MetaがAIアカウント導入を本気で計画 うまくいくのか?Social Media Today

MetaがAIによるアカウントをFacebookやInstagramに導入しようとしている。その狙いはどこにあるのか。

» 2025年01月04日 15時00分 公開
[Andrew HutchinsonSocial Media Today]
Social Media Today

 2024年をソーシャルプラットフォームがアプリにAI要素を押し込む大きな年になると思っていたとしたら、あなたはまだ何も見ていない。Metaは2025年、さらに多くのAIをフィードに導入することを目指している。

AIがプロフィールを持ちコンテンツを投稿し、コメントに返信する世界

 Metaはあらゆる側面にAIチャットbotを組み込むことに加え、次の計画では何百万ものAI生成キャラクターを展開し、それをFacebookやInstagram上で実在するユーザーのように振る舞わせようとしている。

 Metaの生成AI製品担当バイスプレジデントであるコナー・ヘイズ氏氏によると、まもなく同社のアプリ内でさまざまな新しいAIプロファイルが立ち上げられる予定だ。

 Financial Timesの記事(外部リンク/英語)の中でヘイズ氏は次のように述べている。

私たちは、これらのAIがやがて他のアカウントと同じように私たちのプラットフォーム上で存在するようになると考えています。AIアカウントはプロフィール写真や自己紹介文を持ち、AIによって生成されるコンテンツをプラットフォーム上で作成・共有できるようになります。

 これは、それほど驚くべきことではない。2024年8月に技術者コミュニティーの「South Park Commons」が実施したインタビュー(関連記事:「マーク・ザッカーバーグ氏が描くAIの未来に異議あり ソーシャルメディアから人間性が奪われていいのか?」)で、MetaのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は以下のように説明した。

私たちが行っている全てのことが、(AIによって)何らかの形で変わるでしょう。(例えば)フィードは以前は友達のコンテンツが中心でしたが、今ではクリエイターの投稿が主流になっています。そして将来はAIによって生成されたコンテンツが多くを占めるようになるでしょう。

 ザッカーバーグ氏のこの発言は、多くの人々がMetaの生成AIツールを使用して画像や投稿を作成し始めることを予期しているように思われた。しかし、この直後、メタは「Social.ai」というアプリを開発したマイケル・セイマン氏(外部リンク/英語)を雇用した。このアプリは、それぞれが独自の個性と関心を持つ何百万ものAIチャットbotと対話できるものである。

 この流れからすると、MetaはSocial.aiの要素を自社のコアであるソーシャル体験に組み込み、AIモデルの進化した能力を示すと同時に、アプリ内での新しいエンゲージメントの方法を提供することを目指しているようだ。

 率直に言って、これはひどいと思う。オンラインでもソーシャルメディアにさらに多くのbotを統合することに対して強い反対意見が見られる。

 とはいえ、ソーシャルメディアのユーザーは本能的に変化を拒否するものだ。だから、本当の疑問は「それは機能するのか」だ。

 もしMetaがFacebookやInstagramに何百万ものAIプロファイルを公開し、それぞれが特定のトピックや関心分野に焦点を当てて活動するなら、アプリの利用率やエンゲージメントを実際に向上させることができるのだろうか。

 その答えは、好むと好まざるとにかかわらず、おそらく「イエス」だ。

 例えば、Threadsにおける最近の反発を考えてみると、ユーザーがフォロワーを増やすことの難しさに不満を抱いていることが分かる。一方、Blueskyでは、ユーザーが「フォロー中」のフィード(アルゴリズムに依存した「おすすめ」フィードではなく)をデフォルトに設定できるため、多くのクリエイターがフォロワーを増やしやすく、自分のオーディエンスを築きやすいと主張している。

 Threadsは、このようなBlueskyの台頭に驚き、フィード内で「フォロー中」アカウントのコンテンツにより重点を置くようアルゴリズムを変更して対応した。

 しかし、実際には、過去のTwitterやFacebookのようにフォロワーを簡単に増やすことはできなくなっている。現代のソーシャルメディアアルゴリズムは、エンゲージメントに重点を置いており、すでにユーザーが関心を持っているコンテンツを優先して表示する傾向にあるからだ。TikTokがけん引するこのアプローチにより、プラットフォームはユーザーがアプリ内で費やす時間を増やすことに成功している。そのため、プラットフォーム側としては、ユーザーがフォローして自分の体験をキュレートするのではなく、推奨アルゴリズムと「おすすめ」フィードに頼ってもらうことを望んでいる。

