日本IBM、2010年は「クラウド」「データ分析」に注力

日本IBMの橋本孝之社長が2010年の経営方針を説明。クラウドコンピューティングやデータ分析の分野に注力し、業界別のサービス提案を強化していく。

» 2010年02月15日 20時01分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は2月15日に経営方針説明会を開き、2010年はクラウドコンピューティングやデータ分析の分野に注力する意向を示した。製造や金融などの業界ごとに、クラウドなどの新規分野を含めたサービスを提案していく。橋本孝之社長は「コスト削減に加え、自社の成長に踏み込んだ案件が増えている」と顧客企業のIT投資の現状を認識。成長分野への投資を進める。

顧客からは「会社を成長させたいという前向きな気持ちを感じ取れた」と橋本氏 1、2月はIBMのユーザー研究会を9カ所回った。顧客からは「会社を成長させたいという前向きな気持ちを感じ取れた」と橋本社長。コスト削減以外でのIT投資の要望が生まれている

 新規分野への注力では、1月1日付で設立したクラウドコンピューティングの統括組織が挙がる。関連するソフトウェアやハードウェア、サービスに長けた専門家が300人集まり、業界ごとに特化したサービスを開発。「コスト削減以外のクラウド活用」(橋本社長)を顧客に働き掛けていく。

 同じく「BAO(Business Analytics & Optimization)」と呼ぶデータ分析の専門組織の人員を、1月1日付で400人に増やした。2008〜2009年に米IBMが買収したILOGやSPSSの技術を反映させ、マネーロンダリング(資金洗浄)を防止するサービスなど、金融や製造業向けに30種類のサービスを用意する。

 「クラウドやBAOは直接売るものではない」と橋本社長。業界別のサービスにクラウドやBAOを組み合わせることで、新たな提案活動につなげたい考えだ。

09年はコスト削減から成長分野への投資にシフト

 説明会では、2009年1月1日付で社長に就任した橋本氏が1年間を振り返る場面もあった。売り上げ全体の3分の1を稼ぐアウトソーシング事業では、1999年、2000年に契約した大型案件の更新を6件獲得。新規案件も5件受注した。「日本IBMの事業の屋台骨であるアウトソーシングで結果が残せた」と橋本社長は語る。

 他社との協業関係の強化や新サービスの提案にも注力した。従来の協業ではソフトウェアやハードウェアを各事業ごとに売っており、「一枚岩になっていなかった」(橋本社長)。これを改め、パートナー支援を一本化する体制を発足。景気が後退した2009年前半には、半年から1年で成果を出す短期型コンサルティングビジネスの提案を強化。250件の新規契約につなげた。

 「7月まではデータセンターやサーバの統合など、コスト削減の案件が多かった。7月以降は(短期型コンサルティング)案件の40%が、売り上げ増やデータベース統合による顧客との関係構築といった成長分野への投資だった」と橋本社長は話していた。



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