マーケティングオートメーション活用の基礎を学ぶ本連載。今回は、B2Bマーケティングを実施する上で必要な“見える化”について解説します。
企業の営業活動にとって、ゴールは「売り上げを上げる」ということになります。
そのために、営業部門は新規顧客を獲得したり、既存顧客にアップセル、クロスセルを仕掛けたりします。さまざまな取り組みによって商談数を増やし、受注率を上げ、顧客当たりの受注単価を増やすのです。
一方、マーケティング部門のミッションとは「商談化する見込みの高い顧客リストを営業部門に引き渡す」ことです。このミッションを遂行するためには、「見込みが高いかどうか」を判別する必要がありますが、その判別はどのように行えばよいでしょうか。
一般的に、顧客企業は以下のような購買プロセスをたどります。
上記(1)〜(6)の購買プロセスのどの段階にいるかが分かれば、商談化する見込みが高いかどうかを判断できます。
例えばSEOコンサルティングを受けたいと真剣に検討されているお客さまは、「最新のSEO事情」のようなブログ記事を見るより、きっと「SEOサービス案内」や「SEO導入事例」「SEO導入実績」といったコンテンツを見るはずです。
営業部門には最新のSEO事情を閲覧していた見込み客リストを渡すより、SEOサービス案内、SEO導入事例、SEO導入実績の3ページを見た人のリストを渡した方が、コンタクトした際に訪問や商談化に進む可能性が高くなると推測されます。
ごく単純な例で説明しましたが、各購買プロセスにおいてお客さまの「見込みが高い」と思われる行動を仮定することが、マーケティングオートメーション(MA)活用におけるスコアリング(見込み度合いの判別)の基本になります。
コンタクトを取るべき見込み客リストを、自社サイト内で訪問者が取った行動に基づいて作成する際に必要になるのが、サイト訪問情報(アクセス情報)と会社名や氏名など、いわゆる「名刺情報」とのひも付けです。このひも付けにより、お客さまの行動が追跡可能になります。そして、MAを活用する上で最初の壁になるのがここです。
少し技術的な話になりますが、MAツールは一般的に、メールアドレスをキーにして名刺情報を管理しており、個々のお客さまのWebサイトでの行動を追跡するには、メールアドレスとブラウザから取得するCookie情報をひも付けする必要があります。
このひも付けがされていない状態のサイト訪問者には、企業側からアプローチする方法がありません。また、ひも付けがされていない状態のお客さまは、何に興味を持っているか、どの購買プロセス段階にあるかが測れません。
「行動追跡可能」なお客さま情報を持つことは、MAを活用したB2Bマーケティングのために非常に重要なポイントです。連載第1回「B2Bマーケターの皆さん、お客さまへの接触機会を逃していませんか? 」の中で、「コールドコールが案件化につながる比率は2%」というLeap Jobの調査データを引用しましたが、「行動追跡可能」なお客さまを創出しないことには、この「コールドコール」(獲得したリードに対し、育成や興味・関心度の判定をしないまま、電話営業すること)によるコミュニケーションを脱することができません。
メールアドレスとCookie情報のひも付けは、自社サイトのフォームに名刺情報を入力してもらう方法と、MAから送信したメール経由で自社サイトを訪問してもらう方法があります。
フォームによるひも付けには、お問い合わせフォームももちろん含まれますが、お問い合わせに至るお客さまの数は限られています。そのため、お客さまが名刺情報を入力する手間を掛けてでも入手したいと思うような有益なコンテンツを準備することが重要になります。
メール経由でのひも付けを狙う場合にも、サイト訪問を促す誘導先コンテンツが必要になります。第3回で詳しく触れたいと思いますが、MA活用のB2Bマーケティングにおいては、コンテンツの整備が非常に重要な要素になります。
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