米Spriteは、米国の炭酸飲料市場において、Pepsi(ペプシ)を抜き第3位となったことを受け、新フレーバー「Sprite + Tea(スプライト+ティー)」を発表した。同製品は、通常版とゼロシュガー版の2種類があり、米国とカナダにて10月までの期間限定で販売される。
この商品は、インターンによる調査プロジェクトから生まれたもので、消費者がスプライトにティーバッグを入れるというソーシャルメディア上のトレンドに着想を得たものだ。この現象がTikTokで数百万回再生されるバイラル現象となったことから、北米コカ・コーラの研究開発チームが迅速に製品化へと動き出した。Spriteにとって、この新製品はソーシャルリスニング(SNSなどを通じて消費者の声を分析する手法)の活用例の一つである。
「これは自然発生的な、消費者主導のインサイトだった。消費者のアイデアを出発点として素直に耳を傾ける絶好の機会だと感じた」と、Sprite北米ブランドディレクターのケイト・シャウフェルバーガー氏は語った。
Spriteでは、新たな製品開発はまず調査から始まり、次にレシピや試作品の作成へと進むのが通常の流れである。しかし、今回は「スプライトにティーバッグを入れる」という話題がオンライン上で大きく拡散したことが、開発プロセスを加速させる要因となった。
「消費者が自発的に、スプライトに新しい感覚的体験をもたらしていること自体が、即座に行動を起こすに足る十分な裏付けとなった」とシャウフェルバーガー氏は述べた。「ではわれわれは、どうやってそれを自社らしく昇華し、さらに一歩踏み込むか? それを模索したのだ」
「Sprite + Tea」のクリエイティブキャンペーンでは、ファッションとライフスタイルを融合させた新興ブランド「Eastside Golf(イーストサイド・ゴルフ)」とのコラボレーションを実施している。同ブランドは、ヒップホップやバスケットボールといった、Spriteのブランドイメージを形づくるカルチャーをゴルフの世界に取り入れており、元アメリカ大統領のバラク・オバマ氏やDJキャレド、さらにはクリス・ポールやパトリック・マホームズといった著名人にも支持されている。また、複数のプロスポーツリーグとの提携に加え、メルセデス・ベンツUSAやナイキとのコラボレーションも展開している。
30秒のテレビCM「The Fix」では、ゴルフの打ちっぱなしで動画撮影に苦戦しているアマチュアゴルファーが登場する。そこにEastside Golfの共同創業者であるオラジュワン・アジャナク氏とアール・クーパー氏が現れ、Sprite + Teaを手渡すと、ゴルファーはその効果を空想し始める。「これを飲めばスイングがうまくなる? チャンピオンのジャケットが取れる? 人気ラッパーのお気に入りゴルファーになれる?」といった調子だ。
だが、Spriteらしい「Obey Your Thirst(喉の渇きに従え)」のメッセージに従い、Sprite + Teaはそんな都合のいい奇跡は起こさない。ナレーションの女性がこう語る。「プロ並みのスイングがしたいなら練習あるのみ。でも、爽快な飲み物が欲しいなら、新しいSprite + Teaを」。このキャンペーンでは、商品を前面に押し出した15秒のCM「Not your granny’s sweet tea(おばあちゃんの紅茶じゃない)」のほか、屋外広告やSNS、デジタル広告なども展開されている。
「Eastside Golfは、ゴルフの伝統に“味”と“革新”を加えており、これまで門戸が開かれていなかった層にも参加を呼びかけている。それは、私たちがSprite + Teaを通じて、伝統的な紅茶というカテゴリーに新たな風を吹き込もうとしている姿勢と一致している」とシャウフェルバーガー氏は語る。
今回の「Sprite + Tea」の発売は、2024年に登場した「Sprite Chill(スプライト・チル)」の成功を受けてのものである。Sprite Chillは、期間限定製品としてスタートしながらも、2024年におけるコカ・コーラ社内で最も売れた炭酸飲料の新製品となり、現在では定番商品としてラインアップに加えられている。
「イノベーションに対する私たちの考え方は、単なる新フレーバーの投入ではなく、ブランドの価値や訴求力を強化し、消費者とのつながりを築くことにある」と、コカ・コーラ北米事業部門でスパークリングフレーバー部門の副社長を務めるジョシュ・クルー氏は以前のインタビューで述べている。
Sprite Chillは、NBAチーム「アトランタ・ホークス」のスター選手トレイ・ヤングを起用したキャンペーンとともに登場し、2025年にはブラックハウス・ラジオ(Black House Radio)との提携により、ブラックDJによるハウスミュージックに焦点を当てたYouTube番組やイベントにも展開が広がっている。こうした「消費者の情熱」とブランドの接点を生み出す戦略が、SpriteのPepsi超えを後押しした。
「私はイノベーションが大好きだ。なぜなら、マーケティングにおいてより大胆な挑戦ができるから」と、コカ・コーラのスパークリングフレーバー部門でシニア・クリエイティブ・ディレクターを務めるAP・チェイニー氏は語る。
「Spriteは決して現状に甘んじない。Sprite + Teaのようなイノベーションによって、常に消費者とビジネスのために最善を尽くしていく」
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