ZoffがLINE活用に注力するのは、スタッフの業務効率化や顧客の購買体験の向上のほかにも、マーケティングの観点から次の3つの理由がある。
メガネは季節商材ではないため、購買周期をつくるのがとても難しい。だが、同社が調査した結果、LINEでクーポンを配信すると、購買につながることが明らかになった。例えば、2024年8月に配信した「ID連携者限定500円OFFクーポン」は、平均ROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)の約15倍を記録したという。セール時期はもちろんのこと、購買周期をコントロールする目的で、平常時にも年に2度ほどクーポンを配信している。
ユーザーデータをもとにセグメントをかけたユニークなメッセージ配信施策も実施している。データ分析の結果、「Zoff SMART」という軽くて壊れにくいことが特徴の商品は、特に視力の悪い人の購入率が高い傾向が分かった。そこで「裸眼視力0.1以下」の顧客に絞ってLINE公式アカウントでメッセージを配信したところ、高い成果を上げたという。
LINE公式アカウントの友だちは、その他の購入者と比較して、新規・既存ともに25%ほど継続率が高いという(※)。
※2022年にLINE公式アカウントで配信したクーポンを「利用した人」と「利用していない(受け取ってない人も含む)人」の、2022〜2024年の2年間の購買行動を比較した数値
LINE公式アカウントの友だちは、その他のZoffユーザーよりも、メガネの平均購入本数や総利用金額が多く、LTVは118.8%向上していた。ちなみにZoffでは、「LTV=2年間の一人当たりの総利用金額」と定義しており、LINEで配信したクーポンを利用したことがある人は、このLTVが高くなったということだ。
「Zoffの店舗体験において、LINEはなくてはならないものとなっている」と語る須田氏。「今後は視力矯正器具のブランドだけではなく、人々の暮らしを豊かにするアイウェアのブランドになりたい」と展望を語る。
メガネのニーズを「Want」の気持ちへと転換するために、これまで活用していた顧客の属性データに加え、さまざまなチャネルで取得した顧客の趣味嗜好や愛着といった感情データも掛け合わせることで、立体的なコミュニケーションをつくっていく予定だ。
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