中国版LINE「WeChat(微信)」は14億人のデジタルインフラ【連載】誰も教えてくれなかった中国的電子市場動向 第1回(1/3 ページ)

14億人の巨大なデジタルマーケットで今、何が起こっているのか。中国におけるインターネットマーケティングの世界を、経験豊富なエキスパートが解説する。

» 2017年02月14日 08時00分 公開
[渡辺大介クロスシ―]

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 金盾(きんじゅん)あるいは「グレートファイアウォール」と呼ばれる独自の情報検閲システムの内側で、独自な形で発展を続ける中国のインターネットビジネス。14億人の消費を動かしつつも他国からはその全貌が見えにくい。

 「Facebook」や「Twitter」「LINE」などが使えない中国では、その代わりにそれぞれの中国版ともいわれるサービスが発展している。中でも中国版LINEと呼ばれる「WeChat(微信)」は、月間アクティブユーザー数が8億4600万人を突破するなど、生活のあらゆるシーンに入り込んでいる。今回は、その実態とWeChatを使った企業マーケティング事例を紹介しよう。


社会的インフラとしてのWeChat

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 そのスタートは、LINEがスタートする5カ月前の2011年1月にさかのぼる。WeChatは、Tencent(騰訊控股:以下、テンセント)グループのインスタントメッセンジャー「QQ」の発展型でスマホ専用のメッセンジャーアプリとしてローンチした。

 中国の人々は家族や友達とグループを作ってチャットするだけでなく、仕事用のコミュニケーションツールとしてもWeChatを活用している。中国のビジネスシーンでは、初対面の人同士が名刺を交換せずにWeChatでつながるという光景もよく見られる。また、テキストとスタンプでのやりとりもさることながら、ボイスチャット機能の利用も活発だ。これはスマートフォンに向かってトランシーバーのように音声を入力して相手に届けるというものだ。テキストを打ち込むよりも格段に速く意思を伝達できるのが、中国人の嗜好(しこう)にマッチしたともいわれている。

 さらに、WeChatは単なるコミュニケーションツールにとどまらない。「もう3カ月も財布を開いていません」というのは、北京で働く20代OLの言葉だ。彼女はレストランやコンビニ、タクシーの決済から、携帯電話料金、水道代、電気代の支払いまで全て、WeChatに付帯している「WeChatペイメント」に一本化しているのだ。

 最近では交通機関でも利用可能になり、キャッシュレスで旅行に出掛けられるようになった。旅先での宿泊から移動、買い物まで含めてWeChatで支払えるようになっているのだ。日本でいえばLINEに「Suica」のような機能が付き、銀行引き落としと結び付いたようなイメージだ。2016年のWeChatペイメントの決済総額は3兆6000億元(約60兆円)に達すると予想されている(※1)。

※1. 出典:China Daily「WeChatペイメントは2016年に3.6兆元を突破の見込み」(http://caijing.chinadaily.com.cn/2016-03/22/content_24018913.htm)(外部リンク/中国語)

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