経営者になって分かった「真のマーケティング」――空の松村大貴氏に聞くチャレンジするマーケター(2/2 ページ)

» 2019年07月19日 18時00分 公開
[瀬川昌樹ビッグビート]
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 需要と供給のバランスを見ながら柔軟に価格付け(プライシング)することを「ダイナミックプライシング」と呼ぶ。この仕組みは既にスポーツ観戦チケットや航空券で導入されている。需要が低いときには安く提供し、高いときには高額に設定することで、損失を抑えて利益を最大化できるやり方だ。日本でも2、3年前から注目されており、ダイナミックプライシングを導入しているプロ野球チームもある。

 松村氏は、このプライシングというサービスが1つの産業になる可能性を感じている。

 「マーケティングの4Pで考えると、Productはもちろん、Promotionも広告代理店やPR会社などで産業になっていますし、Placeも流通業界やEC業界という産業があります。でもPriceだけは産業になっていない。あらゆるサービスや商品にはプライシングが必要ですし、たとえ無料であってもフリーミアム戦略の中で『無料』というプライシングをしているわけです」(松村氏)

 しかし、企業の収益と顧客満足度を最大化するプライシングは非常に難しく、そこに悩む企業も多い。そこで、テクノロジーの力で複雑な計算を支援することに大きな価値があるというわけだ。松村氏は近い将来FinTechやHR Techのように「PriceTech(プライステック)」というプライシングに関するテクノロジー産業が形成されることを構想している。

カスタマーサクセスを企業の事業・組織と合致させる

 松村氏は自分のことを「おせっかいな人間」と評している。そもそも、他事業のプライシングを支援すること自体、ある意味「大きなおせっかい」ともいえる 。

 だが、市場の需要と供給を見ながら最適な価格設定をすることで、企業は損失を抑えて収益を上げることができるし、消費者は自分のニーズや選択基準に応じて、最適な価格でサービスを受けることができる。

 旅行ならば、「空きが多く安い時期に行きたい」と考えるか、それとも「ベストシーズンで高くなるけど、旬の料理や絶景を堪能したい」と考えるかは人それぞれだ。

 「ダイナミックプライシングには賛否両論ありますが、同じ商品やサービスが、市場環境によって変動するということは、各人がそれぞれの価値に応じ、最適な価格で享受できるということでもあります。これだけ価値が多様な時代、各人の価値判断に基づいて最適な価格で商品・サービスを購入できるということが、あってもいいと思います」(松村氏)

 最適な価格で収益を上げ、さらにその先の顧客の満足度も上がれば、どちらも幸せだ。だから松村氏は「Happy Growth Company」というビジョンを掲げ、関わる人全てを幸せにすることを目指しているのだ。

 当然ながら事業の直接の目的はクライアントであるホテル・旅館を幸せにすること。つまりカスタマーサクセスを重視している。そのため「顧客の成功にどう貢献したか」という軸を、組織人事評価やあらゆるインセンティブに反映させ、カスタマーサクセスに基づく事業体系を築いている。

経営者になって真のマーケティング業務を展開するようになった理由

 松村氏は高校と大学時代を通じてマーケティングやPRに興味を持ち、大学卒業後はヤフーに入社してデジタル広告事業に携わった。しかし当時よりも経営者になった現在の方が、より深くマーケティング業務に関わっていると実感している。なぜなら、顧客のハッピーを目指してプライステックという新しい産業を開拓し、ハッピーという理念に基づいて組織や事業を組み立てているからだ。

 「だからマーケターの方には、自分の仕事領域の殻を破って、組織をまたぐ形でいろいろな提案をしていってほしいと思います。自分もまだ勉強中で、いろいろなことを試行錯誤しながらやっています」と松村氏は話す。

 そんな松村氏が、2019年8月2日に開催されるBigbeat LIVEで、経営者・起業家という視点で「真の顧客価値」について講演する。ぜひ多くのマーケターの方に参加してほしい。

対談全文はビッグビートのオウンドメディア「ニシタイ」(外部リンク)で読むことができる

執筆者紹介

瀬川昌樹

瀬川さん

せがわ・まさき ビッグビート アカウントディビジョン マーケティングセールスディレクター。大学卒業後、2005年4月よりビッグビートにて企画営業職に従事。国内外のICT系クライアントのマーケティングコミュニケーション戦略から実行までサポート。2018年に自社主催イベント「Bigbeat LIVE」の企画を担当し、営業におけるマーケティング戦略の重要性を感じ、マーケティング×営業を組み合わせたプランニングチームを立ち上げ現職に至る。「マーケティングで経営を変える」をテーマにした「Bigbeat LIVE 2019」を2019年8月2日に開催。当連載に登場する企業の担当者も登壇予定。申し込みはこちら


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