 このアプローチの結果として、もはや誰かをフォローする必要性は薄れつつある。システムがユーザーの好みに合ったコンテンツを表示してくれるからだ。そのため、人々がプロフィールをフォローする割合は以前ほど高くなくなっている。

 しかし一方で、フォロワー数の増加は依然としてクリエイターにとって重要な成長指標であり、彼らはその数値が増加することを望んでいる。また、ソーシャルメディアユーザーのうち、実際に投稿するのはほんの一部に過ぎないことを考えると、Metaはこれらのユーザーを満足させ続ける必要があることを認識している。

 では、もしMetaが何百万ものAI botを立ち上げ、それら全てが自分の関心のあるトピックに関連するプロフィールをフォローするように誘導されたらどうなるだろうか。

 今、あなたが1日に何千人ものフォロワーを獲得しており、Metaはその数を増やし続けるために、さらに多くのフォロワーを放つことができるとしよう。これらのbotはまた、質問をしたり、回答を提供したり、励ましのメッセージを送ってくれたりして、あなたのアップデートに反応することもできる。

 確かにそれらはbotだ。しかし、ユーザーはそれを気にするだろうか。

 ここが重要な疑問だ。これが人工的なエンゲージメントであるという事実は、アプリを開いたときに大量の「いいね」やコメント、新しいフォロワーを目にした際に得られるドーパミンの高揚感を目に見える形で減少させるだろうか。

 個人的にはそうであってほしいと思うが、現実的にはそうならないと考えている。

 私たちはすでに、多くのユーザーがフォロワー数を増やして自分の人気を誇示するために「フォロー返し」戦術を利用しているのを見てきた。また、投稿のエンゲージメントを膨らませるためにbotフォロワーにお金を払って自分の重要性を誇張したり、いいねを購入してエンゲージメントや関連性を高めたりするケースもあった。

 ソーシャルメディアでのエンゲージメントの多くがフェイクであることは、すでに誰もが知っている。では、これらの新しいbotが数値を膨らませる新たな手法を提供した場合、人々はそれを疑問視するだろうか。

 私の予想では、多くのユーザーは単純に注目を浴びていることに満足し、MetaのAIチャットbotが実際にエンゲージメントを増加させる結果をもたらすだろう。たとえそれが「本物の」ソーシャルインタラクションとは異なるものであったとしても、数値が増加すれば、多くの人はそれを歓迎するのではないだろうか。

 また、MetaのAIチャットbotは単なるエンゲージメントの道具以上の役割を果たし、一種の相談相手として活用できる可能性がある。「夕食に何を食べればいい?」と投稿すれば、イタリア料理やフランス料理のシェフbot、健康食bot、クーポン情報botなど、さまざまな提案を受け取ることができる。こうしたやりとりは実際に役に立つかもしれないし、こうした反応が価値を提供する可能性もある。

 もちろん、インフルエンサーや、ブランドとのコラボレーションに自分を売り込もうとしている人たちにも影響があるだろう。ブランドは、どの「インフルエンサー」と仕事をするかをさらに見極める必要があるだろう。フォロワーの70%がbotであったなら、ブランドにとってその影響力はほとんど意味を持たなくなる可能性があるからだ。

 しかし、その点はさておき、botであることを示す情報開示表示(Metaはこれを可能な限り隠そうとしているかもしれない)を行うことは、Metaにとって勝利につながる戦略だと私は考えている。

 聞こえは悪いし、ソーシャルアプリにbotカウントが増えるのは望ましくないだろう。しかし実際には、多くのユーザーは人工的なものであっても、エンゲージメントが増えることを喜ぶだろうと想像できる。

 数字さえ上がれば、他のあらゆる考慮事項はどうでもよくなっていくのではないだろうか。

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