新市場の創造を目指す挑戦者を紹介します。
(このコンテンツはBRAND PRESS連載「イノベーター列伝」からの転載です)
市場の常識を変えるような華々しいプロダクトやサービスが日々メディアに取り上げられる今日。その裏では、無数の挑戦や試行錯誤があったはずです。「イノベーター列伝」では、既存市場の競争軸を変える挑戦、新しい習慣を根付かせるような試み、新たなカテゴリーの創出に取り組む「イノベーター」のストーリーに迫ります。今回話を伺ったのは、パーティースタイリストとして活躍する久林紘子氏。ファッション業界や欧州での生活で培った独自のセンス、色彩感覚を生かし、大人も子どもも楽しめるリュックス感のあるパーティースタイリングを提案しています。最近は、企業イベントの出張スタイリングやインスタグラムマーケティングのコンサルティングにも事業領域を広げた久林氏に、新市場で成功するための秘訣(ひけつ)をうかがいました。
「パーティースタイリストって、どんなお仕事なんですか」とよく聞かれます。ホームパーティーが盛んな欧州に比べると、日本ではなじみの薄い職業なので、そのような質問も当然かもしれません。しかし、すでにホームパーティー検定という専門資格もあり、これから徐々に認知されていくと思います。最近は、雑誌やCM撮影の空間・テーブルスタイリング、企業の公式インスタグラムのディレクションやスタイリング撮影、保育園や店舗などの空間コーディネートにも携わっており、徐々に仕事の幅が広がってきました。
とはいえ、幼少期からパーティースタイリストを目指していたわけではありません。子どものころからモダンバレエを習っていましたが、安室奈美恵さんにあこがれてストリートダンスを始め、大学でもストリートダンスサークルに入っていました。もちろん踊ることが好きだったのですが、もともと美術が好きだったことも影響し、公演時などの舞台まわりの空間の装飾にも関心がありました。また、ダンスを通してファッションにも興味を持っていました。
大学卒業後は、アパレルの会社に就職しました。最初に配属されたのは商品企画部のデザイン課でした。そこでは、何種類もの生地、さまざまな色を組み合わせて、何度も試作が行われます。製作アシスタントだった私は、最終的に一つの作品に仕上がるまでの工程を目の前で見て、デザイナーや先輩たちのプロフェッショナルなこだわりに驚嘆させられました。これまで見たことのない異次元の美意識の世界であり、そこで学んだプロフェッショナリズムと色彩感覚が現在でも役に立っていると思います。
その後、広報部に異動し、マーケティング関連の仕事も行いましたが、出産を機に退職し、家庭に入りました。そして、子供が1歳の誕生日を迎えるとき、子どもの写真を撮影するためにインターネットで写真館の情報を集めました。しかし、どの写真館にも自分たちの雰囲気に合った装飾がありませんでした。そこで、アパレル勤務のころからため込んでいたはぎれを集めてガーランドを手作りしたんです。写真館にお願いしてそれをスタジオ内に飾り、その他の備品類も全て持ち込んで子どもの写真を撮影してもらいました。
その写真は、写真館のWebサイトにも掲載されたのですが、「そのガーランドで撮影してほしい」という問い合わせが何件もあったそうです。その話を聞いて、こういう装飾のニーズがあることを知りました。
子どもが2歳の誕生日を迎えたときは、アーティフィシャルフラワーで作った花冠を頭にのせて写真を撮影しました。その写真とともに、花冠の作り方をブログで紹介したところ、長期にわたってアクセス数が増えました。インターネットで調べてもシロツメクサの花冠の作り方ぐらいしか情報がなかったので、ママ層にとって役に立ったのだと思います。
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