加工しまくりのキラキラとした虚像の世界とは一線を画す「全く盛れないSNS」としてZ世代を中心に支持を拡大する「BeReal」。2024年7月にスタートした広告事業について、来日したCEOに話を聞いた。
毎日1回、アプリから通知が来たら2分以内に写真を撮影して投稿するのがルール――。仏発のSNS「BeReal」は、スマートフォンの外カメ(背面カメラ)と内カメ(フロントカメラ)を同時に使って加工のないリアルな瞬間を共有することで知られる次世代SNSだ。フォロワーや「いいね!」数を気にすることなく友達同士で素の自分を共有し合えるというユニークなコンセプトは、若年層を中心に支持を拡大している。全世界での月間アクティブユーザー数(MAU)は4000万人だ。
2024年6月にはゲームパブリッシャーである仏Voodooが5億ユーロでBeRealを買収。7月には広告事業を開始するなど、ここ最近のBeRealはさらなる成長に向けた動きを加速させている。日本市場においてもMAUは450万を突破し、さらなる成長を目指している。来日した同社CEOのエメリック・ロフェ氏と日本市場広告責任者の笹川明人氏に、日本市場での戦略や広告ビジネスの展望について話を聞いた。
――VoodooがBeRealを買収した背景について教えてください。
ロフェ 実はBeRealは創業当初の2020年からVoodooとさまざまなディスカッションを重ねてきました。急成長を遂げたBeRealでしたが、開発やマネタイズ面で課題がありました。そこで、Voodooの10年以上にわたるゲーム業界での実績が役立つと判断し、成長加速のために買収が決定しました。一方でVoodooにとっても今回の買収は、ソーシャルメディア分野への新しいポートフォリオ追加という大きなチャンスとなりました。
――BeRealが他のプラットフォームと異なる特徴をあらためて教えてください。また、それは広告主にとってどう特別なのでしょうか。
ロフェ BeRealは「リアルな瞬間」を共有することが特徴です。この点はユーザーだけでなく、ユーザーと信頼ベースでのエンゲージメントを求めている広告主・ブランドのニーズにもすごくマッチしていると思います。BeRealでは広告においてもフィルターや加工された写真ではなく、「リアル感」のあるクリエイティブを推奨しています。他のSNSであるようなキラキラした写真ではなく、実在するスタッフが商品を手にしているような、リアル感のあるクリエイティブを使っていただくことで、他プラットフォームとは異なる自然なユーザー体験が得られると考えています。クリエイティブ制作にはわれわれのチームが広告主と直接連携し、サポートしています。これは日本においても同様です。
――広告主は他のプラットフォームで使ってるクリエイティブを使い回すのではなく、 BeRealにカスタマイズされたクリエイティブを制作しているのですか。
笹川 他のプラットフォーム用のクリエイティブをそのまま使ったケースもあります。それでも他と比較して効果は悪くなかったのですが、第2弾でBeRealらしいクリエイティブに変えたところ、その数倍のパフォーマンスが出ました。 社内データではありますが、BeReal独自のクリエイティブを用意していただくことで、他のSNS広告と比べてエンゲージメント率が5〜10倍になるというデータもあります。
――BeRealが広告においてもエンゲージメント率が高い理由は何でしょうか。
ロフェ 他のプラットフォームでは現状、ほとんどのユーザーはただコンテンツを見るだけになっていると思います。これに対して、BeRealでは90%のユーザが毎日投稿しています。誰もが投稿者であり、見るのも友達の投稿という中では、ユーザーのエンゲージメントは、他のプラットフォームとは比べものになりません。
――日本での広告事業の進捗を教えてください。
笹川 日本ではすでに200社以上の広告主が参加しており、大手企業も多く含まれています。特に飲料やお菓子などのFMCG(日用消費財)、化粧品ブランドなどが多いです。また、若者をターゲットにしたクライアントが多いので、タイミーのアルバイト募集のような、実用的な広告も好評です。
――現在デジタル広告業界では、広告取引の透明性やブランドセーフティーが大きな課題になっています。逆に、悪質な広告がユーザー体験を損ねている事実もあります。これらの問題についてどうお考えですか。
ロフェ そういった課題はもちろん認識しています。ただし、BeRealはクローズドな友達同士のプラットフォームなので、比較的リスクは少ないと考えています。また、ユーザーの安全性に関しては最優先で取り組んでいます。広告主が投稿するクリエイティブは全てBeRealのチームの目視で確認しておりますし、広告として流れてくるコンテンツがユーザーにとって安全なものかどうかは、最大限きめ細かくチェックしています。ユーザーにとって良い広告体験があるからこそ、結果的に広告主のパフォーマンスにつながると考えています。
――成長が続くBeRealですが、Metaをはじめ圧倒的なリーチを誇るライバルとの差はまだ大きいと思います。
ロフェ ユーザー数はまだこれからいくらでも伸ばしていけるなと思っています。しかし、今はやみくもに数を追うのではなく、現在の高いエンゲージメントをなるべくキープしながら成長することを重視しています。そのためにもやはりユーザー体験が重要なので、プロダクトは常に改善していきたいと思っています。これまで、マーケティング活動はあまり積極的にしてきませんでしたが、それでもプロダクトの良さに対してユーザーが共感をしてくれて使ってくれています。その良さを磨くことで、グロースを加速させたいと思っています。
――いわゆるプロダクトレッドグロースの考え方ですね。プロダクトを良くするためにどのような指標を見ていますか。
ロフェ 分かりやすいところではまず、ユーザーベースがどの程度拡大しているか。つまり、人々がアプリを見つけて使い始めるプロセスですね。ただ、私たちが本当に注目しているのは、長期のリテンション。ユーザーがどれくらい長くアプリに関わり続けるか、そしてその間どれほど価値を感じてもらえるかという点です。
――日本市場におけるGTM(Go-To-Market:市場開拓)戦略について教えてください。特に広告主にとって、どういうニーズがあると捉えていますか。
ロフェ 現在、日本ではユーザーの83%を14歳から27歳までのいわゆるZ世代が占めていて、高校生や大学生が特に多くなっています。この層とエンゲージメントを深めたい広告主に使っていただくイメージです。
笹川 特定の業種は決めていませんが、認知系のプラットフォームなので、第一想起を上げたいとか好意度を上げたい、商品をもっと長く使ってほしいという広告主がメインになってきます。もっと言うと、ただの認知でもなくて、例えば食べ物の広告であれば、「おいしそうでしょ?」と売り込むのではなくて、「友達と一緒に食べると楽しいよね」と、感じてもらうことを想定しています。
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