企業のコミュニケーション活動のあらゆるコンタクトポイントにおいて存在するUX。最適なUXを提供するための考え方とはどういうものか。
これまで、オウンドメディアを軸にしたコミュニケーションをテーマに、具体的な施策とその狙いについて、さまざまな事例を引きながら考察してきた。
成功するオウンドメディアに共通する部分としては、根底に必ずアイデンティティー、つまりその企業“らしさ”が表現され、それが企業とユーザーを結ぶ上で欠かせない重要な役割を果たしているということだ。
今や、ネット上のメディアを通じたコミュニケーションは、ユーザーの購買プロセスにおいてメインストリームであるといっても過言ではない。ユーザーはあらゆるデバイスで自由に情報を取捨選択し、自分自身で判断して行動できる。だからこそ、企業にとってユーザーの理解が必要不可欠であり、ユーザーオリエンテッドなサービス設計が重要視されているのだ。
こういったことを背景に、今注目されているキーワードが「UX(User Experience)」だ。デジタルマーケティングを成功に導くカギとなるUXとは何か。今回はそこを掘り下げたい。
User Experienceをそのまま訳せば「ユーザー体験」ということになる。しかし、実際は一言で言い表せるものではなく、背景にある考え方なども含め、より広い概念として解釈されている場合が多い。そのためUXについて明確に定義することは難しい。むしろ、明確な定義をするということ自体に違和感を覚える人も多いだろう。
UXとはユーザーの一連の体験、つまりプロセス全体のことを指す。だから、企業のコミュニケーション活動に触れるあらゆるコンタクトポイントにおいてUXが存在していると言っていい。UXという言葉は何か特定の行為や場面についての定義というよりも、コミュニケーション全体における接点を統合的に表した考え方といえる。
ここ最近、UXというキーワードはよく耳にするし、近年、「IoT」や「AI」「デジタルマーケティング」などとともに一種のバズワードとして捉えている人も少なくないのではないかと思う。しかし、UXは単なる一過性のはやり言葉として片付けられるものではない。繰り返すがUXとは企業とユーザー間のコミュニケーション全体において、あらゆるコンタクトポイントに存在する。ネット広告やリスティング広告、企業の公式サイト、キャンペーンやブランドサイト、SNSなど、それぞれにUXが存在する。
しかし、実際には企業は一つ一つを全く異なるコミュニケーションと考え、それらのUXは個別に検討されていることが多い。企業にとってユーザーとのコミュニケーションはそれぞれの媒体の上で成り立っているのかもしれないが、ユーザーは違う。接触する媒体が異なっても同じ企業としてのブランドや姿勢、思いを「面」として捉えているのだ。だからこそ、UXは「統合的な考え方」に基づいて設計していくことが重要だ。
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