ブランドメッセージをユーザーと同じ目線で伝えるソーシャルメディア本来の役割への期待は、決して失われたわけではありません。企業の心を伝えるコミュニケーション手段としてのInstagram活用例を紹介します。
看板商品であるオリジナルチキンを中心に据えた季節感あふれる写真が印象的なケンタッキーフライドチキン(以下、KFC)のInstagramアカウント。同社では、Instagramをプロモーションツールというよりもブランドメッセージを伝える場として活用しているといいます。
即自的なコンバージョンに傾倒しがちなデジタルマーケティングにおいて、より長期的なエンゲージメント醸成を重視するのはどういった狙いからでしょうか。KFC マーケティング部DIGITAL・CRM推進担当マネージャー 塩谷 旬氏とアシスタントマネージャー 二戸有紀氏に、Instagram開始のいきさつや運用の現状について話を聞きました。
――Instagramはいつから始めたのですか。
塩谷 弊社では以前より「Facebook」と「Twitter」「LINE」を活用しております。そこに「Instagram」が加わったのは、2015年6月からです。
――KFCではソーシャルメディアをどのように活用されてきたのでしょう。
ソーシャルメディアはお客さまとの最初のタッチポイントという位置付けです。弊社ではネットでは他にプロモーション施策として、メルマガや公式アプリを運営しています。ソーシャルから入ってきてくださった方が、最終的にこれらの会員になっていただくような流れを作っています。
――Instagramについてはどのような印象をお持ちでしょう。
塩谷 まだ手探りなところはありますが、他のソーシャルメディアと比べて明らかに違うと強く感じています。例えば、他のソーシャルメディアでは、KFCに興味を持ってくださっている方々に対して、キャンペーン情報やニュースなど、こちらが伝えたい情報をタイムリーに届けられるところが大きな強みとなります。ただ、それはどちらかといえばメルマガに近い使い方ともいえます。それに対してInstagramは、スクエアの限られたスペースの中で、私たちの世界観や思いをビジュアルで伝えるものだと考えています。そのため、よりこだわったクリエイティブが求められますが、言葉以上のものが伝わるポテンシャルを秘めていると思います。
――投稿やクリエイティブの制作はどのように行っているのでしょうか。
二戸 運用は担当が他のソーシャルメディアと兼務で行っています。ただ、クリエイティブに関しては他の流用ではなくオリジナルで用意しています。撮影は社内ではなくスタジオで本格的に行っています。
――パーティーシーンの写真が印象的ですね。
塩谷 そうですね。ファストフードというと、一般的には1人で食べることが多いと思いますが、日本ではKFCは季節の行事や祝い事などの「ハレの日」需要が大きく、ファミリーや友人などと一緒に食べる利用者が多いことが特徴です。だからInstagramでも「みんなで食べると楽しい」というメッセージを伝えたいと考えて、家族の団らんやパーティーを想起させる写真を中心に投稿しています。特に、中央に置いたフライドチキンがたくさん入ったバーレル(KFC独自の樽型パッケージ)に四隅から手が伸びている様子を真俯瞰で撮影したシリーズがありますが、これが私たちの世界観を表現するクリエイティブとして好評です。夏の海水浴から始まり、秋はハロウィーン、冬はクリスマスという具合に、季節限定のパッケージを用いながらそれぞれの行事に合わせたシチュエーションを作り込んでいます。
――これまでで一番「いいね!」が多く付いたのは、どんな写真ですか。
二戸 12月24日に投稿したクリスマス向けのもので、やはりパーティーバーレルを囲んだ写真でした。実はこの投稿に先立って、クリスマスをテーマに別の写真も投稿もしています。こちらの写真のテーマは「パーティー前」で、バーレルを囲む「パーティー中」と合わせたビフォアアフターになっています。2枚の写真を時間を開けて投稿することで、ストーリーを感じてもらおうというものです。
――逆にあまり反応がないのはどういう投稿なのでしょう。
二戸 撮影スケジュールの関係で新しい写真がなかなか投稿ができなかった時期があって、仕方なくストックの中からあまり作り込んでいないオフィスのシーンを投稿したことがあるのですが、これまでとは雰囲気が違っていたためか、反応は今一つでした。やはりInstagramの利用者は敏感で、ちゃんと見ていますね。
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