Xは新たなアルゴリズムアップデートで「情報的かつ娯楽的」なコンテンツに重点を置いている。一方で、Xのオーナーでありユーザーとして最大のフォロワーを擁するイーロン・マスク氏は、連日のように物議を醸す投稿を続けているわけだが……。
Xがアルゴリズムアップデートを予告している。これはイーロン・マスク氏の方向転換を示しているように見える。
マスク氏はこれまで、社会崩壊の危機やジェンダー肯定の弊害、多文化主義の危険性、さらには私たちが知っている生活の終わりが近いことなどについて、絶えず投稿してきた。 過去2年間、現代生活の悪についてのさまざまな見解を1日に50回以上もシェアしてきた彼が、今やこのプラットフォーム(旧Twitter)にもっと「ポジティブ」な内容を求めると述べているのだ。
Xで視聴者を増やしたいと考えている人々には朗報だ。新たなアルゴリズムアップデートにより、今後は「情報的かつ娯楽的」なコンテンツにさらに重点が置かれるようになる。
これはマスク氏がユーザーに対し、アプリ内でよりポジティブなコンテンツを投稿するよう訴えたことを受けてのことだ。
ただし、その投稿内容を見る限り、マスク氏は自らの忠告に耳を傾けるつもりはなさそうだ。彼は相変わらず英国で過去に起きた集団的な児童性的搾取事件(外部リンク/英語)や共和党内の嫌いな人物について、特定個人を取り上げて攻撃の的にするような投稿を続けている。
マスク氏がXで最も多くの人からフォローされている存在であり、彼の投稿はX全体に怒りを広げる引き金となる。また、DogecoinのUX/UIデザイナーを名乗るDogeDesigner氏(外部リンク/英語)によればマスク氏は自身の投稿への返信を有料ユーザーだけに制限しているため、状況はますます悪化していると言える。
今回のアルゴリズムアップデートは、Metaが自社のシステムに加えた変更と非常によく似ているように思える。Metaはユーザーのフィードバックに応え、「政治的」コンテンツのリーチ減らす措置を講じてきた。MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は2021年に、FacebookやInstagramで最も多いユーザーの不満が「政治的な分断をあおるような投稿」に関するものであることを明かしている。これを受け、Metaはこの要素の見直しに着手した。
Meta は、その政治的影響力についてメディアから繰り返し非難されており、議会にその責任を問われる事態に至ったことさえある。その結果、Metaは政治から完全に距離を置き、主に「リール」を通じて、より軽くて娯楽的なコンテンツに注力することを選択した。
このアプローチの源泉はTikTokにある。TikTokは、ユーザーの興味に基づくコンテンツを次々に提供することでユーザーエンゲージメントを最大化できること、直接的なコメントや明示的なエンゲージメントがなくても収益を最大化できることを示した。このアプローチは、強力なフィードアルゴリズムによって導かれている。このアルゴリズムは、各クリップでエンティティ検出を使用し、人々が好むコンテンツをより多く表示し、エンゲージメントよりもエンターテイメントを優先する。
そして今、Metaもこの方向に追随し、エンターテインメント性の高いショート動画を目玉に。アプリ内での滞在時間を大幅に増やすことに成功している。
この方法が効果的であることは明らかであり、マスク氏も同じ路線を取ることでXユーザーのアクティビティーを活性化しようとしているようだ。特に、動画ストリーミングの活用を通じて、多くのユーザーに娯楽性のあるコンテンツを届けることができれば、成果が期待できるだろう。
それは理にかなってはいる。しかし、他のアプリの成功は「フォローしていない」アカウントの動画がユーザーの「おすすめ」フィードに挿入される仕組みに依存していることが多い。
Xでは、代わりに「フォロー中」フィードをデフォルトにすることができる。選択肢が増えるのはユーザーにとって良いことだ。しかし、ユーザーを「おすすめ」ストリームに強制しないということは、アプリで過ごす時間が減ることを意味する。このため、「おすすめ」フィードへの強制切り替えが近い将来実施される可能性があるだろう。これが、今後行われると予想されるもう1つの変更だ。
とはいえ、今回の変化は驚きではない。他の多くのソーシャルアプリも同様の方針を取っているためだ。ただ、マスク氏が自身の野心を実現するために分断や怒りを煽ってきた一方で、今になって手のひらを返そうとしているのは興味深い。
マスク氏自身が投稿スタイルを変える意図がないのは明白であり、彼の個人的な影響力がプラットフォーム全体の方針とどのように調和するのか、あるいは対立するのか、今後の動向を注視すべきだろう。
いずれにせよ、2025年にXでのパフォーマンスを最大化したいなら、この「動画ファースト」のポジティブなコンテンツへのシフトに合わせ、よりエンターテインメント性の高い動画コンテンツを検討すべきかもしれない。
なお、今のところまだアルゴリズムには変更は加えられていない。マスク氏は、Xのエンジニアリングチームのアカウント(外部リンク/英語)を通じて詳細を公表する予定だと述べている。
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