末までは希望者のみでしたが、同年3月1日から全員を対象とする在宅勤務に変わりました。この体制は2021年7月末まで続く予定です。
米国オフィスではもともと在宅勤務の人たちがいたこともあり、オンライン会議システムやVPN接続も全員が使える状態でした。とはいえ若い社員の中にはプライベートではスマホしか持っていない人もいます。在宅勤務が本格化するとなると、PCの他にも自宅の回線増強や机や椅子の準備も必要になります。そこで、必要なものを調達するために会社から一定額の補助が支給されることになりました。一部社員の間では、「家に生まれたばかりの子どもがいるので、出社できないまでもせめてコワーキングスペースで仕事をしたい」といった声もありました。が、仕事をする環境は自宅のみというのが私たちの基本方針です(感染をコントロールできていた時期には、オフィスでのウェビナーの収録や故障したPCの持ち込みなど、必要な場合の出勤は認められていました)。
社会全体が大きな変化を余儀なくされました。アドビでも社内を見わたせば、お客さまに直接会う必要のあるエンタープライズセールスのチームの働き方は変わらざるを得ませんでした。また、クレジットカード情報のような個人情報を扱うチームは、専用の環境を整備する必要があり、自宅でその環境を整えるまでに少々時間が必要だったと聞いています。
一方、私たちのチームの働き方への影響は全くありませんでした。Eコマース部門はもともとお客さまと直接電話でお話しするメンバーはいません。また、前回述べたように私のチームはDDOM(Data Driven Operating Model)ダッシュボードを使って仕事をしていますが、これはVPNに接続できさえすれれば、オフィスに出勤していたときと同じように使えます。
自分たちの環境変化への対応よりも重視したのは、むしろお客さまの不安の解消でした。
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