メガネを「たまに買う」ではなく「よく買う」ものに──Zoffは一体何をした?(2/2 ページ)

» 2025年06月06日 06時00分 公開
[野本纏花ITmedia]
前のページへ 1|2       

LTV、継続率共に向上 データ活用の成果

 ZoffがLINE活用に注力するのは、スタッフの業務効率化や顧客の購買体験の向上のほかにも、マーケティングの観点から次の3つの理由がある。

(1)購買周期を形成できる

 メガネは季節商材ではないため、購買周期をつくるのがとても難しい。だが、同社が調査した結果、LINEでクーポンを配信すると、購買につながることが明らかになった。例えば、2024年8月に配信した「ID連携者限定500円OFFクーポン」は、平均ROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)の約15倍を記録したという。セール時期はもちろんのこと、購買周期をコントロールする目的で、平常時にも年に2度ほどクーポンを配信している。

クーポンの定期的な配布で、購買周期を形成する(セミナー資料より)

 ユーザーデータをもとにセグメントをかけたユニークなメッセージ配信施策も実施している。データ分析の結果、「Zoff SMART」という軽くて壊れにくいことが特徴の商品は、特に視力の悪い人の購入率が高い傾向が分かった。そこで「裸眼視力0.1以下」の顧客に絞ってLINE公式アカウントでメッセージを配信したところ、高い成果を上げたという。

(2)継続率が向上する

 LINE公式アカウントの友だちは、その他の購入者と比較して、新規・既存ともに25%ほど継続率が高いという(※)。

※2022年にLINE公式アカウントで配信したクーポンを「利用した人」と「利用していない(受け取ってない人も含む)人」の、2022〜2024年の2年間の購買行動を比較した数値

新規・既存顧客の継続率が向上(セミナー資料より)

(3)LTVが向上する

 LINE公式アカウントの友だちは、その他のZoffユーザーよりも、メガネの平均購入本数や総利用金額が多く、LTVは118.8%向上していた。ちなみにZoffでは、「LTV=2年間の一人当たりの総利用金額」と定義しており、LINEで配信したクーポンを利用したことがある人は、このLTVが高くなったということだ。

LTVが向上(セミナー資料より)

 「Zoffの店舗体験において、LINEはなくてはならないものとなっている」と語る須田氏。「今後は視力矯正器具のブランドだけではなく、人々の暮らしを豊かにするアイウェアのブランドになりたい」と展望を語る。

インターメスティック須田悠太氏(LINEヤフーより)

 メガネのニーズを「Want」の気持ちへと転換するために、これまで活用していた顧客の属性データに加え、さまざまなチャネルで取得した顧客の趣味嗜好や愛着といった感情データも掛け合わせることで、立体的なコミュニケーションをつくっていく予定だ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

関連メディア