「オムニチャネル」は限られた狭い世界の話題ではない。業種の壁を越え、マーケターが知っておくべき基礎知識を専門家がコンパクトに解説する。
「オムニチャネル」という言葉は、今では広く知られています。おそらく、多くの人が認識しているそれは、主にB2Cのものであり、ネットとリアル店舗とそれぞれで取り扱い可能な商材を扱う限られた世界の話と捉えているのではないでしょうか。
しかし、実際にはオムニチャネルは、より多くの業界、より多くの業態で当事者意識を持って考えられるべき話です。そもそも顧客の立場からいえば、このトレンドと無縁でいる人はほとんどいません。
あなたの知らないオムニチャネルの全体像について、専門家が解説します。
簡単に振り返ると、このオムニチャネルという言葉は、米国のデパートチェーンであるMacy'sが2011年1月に初めて利用しています。このとき、Macy'sは「オムニチャネルを進め、いつでもどこからでもお客さまがMacy'sにつながることができるようにする」と発表しました。それは、今まで店舗やEコマースで別々に進めていたものを統合し、全てのチャネルでMacy'sのお客さまが同じショッピング体験ができるようにするという、世界初の宣言でした。それから3年以上の月日が経った2013年に、日本でもセブンイレブンなどの小売業大手がオムニチャネル戦略を発表しました。
この背景には、お客さまの行動の変化が大きく関わっています。スマートフォンが普及し、 Eコマース専門サイトが台頭したことで、お客さまの行動様式は様変わりしました。今よりも情報量が少なったころは、お客さまは新聞や広告、CMなどの限られた媒体から情報を取っており、情報の流れが比較的シンプルでした。
しかし、口コミサイトや比較サイトなどの情報が増え、SNSが普及したことで、TwitterやFacebookで情報が拡散するようになり、お客さまが得る情報の流れが多様化しました。さらにはスマートフォンが普及し、いつでもどこでも情報を得ることができるようになったことで、より一層複雑化しました。例えば、お客さまが店頭まで来て商品説明を受けたにもかかわらず、Webサイトで調べた商品の方が安価だったのでそちらで購入してしまったり、ブランドサイトの価格と店頭価格に開きがあったために不信感を抱き購入を取り止めたり、せっかく店頭まで来て接点を持ったにも関わらずお客さまが別の場所に流れてしまったりという事態が多く発生するようになりました。
そして、このお客さまの行動パターンが変わったことに対応するために、「オムニチャネル」戦略が叫ばれるようになりました。
現在、多くの企業がオムニチャネル戦略を発表し、一種の流行語のようになっています。しかし、それらの企業の中には、オムニチャネル戦略と銘打っているものの、実際はオムニチャネルに当てはまらないものが含まれています。
では、オムニチャネルとはどういうものなのでしょうか。オムニチャネルを理解するために、まずは下記の図をご覧ください。
ここでは、小売業界を例にして、企業と顧客とのタッチポイント(接点)を示しています。左から順に以下の4つのモデルが紹介されています。
それでは、順番にそれぞれの中身を確認していきましょう。
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